奇襲大全
他に解説のしようがないが、変態戦法ばかりを集めた本である。
それぞれの戦法には味があるが、残念にことに変化手順の説明に乏しい。カタログとしての機能を優先させたためだろうから仕方がないのだが、実際に載っている戦法を使おうという場合には困るかもしれない。その辺が「伝説」シリーズとの違いである。
少し話が変わるが、昔、将棋部の後輩が「強豪と対戦する時、一発勝負で奇襲を指すのはよくない」と会報に書いていた。その文章を読むとずいぶんと私に気を使っているようで、というか私に文句を言われないようにいろいろと予防線を張っている様が読み取れて笑えるが、私もまったく同じ意見である。相手が強豪だからこそ、自分が普段指している、自分が一番信頼を置いている戦法にすべてを委ねるべきではないだろうか。
そういう意味で、私はこの本を「ここに載っている将棋を指せ」と薦めるわけではない。むしろ、その対策としてこの本を活用すべきである。そうしてこそカタログ的な本書の構成も生きるというものだろう。
なお、この本はB6版となって改編されている。内容は薄くなったがおかげでより一層カタログっぽくなっていて、かえってお買い得かもしれない。