2004

中飛車道場 1 ゴキゲン中飛車超急戦

中飛車道場 第1巻 (東大将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2004-01-01
価格 :¥1,430(2024/08/31 22:07時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

ついにというかやっとというか、とにかくとうとうでました中飛車編。とりあえずゴキゲン中飛車ということだが、風車なんかはやっちゃくんないだろうから、実質的にはゴキゲン中飛車がほとんど、あとは3八飛戦法編とか居飛車穴熊編といったラインナップになるんだろうね。
内容はゴキゲン中飛車の超急戦バージョン。▲5八金右と構える形である。詰みまで調べられている超急戦から、少しゆっくりした戦いになる形まで、とりあえずのことは解説されている。▲2四歩と垂らす手は新手だと思うのだが、どこかで紹介されていただろうか? なかなか面白い手だと思った。

相変わらず読みにくい内容で、特に詰みまで行ってしまうほど深く研究してあると、今なんの形について解説しているのかが非常に判りにくくなる。手としては確かに一つのカテゴリなのだが、その辺は柔軟に目次分けをすることも必要だったのではないだろうか。
それでも、一通り以上のことは解説されているので、ゴキゲン党もやられて困る人も、読んでおいて損はない。

あとがきを読むと、少なくともあと2冊分はゴキゲン中飛車の解説だそうだ。▲7八銀型とか相振り飛車型も紹介されることになるのだろうか。

作成日:2004.01.28 
中飛車

やまと先生の入門! 将棋教室 すぐに指せる、強くなる!!上達するからおもしろい!!

やまと先生の入門!将棋教室: すぐに指せる、強くなる!!上達するからおもしろい!!
著者 :高橋 和
出版社:日本文芸社
出版日:2003-11-01
価格 :
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

高橋和というアイドルを前面に押し出した将棋入門書。お隣の囲碁の方では梅沢由香里タンの入門書がたくさんあるが、それと同じようなものである。今のところ、将棋界でのビジュアル代表は和ちゃんか中倉@美形でフラットの方(<ごめんなさいごめんなさい)だろうから、こういう本もアリだろう。DVDなら、千葉(碓井)涼子あたりが『毒舌将棋入門 マゾの方用』みたいなのもアリかもしれないが(笑)。

中身は意外とまともで、駒の動かし方から玉の詰まし方から、基本的なことは習得できる。いくつか定跡も紹介してあるので、ホントにホントの初心者でも、そこそこ形だけは指せるようになるだろう。
各ページの見出し上には和ちゃんの顔写真がある。いろんな表情のがあるんで、やまとヲタはその写真を見るためだけで買い。そうでなくても、そのためだけに立ち読みするのもいいと思う。

しっかし、もう人妻なんだよなぁ……。

作成日:2004.01.28 
入門

羽生の法則 1 歩の手筋

羽生の法則 Volume1
著者 :羽生 善治
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2003-12-01
価格 :¥1,430(2024/09/01 06:55時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『羽生の頭脳』を彷彿とさせる、なんか大作の予感がするタイトルだ。
1.と連番がついていることからも今後どんどん出版されていくことはほぼ確実。谷川の『光速の寄せ』のような、万人に愛されるシリーズになって欲しい。

内容としてはタイトル通りとしか言いようがなく、歩の手筋をいろいろ集めている。『歩の玉手箱』のような本を想像していただければほぼ間違いではない。
よく整備され、見開きで1手筋という読みやすい形式にした努力も買う。級位者でもラクに読みこなせると思うし、電車の中や待ち時間にさっと1ページ、という使い方もできるだろう。
ただ、実際に手を取ってみると(すんません立ち読みです)、そんなに「系統立てて」整理している感じがしない。
分類はされている。それは間違いない。ただ、いろんな手筋が雑多に混じっている気がする。

それと、白砂が『将棋は歩から』に心酔しているからかもしれないが、何の前置きや解説もなしに、いきなり手筋そのものの解説をして、それで級位者が判るのだろうかという危惧も持っている。
『将棋は歩から』では、歩の手筋が項目ごとに分類されており、項の始めに数ページを割いてこの手筋はどういうもので、どういう効果があり、どういった局面で使うかという総論が入る。続けて部分図で手筋のメカニズムを解説し、そして最後に実戦譜でその効果を確かめる、という構成になっている。
学術書のような構成で、白砂は法学部だったのだが法律書ではこういった方法が取られることが多い。これなら、何も知らない人でもスッと理解できる(文章の難易は別にして)。
ところが、カタログ的な本の場合、始めの解説もなくいきなり手筋のメカニズムの解説に入る。そのため、「そういう手筋があるな」というのは理解できても、「それをいつどこでどう使えばいいのか」という肝心の点については理解が得られないのではないか、という疑問を持ってしまうのだ。

例えば、プログラムリファレンスや構文辞典といった本がある。プログラムの命令文やメソッド・プロパティなどを列挙して簡単な解説を加えるものだ。
それらの本を読んで初心者がプログラミングできるか、といったら、まずできない。そのような使い方をする本ではないからである。こういった本は、「あ、あれなんだっけ?」という時の確認に使う本だからだ。
それと同じように、本書もまた、完全な初心者が読む本ではないと思う。むしろ、3、4級から2段くらいまでの人が、棋書などで一度は目にしたことがある形を再確認する本だ。

使い方としては、級位者はまず『将棋は歩から』を読みましょう。
きっと難しいです(笑)
けれど、教科書を読むものだと思って頑張って最後まで読みましょう。読めばいいです。理解する必要はありません。
そしてそのあと、本書を読みましょう。
「なんで『将棋は歩から』ってのはこんな簡単なことを難しく書くんだよばかやろう
と思えるでしょう(笑)。

本書は、こういうように「一度見たことがある手筋を、判りやすく提示する」本だ。

逆に、初段前後の人だと、「似たような形での新手筋」を拾えるかもしれない。
歩の手筋はバリエーションに富んでいる。一口に垂れ歩の手筋といってもさまざまな効果や狙い筋がある。垂れ歩、という言葉や効能は知っていても、その全てを知っているわけではないかもしれない。
そんな人に、手軽に、「あ、こんな手もあるのか!」と思わせてくれるかもしれない(笑)
カタログ的で読みやすい、というのは、そういうメリットもある。
というか、おそらく本書のメインターゲットは、そのくらいの棋力の人だと思われる。だからこそ、敢えて分類はしているが整理していない雑多な形式にしているのだろう。

作成日:2004.01.10 
手筋

四間飛車の急所 1

四間飛車の急所 (1) (最強将棋21 # 2)
著者 :藤井 猛
出版社:浅川書房
出版日:2003-12-01
価格 :¥1,415(2024/09/01 09:45時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

もはや現代振り飛車の教祖となった(笑)著者が、過去の膨大な棋譜・経験を通して四間飛車の全てに迫る本。第1巻の本書は、いわばそのイントロダクションとも言える「歴史編」だ。

ほとんど全ての戦法について、どんな形が登場しどんな対抗策が出て現在の最新形は何か、といった変遷が書かれている。
いわゆる「定跡書」としての位置付けではないので、指し手一つ一つに解説が入ってるわけではない。局面によっては符号が十数手続いて「……という変化で先手が悪い。よって……」といったような書き方もされている。それでも読んでいて判りづらくないのは、図面が多いことと、冷たすぎるほどに客観的に○×で局面を判断しているからだろう。「この手順だと先手不利になる(図面)。そこで修正手順でこう指すと先手有利になる(図面)。この展開はまずいので後手は新手を出し……(図面)」といった具合で、きちんと学術書のように分類整理されている。
5筋位取りや右四間飛車といった(特にプロ間では)マイナーな戦法についても解説がある。特に右四間飛車の項はアマチュアには参考になるだろう。ページとしては少ないが、そこらの定跡書よりはよっぽと役に立つ。ミレニアムついては最後に少し載っているだけだったが、これで十分なのかもしれない。個人的には、新しい指し方だからまだ分析ができていない、というより、藤井個人としてはミレニアムを恐れていない、という風に感じた。居飛車穴熊の項に比べると、客観的で冷静というよりは淡白で冷めている文章、と思えたのだ(ホントに個人的な感想ね)。

『最前線物語』『島ノート』は、同じようにプロの棋譜を漁っていても、研究というよりは最新の動向を紹介する本という感じがする。たとえて言うなら社会学の世界だろうか(もっとも、社会学とはなんぞやという問いは非常に難しい話なのだが……)。『角換わり腰掛け銀研究』の全てを探求せんという姿勢は完全に数学者の世界である。
そして本書は、『消えた戦法の謎』のような歴史学的手法で書かれた本だ。
ただ、『消えた戦法の謎』が完全に歴史の話をしている(なにしろその戦法は「消えて」いるわけだから)のに対し、本書は歴史を探りつつ現代の最新形を紹介するという二重構造になっている。
その辺りが、非常に「お得感」が強く、また、名著だと感じさせる要因なのだろう。

こういった試みは、ある意味採算を度外視しないと成り立たないものでもある。手を抜くことが許されないからだ。
我々アマチュアができることは、こういった良書をしっかりと評価し、「購入」という賛成票で応援することくらいだろう。
しかしそれくらいしかできないからこそ、それくらいのことはしっかりとやっていきたい。

作成日:2004.01.09 
四間飛車

東大将棋ブックス四間飛車道場 第14巻 藤井システム封じ

四間飛車道場 第14巻 (東大将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2003-12-01
価格 :¥866(2024/08/31 15:52時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

おなじみの東大将棋シリーズ。今回は「藤井システム封じ」。これだけだと意味が判らないが、要するに早めに▲3六歩と突いて急戦を匂わせて、△6二玉とさせてから穴熊に組みに行く形のことである。
▲3六歩と突く形は昔からあったが、現在ではシステム側の形が4三銀型なので、従来の3二銀型とは違う攻防になる。最新の形であり、当然『島ノート』よりも詳しく解説されている。システム党も穴熊党も、目を通しておいて損はない。

惜しいのは、やはり体裁だろう。
形を決めて突っ込んで解説する、というのがこのシリーズの方針なので仕方がないのだが、それならそれでどうとでもできると思う。特に、今回は目次だけ見ると1章なのに解説が数ページとか、なんじゃそりゃあという構成になっている。
せめて、深く研究する部分については目次も深くしてほしい。その方が絶対に読みやすい。変に目次の体裁も統一しようとするからおかしくなるのだ。「1-3-2-4 ▲2四歩に△6五歩」となったっていいじゃん。それくらい深い部分なんだよと判るんだから。

それと、改めて思った。
このシリーズの体裁が悪い理由は、やはり「文字を書く行数」が少ないからなのだろう。
例えば、分岐があったとして、
1.▲5五歩 2.▲9九玉 3.▲9六歩
と書くのと、

  1. ▲5五歩
  2. ▲9九玉
  3. ▲9六歩

と書くのとでは「見やすさ」が違う。
しかし、後者の方が「行数」を喰う。おそらくそのためだろう、このシリーズの書き方は前者に統一され、そして非常に読みづらい。

解説を増やせというわけではなく、その見せ方をなんとかしてくれと言いたいのだが、行数を詰めることしか考えていないようなので、この部分が改善されることはきっとないだろう。
そうして、読みにくい本がどんどん出版されていく(笑)

作成日:2004.01.05 
穴熊
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