タイトル通り、マンガで書かれた入門書。
駒の動かし方からルール、「詰み」の概念、手筋、玉の囲いなど、マンガなので分量は限られているが、要領よくまとめられている。
以前から「子供用に漢字にルビを振っていながら子供にわからない単語を使うな」という話をしているが、マンガにすることでその制限をかなり緩くできるのはいい点だ。
例えば、金の特性を説明する際、「金は斜め下が弱点。なので、一番下にいる方がいい。一流の剣客がカベを背にして背後からの攻撃を防ぐのと同じ」というような説明をしている。「一流の剣客」だの「背後」だの言われて子供が判るとは思えないが、カベを背にして刀を持って立っている絵を見せれば何を言わんとしているのかは子供でも判るはずだ。ついでに言うと、その話からつなげて「玉の守りも背後と側面のカベを利用しよう。だから玉は端の方に囲おう」と持っていったのはうまいと思った。そのときに▲6八銀▲4八銀の「無敵囲い」を引き合いに出して、「でもこれだと前から左右から攻められるからよくない」という解説をしたのもよい。
全体的に、マンガという「かけあい」で話が進んでいくため、書いてある内容は理解しやすい。
ただ、説明が非常に「部分図的」なので、ではまったくの初心者がどうやって1局指そうか、という話になったときには本書は全く使えない。限られた紙数で説明をするのは難しいというのはよく判っているつもりだが、その辺りはもう少し工夫してほしかった。たとえば6ページくらいで、序盤はこんなことを、中盤はこんなことを……という説明をはさむだけで、だいぶ構成が「しまった」と思うのだ。
オールマンガで説明(棋譜すら出てこない(←棋譜という存在の説明はちゃんとある))している本というのはそれだけで貴重だし、慣れた作家さん(藤井ひろしという作家はこういう入門書系のマンガを数多く出している)だけに非常にリーダビリティの高い本に仕上がっている。
低年齢の、それこそ小学1年生でも読める将棋入門、という点ではとてもよい本だと思う。
ちなみに、42ページ問2の4二飛は龍が正しい。飛車だと、▲3一馬を△同玉と取られて詰まない。