四間飛車の急所 3 急戦大全 下

作成日:2004.10.19
四間飛車の急所〈3〉 急戦大全(下) (最強将棋21)
著者 :藤井 猛
出版社:浅川書房
出版日:2004-10-10
価格 :¥1,540(2024/09/01 09:45時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「藤井の頭脳」とも言える四間飛車の急所シリーズ第3弾。今回はナナメ棒銀、4五歩早仕掛け、棒銀を解説する。

それぞれの形についてどんなことが書かれているかと言うと、

  • ナナメ棒銀は『新鷺宮定跡』の▲3九飛の周辺が基本。▲6八金型は2巻でやっているので、ここでは▲6九金型を解説している。▲3九飛を避けて△4五歩と開戦する形、▲3五歩と押さえる亜急戦の形も紹介している。
    △4五歩の決戦などはそれこそスーパー四間飛車世紀末四間飛車の頃からあった懐かしい形で、古くて新しい変化がいっぱいある。最近では振り飛車ワールドの2巻に指定局面戦があったが、その変化に対する回答も入っている。
  • 4五歩早仕掛けは、▲6八金型と▲6九金型の2種について解説。結論をおおざっぱに言うと、▲6八金型は振り飛車よし、▲6九金型は居飛車よし。そこで、▲6九金型の場合は玉頭銀で牽制する。
  • 棒銀は旧式の受け方から加藤流、△4二金型の受け、そして△4二金型を避ける居飛車の工夫。あと、△5三金と正面から受ける形。加藤先生の魂の叫びが聞こえてきそうだ(笑)。

といったところ。
ナナメ棒銀のところは前著との兼ね合いがあるので、できれば前著をもう一度読んで、それから本書を読み始めるといいと思う。

誤解を恐れずに個人的な感想を述べると、前著に比べると新手的な驚きは少なかった。その代わり、システマチックな感じがかなり強くなっている。
2巻の戦法ではいろいろ実戦的な指し方があったのだが、本書の形はかなり研究されているので、「実戦的」とか「裏技的」なものが少ない……という風に見える。玉頭銀も昔は実戦派が指すものだったが、いまやここまで整備されている。本書の驚き方はそんな感じだ。

本の編集の部分については完成された感がある。
いくつか誤植があったが、これは本というものの宿命と割り切るしかないのかな。しかし、▲4七歩を△4七歩という間違い方は少し罪が重い(笑)。4五歩早仕掛けで後手から△4七歩と叩くのは定番の筋だ。▲4七歩というのはそれを防いだ柔らかい好手なのだが、その説明の時に△4七歩と書いてあったので、読んでいて一瞬混乱するのだ(笑)。

次巻は△4一金待機型ということで、これは全く新しい攻防になるだろう。「急戦版藤井システム」とでも呼ぶべき形なので、早く読んでみたい。