居飛車穴熊が大流行していたころに出版された本書は、振り飛車党待望の書だった。綿密な研究に基づいて作られた穴熊破りの定跡は、我々アマチュアのみならずプロにも大きな衝撃を与えた。小林八段自身、これでA級に昇ったといっても過言ではないだろう。
また、本書で使用している「上下図面2枚中段のみ文章」という構成は、豊富な図面と詳細な解説を詰め込むにはぴったりの形式だったのだと思う。後に出た、やっぱり指し手詰め込み型の『角換わり腰掛け銀研究』がその構成をそっくり踏襲したことを見てもそれは明らかである。
内容は正統派の▲5六銀型で、端攻めをまじえ居飛車穴熊を堂々と破っていく。△1四歩と受けられて端攻めが難しい場合は▲6九飛から地下鉄飛車の筋もある。
そのほか、▲4八玉のままで▲1七桂と跳ねる藤井システムの原型のような形や、端角戦法、浮き飛車型など、たいていの居飛車穴熊対策が網羅されている。
実は左美濃にも触れてはいるのだが、個人的にはなにしろ冒頭からの対居飛車穴熊がすごすぎて印象が薄い(笑)。
藤井システムの先駆けともいえる本書の指し方は、アマ初段前後でも十分指しこなせると思う。ぜひとも一読してみてほしい。