振り飛車党の代表選手である久保が書いた手筋本。今回は四間飛車vs急戦に絞って解説している。
四間飛車が先手の場合も後手の場合も解説されているが、▲6五歩急戦がなかったり、▲4六銀戦法で2筋を突き捨てなかったりと欠けている部分も多い。また、内容のほとんどは後手四間の解説ではあるのだが、定跡近辺の解説ではなく実戦譜の解説のようになっており(確認したわけではないのだが、問題を見ていただければそう感じた理由も判っていただけると思います)、いやそりゃあ手筋だけどさぁ……とちょっと残念な気分になった。
あと、難易度がバラバラすぎる。
△8五歩に▲7七角、という問題が2問もあった(3問だったかな?)かと思えば、とても難しい手筋がふんだんに出てきたりしている。
それと、次の一手本の宿命のようなもので仕方がないことなのかもしれないが、解説が少なすぎる。
例えば第30問で、△8八歩と桂取りに打った手に対して、▲7二歩という手筋が正解である、としている。それは正しいと思うのだが、その解説が「△7二同飛と取らせると利かしになる」だけではあまりに不親切すぎる。後手は桂取りに歩を打ったのだから、まず説明するのは△8九歩成とされたらどう切り返すか、だろう。しかしその解説は一切されていない。
実際のところ、△8九歩成は▲同飛と取っておけば、今度は△7二飛と取れない(8五に銀がいて、△8九歩成▲同飛△7二飛は▲8五飛とボロッと銀を取られる)から△6二銀と▲7一歩成を受けるくらいしかなくて、そこで▲7六銀とすれば△同銀と取れない(8五の銀が動くと▲8二飛成と飛車が素抜かれる)から後手が困っている、ということだと思われるので、問題に間違いがあるわけではない。しかし、この説明を一切省いて「利かしが一発入った」で終わらすのは不親切に過ぎる。
攻められた手に対して▲6五歩や▲7八飛という振り飛車の手筋を再三登場させることで印象を強めたりとか、大駒をぶった切って攻めたりとか、面白い問題も数多く入っており、それなりに勉強になるとは思う。実際、白砂は第53問から第54問の手筋が見えなくて解答を見て感心したし。
題材や方向性、やりたいことは間違っていないと思うのだが、料理の仕方が間違っていたのではないか、と思ってしまう。ちょっと残念だった。