突然だが、正直に告白する。
私はここまで、けなし言葉として何度か「高段者の定跡本」という表現を使ってきた。
出るはずもない都合のいい手順をただ書いていくだけで、最新手順の発表もなく、さまざまな形の紹介をするでもなく、言葉は悪いが「金のためだけに」書いた本。それを「高段者の定跡本」と表現したわけだが、本書もそうだと思っていた。
だって、大内だよ。
しかし、それは間違いだった。
急戦・持久戦ともに、惜しげもなく最新の指し手が紹介されていた。残念ながら互角ていどの分かれにしかならない変化もあったと思うが、それだって正直さの裏返しである。作った手順を見せられるよりはよっぽどいい。
「しばらくの間、苦戦の続いた穴熊だが、今度はこちらから新作戦を披露する番だ。本書はそういった新しい指し方をすべて披露した」とはまえがきの言葉だが、この言葉に嘘はない。
古い本ではあるが、できれば一度は読んでみてほしい。