将棋プログラムの作成を挫折した白砂ですが、次なる目標を見つけました(逃げたという話もある)。
音楽です。
この頃から友人の斎藤くんの影響でクラシックにハマっていた白砂は、これをマイコンで演奏できないものか……と考えたのです。
今でこそMIDIだなんだなんて言ってますが、当時はそんなもんありません。当然ソフトもありません(爆)。
では、どうするか?
自分でプログラムするしかないでしょ〜。
マニュアルを開くと、FM音源3重和音と書いてあります。流石SHARP。NECの88なんかはFM音源はオプションですからね。それに3重和音。NECなんかセコい機械だから……。
え? 6重和音!?
買ってから気づきました。
SHARPは確かにFM音源標準搭載なんですが、3重和音までしか出せません。NECはFM音源はオプション搭載なんですが、6重和音を出すことができます。
この、○重和音と言うのは、一度に出せる音の数のことです。ピアノを弾く時に譬えるなら、「いっぺんに使える指の数」でしょうか。3重和音だと指3本しか使えませんが、6重和音だと指6本使える……というわけです。どちらがより本物に近い音を出せるかは考えるまでもありませんよね。
もちろん、FM音源というのは「いい音」ではあるんですが、「いい音3重」と「普通の音6重」では勝負は見えています。もっとよく調べておけばよかった……(泣)
ま、そんなこと言っていても始まりませんので、気にせずプログラミングです。
プログラムは単純で、音の高さをCDEFGABCで表し、長さを数字で表します。C4だとドの音の4分音符、といった感じです。オクターブの変更なんかはプログラムの最初でやったりとかまぁいろいろあるんですがそんな細かいことはいいでしょう。
で、例えばドミソを一緒に鳴らしたい場合には、:で繋ぎます(だったと思います。違ったらごめんなさい)。
PLAY "C4:E4:G4".
という感じです。
じゃあ、早速1小節書いてみましょう(音符は適当です。すいません)。
PLAY "C4E4G2V4:E4G4+C2V4:G4A4B2V4".
こ、これでドミソ:ミソド:ソラシの3音が3重和音で奏でられるわけです。
で、これを、例えば『月光 第1楽章』を演奏しようとすると、4ページの楽譜に1ページ6段、1段に4小節として……。
96個書くんかい
早くも暗雲が……(泣)。
しかし、我ながら当時は無茶をやっていました。これを書いちゃったんですねなんと(笑)。
プログラムを見ても暗号状態(何しろ音データの嵐ですから)。かろうじて、コメントで「○ページ○段」などと書いてあるので「この辺かな……」というのが判る状態です。
1小節打っては実行して音を確かめ、3小節打ってはセーブして……という実に気の長い作業の末のことです。ホントに無茶やってました。
若いっていうのは恐れを知らないというもので(笑)、このあと、『月光 第3楽章』にチャレンジしました。
指が足らねぇって……
穏やかなメロディーが全編を支配する第1楽章と違って、第3楽章は多くの和音を響かせる場面が多いんです。3重和音では無理です。
なのでこれは流石に諦め。
次に手を出したのは『エリーゼのために』。これは意外と簡単にできました。
更に『展覧会の絵』『ためいき(リストの3つの演奏会用練習曲第3曲変ニ長調)』などにも手を広げ、毎日毎日ABCと格闘する日々が続きました。
結局、『展覧会の絵』は完成したものの『ためいき』は90%ほどで中断、完成には至りませんでした。中断の理由は後で判りますので置いておくとして(爆)、『展覧会の絵』は、自分で言うのもなんですがなかなか凄い出来だったと思います。
この曲は元々ピアノ曲だったんですが、ラヴェル(『ボレロ』を書いた人)がオーケストラ用に編曲してより有名になりました。我が家にはピアノ版、管弦楽版、シンセサイザー版、パイプオルガン版と4種類のCDがありますが(笑)、ロックバージョンなんかもあるらしいです。
というくらい白砂は好きな曲なんですが、ある時、後輩が「ギター版もあるんですよ」といって、わざわざギター版の楽譜を取り寄せてくれました。ギターであれば弦が6本なんで、3重和音でもなんとかなりそうです(6重和音だったら完璧だったのに……(泣))。というわけでプログラミングをしてみようか……という気になり、完成まで約半年かかりました。
約35分間にわたる長大な楽曲で、FDD1枚をほぼまるまる使いました。ちょっとした市販のゲームプログラム並みです。
完成した時分は、何度も何度も聴き返しました。
最後の部分は3重和音しかないんでちょっと苦しかったですが(笑)、逆に多少アレンジを加えて余韻を出すようにしました。現在は聴くことができませんが、懐かしい思い出です。
その後、調子に乗ってホルストの『惑星』の楽譜を5,000円で買ったところまではよかったんですが、あの曲は「違う楽器による同じ節の演奏」を聞かせる部分が多々あり、それをプログラミングするのが容易でないために挫折しました。『木星』のサビの部分を作って聴いたのが最後だと思います。
今でもMIDIに対しての思い入れはなくはないですが、あの「データ地獄」みたいなことをやんないといけないんだったらもうコリゴリ、というのが正直な感想です(笑)。