伏土竜の麻雀戦術論

展開編その1

第3章 展開をふまえた発想と戦い方
     1.自分がトップでない場合

 トップとの点差がさほどない場合であれば、そんなに考え方としては難しくありません。前章でトップと2000点差の例を挙げましたよね? あれと同じく、点差に見合った手を作ればいいだけです。点差を考えれば、さほど手作り自体は難しくはないでしょうし。
 つまり、ここでいう「トップでない場合」とは、「そこそこの点差がついているトップでない場合」と考えて下さい。

 それでは、例を挙げて解説していきます。

例1 南3局西家。現在トップの親から2万点離れた2着目。

 ドラ

 誰も動きはない4巡目。親から1枚目のが出ました。
 どうしますか?

 例1のような「自分がトップ以外の着順で、しかも親番が残っていない」局面で考えるべきことは、「残りの局で、どうやって逆転するか」です。
 点差を一発でひっくり返せるようなスゴイ手が来ればラクなのですが、残念ながら例題の手牌から倍満・三倍満といったアガリは望めそうもありません。
 だからといって、「じゃあこの局は2000点でいいや。次局に期待しよう」などと、安易にを鳴いてしまうのはいただけません。
 もしを鳴いて2000点であがったとしても、トップとは18000点差。直撃やツモで多少異なったとしても、大きな点差を残したままオーラスを迎えることになってしまいます。
 これでは、逆転は難しい。
「展開」を考慮すると、この局では最低限マンツモを狙いたいところです。この局でトップまで10000点に差を詰められたなら、オーラスで逆転する可能性が現実味を帯びてきます。
 マンツモになんてならないよ、などと言わないでくださいよ(笑)。リーチ・ツモ・西・ドラ1というコースが見えるじゃないですか。
 2枚目が出てしまったなら、またはすんなりとタンピン系でまとまるようなら、トイツ落としをしてタンピン系での高得点を狙うようにします。

 オーラスになってから逆転を模索するのではなくラス前から、もっと言えば自分がトップでない限り常に、トップとの点差を考慮しそれに見合った手作りをする
 これは展開をふまえた戦い方の基本中の基本です。

 ちなみに。
 持ち点が少なく着順の低い人が、軽い手(安い手)で上がる。
 これは「してはならないこと」の典型と認識しておいてください。
 局を進めることで逆転の可能性を自ら減らして自分をより苦しくし、トップ者をラクにさせるだけだからです。

例2 南2局西家。現在トップの親から2万点離れた2着目。

 ドラ

 誰も動きはない4巡目。親から1枚目のが出ました。
 どうしますか?

 前例とまったく同じ手牌・ドラ・捨牌(ここでは提示していませんが)ですが、状況が少しだけ異なります。例1は南3局でしたので親番は残っていませんでしたが、本例は南2局西家ですのでまだ親番が残っています。
 ですから、鳴いて速攻の2000点狙い(=トップ者の親番をつぶす意味でかなり価値が大きい)でも、面前で手を作ってマンツモ狙い(=トップ者との点差を大きく詰められるので、これまた大きな価値あり)でも、どちらでも間違いありません。
 個人的には後者の方が好きです。

 親番が残っているか否か。たったこれだけの違いですが、「展開」は大きく違ってきます。これを理解して下さい。

例3 南1局親。トップの西家から2万点離れたラス目。

 ツモ ドラ

 8巡目、西家からいかにも普通手を思わせる捨牌からドラ切りのリーチが掛かりました。「ポン」の声はありません。
 リーチに対しての安全牌はがある。
 何を考え、何を切りますか?

 例3のような、「自分がトップから離されている南場の親で、他から攻撃を受けた」局面で考えるべきことは、「なんとしてでも自分がアガりきらなければ、トップを取る可能性が低くなる」ということです。
 極端に聞こえるかもしれませんが、ここで振り込むのも、ツモアガリされるのも、他家から他家へのロンアガリでも、親番がなくなって逆転の可能性が少なくなったという点で両者に違いはないんです。
 である以上、他の人が何をしようと、それこそリーチだろうとドラポンだろうとなんだろうと、それはまったくの別問題。自分の手牌の都合だけを考えるべき局面なのです。
 となれば、この局面で切る牌は1つしかありません。
 受け入れ枚数を一番多くする切りが正着打になります。

例4 南1局親。2着を2万点離したトップ目。

 ツモ ドラ

 8巡目、西家からいかにも普通手を思わせる捨牌からドラ切りのリーチが掛かりました。「ポン」の声はありません。
 リーチに対しての安全牌はがある。
 何を考え、何を切りますか?

 この局面で考えるべきことは……って、別に何もありません(笑)
 残りのの所在にだけ気を配っておいて、あとは攻撃的な手順(=切り)を選ぼうと守備的な手順(=切り)を選ぼうと、それは個人の好みの問題です。
「トップ者が無理をする必要はない」これも1つの考え方ですし、「トップ者だからこそ多少の無理が許される」これも立派な考え方だからです。
 個人的には、「せっかくのタンピンイーシャンテン。トップ者だからこそ積極的に上がりに向かい、トップを決定づけたい」と考え、を切ります。

例5 南3局西家。38000の2着目。9巡目。

 ツモ ドラ

 トップの親が44000、三着目は南家で9600、ラス目の北家は8400点です。
 8巡目に北家から、9巡目に南家からと続けてリーチが入りました。両者ともに普通手でメンタンピンコースと思われる捨て牌をしています。南家はドラ切りリーチでした。
 は初牌。共通安全牌はなく、北家・南家ともにを切っており、はちょっと危険そう。さらに、も通る保証はない。
 何を考え、何を切りますか?

 この局面で考えるべきことは、「無理をする必要が全くない」です。
「この手牌をアガれればオーラスはかなりラクになるから、多少の危険を冒してもアガリに向かうべきだ。しかも点数的にそこそこの手にはなるし」という考えも悪くはありません。
 けれども、アガリを得るために危険度の高い牌を切り出して行かなければならない点が難点です。

 はたしてそこまでする必要があるでしょうか?
 答えはNOです。

 ここでオリに向かったとしても、オーラス満出(満貫の出アガリ)でよいのですから、トップを取る可能性は十分に残されています。
 ましてやこの局、トップ者が親。3・4着目がツモアガりをしてくれればそれだけでトップ者との点差はさらに縮まります。

 以上のことを考えると、攻めたい気が起きる手牌ではありますが、その気持ちをグッとこらえて(七対子イーシャンテンだからといってアンコスジのを切ってしまうなどの無理をせずに)、辛抱のドラトイツ落としが展開をふまえた正着打になります。

例6 南1局北家。親から2万点ほど離された三着目。5巡目。

 ツモ ドラ

 二着目を15000点弱離した親が、なにやらマンズのホンイツっぽい捨て牌をしている。手中の字牌はいずれも初牌。
 何を考え、どんな役を狙って打ち進めましょうか?

 この局面で考えるべきことは、「ここでダントツの親にホンイツ手をアガられてしまうと、この半荘の決着が付きかねない」です。そこで、「この親のアガリだけは何が何でも阻止する」がこの局面のテーマになります。

 この手牌からストレートにアガリを狙うとすると、親のホンイツに鳴かれる可能性の高い字牌を切り出していくことになります。これはテーマに反するので除外。
 よって、流局するか他の誰かがアガるかを願って、ソウズかピンズを切り出していくのが正着となります。

 ちなみに。
 特定の誰かのアガリを阻止する方法は、自分がアガる・他の誰かがアガる・流局する・チョンボをする(笑)のどれかが考えられます。
「自分がアガることだけが、誰かのアガリを阻止する方法でない」
 これは、今後「展開」について学んでいく中で重要な心得ですのでお忘れなきよう。

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