2004

東大将棋ブックス四間飛車道場 第16巻 右四間飛車

四間飛車道場 第16巻 (東大将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2004-04-01
価格 :¥58(2024/09/01 07:47時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

アマチュア待望の右四間飛車編。もっと早く出してくれてもよさそうなものなのだが……。ちなみに、これで四間飛車道場は完結だそうだ。

内容は、穴熊型、米長玉型、左美濃型、舟囲い型と、▲5九金右と固めたタイプ、6筋の歩を交換するタイプの計6種類。これに、3筋から桂が跳ねる形と、1筋から桂が跳ねる形のそれぞれ2パターンがからむ。
対する振り飛車側の対策も、通常の△5四銀型に加え、△4三銀型や、早く△3五歩と突いて石田流に組み替える形などがある。

一応の基本は押さえられていると思うし、最初の章でそれぞれの形に行くまでの手順がさらってあるので、これから右四間を指してみようか、という初段くらいの人には参考になるだろう。級位者には、東大将棋より三浦本の方を薦めたい。
また、6筋を伸ばす指し方を解説した本はおそらく初めてだと思う。白砂がコラムで書いたこの形のことで、この攻防は(やられたことがあるだけに)参考になった。とりあえず、「△4四歩にさすがに▲4六歩はないだろうから、この進行はだいたい妥当なところ」と書いた白砂はどうすればいいんだろう(笑)。
その他にも、『四間飛車の急所 1』に書かれた変化の上を行く変化(▲9九玉で▲5八金とし、後の▲4七金を見せる)もあり、有段者は是非とも買いの一冊となっている。

しかし、不満もいくつかある。
一番大きな不満は、振り飛車側の対抗手段がヘタレなこと。
例えば、上に書いた▲4七金。これは振り飛車側が早くに△3五歩~△3二飛と石田流を見せた手に対しての対抗策である。これを書いたことは素直に誉めたい。しかし、▲9六歩型の居飛車穴熊にはこの手段が載っていて、▲9七歩型の居飛車穴熊では一言も解説されていないのはどういうことか? ▲9七歩型では、振り飛車側は無難な手しか指していない。一手の違いが大きいのは分かるが、ならばなおさら、何故石田流はダメなのかをしっかりと解説して欲しかった。
同じように、△4三銀という形で止めるという有力な振り飛車の対策についても、触れている項と触れていない項がある。順列組み合わせではないけれど、全ての居飛車の囲いに対して、振り飛車側の対策は(少なくとも何もしないよりは)有効なはずである。ところが、それを省いて単純に居飛車優勢としている。
全く触れていないのであれば諦めもつくのだが(笑)、ヘタに書いてあるところと書いていないところがあるために、「これ、都合のいい手順にしたかったんじゃないのぉ?」みたいな邪推をしてしまう。

更に言うと、細かいところだが、振り飛車側から端歩を突くのも気になった。
右四間において、振り飛車から端歩を突いて得になるケースはさほどないと思う。むしろ、基本定跡に見られるような、駒を全部交換して▲9五歩が早くて勝ち、というパターンの方が多い。左美濃や米長玉においても、▲9六歩の価値は非常に高い。
その、居飛車にとってはおいしい端歩を、なんの解説もなく(本当にない。「手待ち」と書いてあるところすらあったように思う。待ってないで動けよ(笑))振り飛車側から突いているのである。

以上のように、東大将棋シリーズにしては珍しく、かなり居飛車側に立った解説だと思えた。
有段者から見れば、それらの手順が必要だったりその変化に持ち込まないのは必須だったりするのだろうが、白砂くらいの棋力の人ではそれは判らない。というか、そういう部分を詳しく辞書のように解説してくれるのが東大将棋の最大のウリだったと思うのだが。
「穴熊編」「その他編」と、2冊分冊にして、もっと詳しく書いてくれたらよかったのになぁ……と思う。最初に書いた通り、右四間飛車の解説はアマチュア待望のものなのだから。

作成日:2004.05.13 
四間飛車

囲いの崩し方 形の急所と手筋を知る

囲いの崩し方: 次の一手問題集 形の急所と手筋を知る (将棋終盤力養成講座 5)
著者 :沼 春雄
出版社:創元社
出版日:2004-04-01
価格 :¥1,289(2024/08/31 16:43時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

次の一手形式で、美濃、矢倉、穴熊の囲いを崩す手筋を解説する。

形式としては面白く、類書もあることから判る通り需要はあるのだろう。しかし、本書に関しては「中途半端な難しさ」を感じた。難易度がバラバラで、その難しさも手筋としての難しさではなく、全体局面で解説しているがゆえの難しさなのだ。ある意味、手筋を習得するためにはいらない難解さと言える。
有段者向けというのであれば、「手筋を覚えても実戦で使えないと意味がない」という面もあるから仕方がないか……という気にもなる。しかし、手筋を習得しようという人間に対してそれ以外の部分の負担を強いるのはあまりよくないだろう。

ただ、そういう部分の難解さに目をつぶれば、囲い崩しの手筋を習得するにはもってこいの本だ。
歯ごたえがある、ということを念頭に置いて、気合を入れてから読んで欲しい。

作成日:2004.04.20 
次の一手 終盤・寄せ

有段者への道案内

有段者への道案内
著者 :宮崎 国夫
出版社:木本書店
出版日:2004-04-01
価格 :¥1,320(2024/08/31 16:43時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

次の一手形式で、将棋の手筋を身につけていく本。
なんだか紋切り型の説明になってしまったが、いい意味でも悪い意味でもそうとしか説明しようがない。

ページが上下に割れていて、それぞれが独立した問題になっている。「~指しこなす本」シリーズと似たような形式だ。ただ、あちらが本を逆さに持ち替えるのに対し、本書はあくまでもレイアウトとして分かれているだけ。なので、読み方としては、一度最後まで読んでまた最初に戻って……という形になるだろう。
「少しでも問題数を増やそう」という著者のサービス精神を感じるが、しかし、これはこれで見づらい気もするので、残念ながら一長一短だと思う。個人的には、その心意気に一票を投じたい。

問題そのものの質は、初段くらいの人が楽しめる程度のものになっている。タイトルに偽りはない。
ただ、作中で「○段の問題」となっているが、その段位が少し辛いと感じた。正確に言うと、簡単な問題は表示段位程度に簡単なのだが、難しい問題は表示段位以上に難しく作ってある感じがする。もっとも、この辺りの感覚は漠然としたもので、白砂が持っている段の尺度が狂っているだけかもしれない。できるのであれば、実際にいくつか問題を解いてみて、自分のレベルに合っているものかどうか確認して欲しい。

正直に言うと、次の一手形式の棋書は買うものではない……という、いやぁーなポリシーの持ち主なので(笑)、購入を勧めることはできない。一度読んでみる価値はあると思う。

作成日:2004.04.20 
次の一手 手筋

なんでも棒銀

なんでも棒銀 (将棋必勝シリーズ)
著者 :森下 卓
出版社:創元社
出版日:2004-04-01
価格 :¥1,430(2024/08/31 16:51時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『なんでも中飛車』に続く入門本。本当に初歩的なところから、少しだけ高度な「なんちゃって棒銀(▲3六銀型)」まで、いろいろと種類が揃っている。

いきなり▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△8七歩の解説が始まった時はどうなることかと思ったが、それくらい丁寧に、初級者向けに解説されている。
具体的な内容としては、上記の初心者向け解説と、その発展となるなんちゃって棒銀、筋違い角棒銀、対三間飛車、振り飛車穴熊、高田流端棒銀と、かなりいろいろ入っている。角換わりは省かれているが、あれは難しいのでなくて正解だと思う。

ところどころに「将棋に必勝法はないので、互角の分かれは仕方がない」と書かれていたのが、森下らしい誠実な感じが出ていて少し笑った。
初級者、中級者向けの良書と思う。

作成日:2004.04.20 
全般

羽生の将棋実戦〈詰め&必死〉200 羽生マジックに学ぶ終盤の手筋200題

羽生の将棋実戦詰め&必死200: 羽生マジックに学ぶ終盤の手筋200題
著者 :森 鶏二
出版社:日本文芸社
出版日:2004-03-01
価格 :¥300(2024/08/31 18:54時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

キーワードとなる単語が多すぎて題名を見ただけではどんな本だか判りにくいが、実戦で生じた詰みや必死を次の一手形式で出題する、という本。手筋、という言葉はない方がいいと思う。
手順は単純な一本道からかなり骨のある難解なものまで(量はおいといて)あるが、実戦ということでかなり盤がごちゃごちゃしている。単純な部分図より、それだけで難しくなっていると言えるだろう。まず状況を把握するのに時間がいる。
詰みと必死をいっしょくたにしてしまったのは評価したい。問題数が足らなかったからいっしょにしただけかもしれないが(笑)、即詰みと必死は密接に関連している。いっしょでもなんら問題はない。
前例があった気もするが、せっかくだから、詰みと必死の問題をバラバラに入れても面白かったかもしれない。それだけで、「詰みも必死もある」「詰みがある」「必死がある」「詰みも必死もあるが必死をかけると詰まされる」と選択肢が広がり、一気に有段者向けの問題となるだろう。「詰みの問題」と言われるから詰みを考え、「必死問題」と言われたから必死を読む、というのは、やはり実戦の読み方とは違う。
対象棋力は有段者ではないようなので、こんなことを言ってもなんなんだが。

前例があるタイプの本だし、買って読むほどのものかどうかは疑問だ。かといって立ち読みで済ますにはそこそこ骨がある。図書館で借りられるようならそれがベストだろう。

作成日:2004.04.06 
終盤・寄せ
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