2005

四間飛車破り 居飛車穴熊編

四間飛車破り 【居飛車穴熊編】 (最強将棋21)
著者 :渡辺 明
出版社:浅川書房
出版日:2005-06-30
価格 :¥1,540(2024/09/01 06:28時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

渡辺竜王の四間飛車破りシリーズ第2弾。今度はイビアナ編である。
著者自身、居飛車穴熊のスペシャリスト(現在のプロはほとんどそれしか指さないという話もあるが……)でもあり、期待の一冊だ。

内容は、4枚穴熊(!)から始まって、振り飛車側の工夫により4枚穴熊が組めなくなったこと、そのため居飛車穴熊側は▲6六歩と止め、別の形を目指すことなど、まずは歴史の部分から入っている。
続けて、優秀な松尾流穴熊を解説。この形に組むことが居飛車穴熊側の狙いだ。
そして、松尾流に組もうとする居飛車穴熊側と、組ませまいとする振り飛車側の攻防が、最新形をまじえて紹介される。

具体的な振り飛車側の対策として、本書では△4四銀型、△3二銀型、△5四銀型の3つを挙げ、それぞれの居飛車穴熊側の対抗策を解説している。
著者自身がイビアナ使いということもあってか、結論としては若干居飛車穴熊有利となっている。もちろんこれは作ったウソ手順ではなく、実際のプロ将棋の現状がそうなのだろう。少し古い話だが、『振り飛車ワールド』の千葉解説などでも、松尾流に対する決定打はなかった。

藤井がちょうど『四間飛車の急所』を書いていることもあり、実は重複するのではないかと心配していた(笑)。しかし、本書では藤井システムはほとんど語られなかった。うまく住み分けを考えたようだ(笑)。
編集も丁寧で、非常に読みやすかった。章末の練習問題はいらないんじゃないか……とも思ったが、これは図面つきの目次と考えれば非常に便利に使える。

浅川書房らしい名著だと思う。

作成日:2005.07.17 
穴熊

鷺宮定跡 歴史と最先端

鷺宮定跡: 歴史と最先端
著者 :青野 照市
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2005-03-01
価格 :¥1,659(2024/09/01 09:45時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

鷺宮定跡の創始者であり、急戦の大家である2ch名人青野の著した急戦本。
鷺宮定跡、新鷺宮定跡を主に解説しているが、その性質上、4六銀戦法なども入り混じっている。

もともと青野の定跡本は「(外れがないという意味の)カタい」本なので今回も安心して読んだのだが、歴史というか移り変わりというか最新定跡を追うのではなく、そこに行き着くまでの攻防に焦点を置いている感じの本だ。
事実、最新の攻防と言えるのは最終章くらいで、それ以外の内容は別の本で十分すぎるほどカバーできる。例えば藤井本渡辺本などでも「この攻め方は振り飛車側のうまい受けがあってすたれ、代わって○○という指し手が……」というような解説が散見されるので、歴史に焦点を当てるのは正直「今さら感」がなくはない。
ただ、青野が書いた、という点に注目をするなら、これはまさに自分が戦ってきた歴史を証言しているようなものなので、そういう読み方をすればまた面白く読める。

最終章は最新の定跡が載っていて、また、同時に居飛車側の課題という部分もある。
悪い表現をすると居飛車有利にはならないということなのだが、この形が現在のプロのテーマになっているということを正直に紹介してくれたことには素直に驚いた。自分には判らない、ということは、なかなか言えないことだ。

また、これはどの本にも言えることなのだが、急戦は特に「その局面をどう見るか」という大局観の問題が関係する。
詰みまで研究すれば大局観もクソもないのだが、その前で終わっている場合は、その局面を持って「やれる」かどうかを自分で判断しないといけない。居飛車振り飛車双方が自分よし、と思っている局面もあるし、逆に双方自信なし、として避けるケースもあるだろう。
この部分が、居飛車党と振り飛車党では違うし、同じ振り飛車党でも微妙に違う。
最近は急戦本が数多く出版されているので、それらの主張を比べてみることも面白いだろう。

作成日:2005.05.08 
四間飛車

加藤の振り飛車破り決定版

加藤の振り飛車破り 決定版 (パワーアップシリーズ)
著者 :加藤 一二三
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2005-03-01
価格 :¥1,430(2024/09/01 21:34時点)
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r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

ここのところやけに精力的に出版を続けている加藤一二三の本。一体なにがあったんだろうか?
あまりいろいろ考えすぎるとちょっとシャレにならないことまで言ってしまいそうなので深くは追求しない(笑)。

まず驚かされたのが、「これを出すんか今!」というレトロ感漂うラインナップ。

第1章 5筋位取り戦法

第2章 矢倉戦法

昭和か? 昭和なのか!?
矢倉戦法については昔緑の表紙の加藤本を読んだことがあって、こないだ古本サイトを覗いていたら売ってたんで衝動買いしてしまいました(笑)。
その内容とそんなに変わってません、これ。

その他の戦形はさすがに「今の」将棋の解説だが、あまり他の本と変わるところがない。
最後の章の「とっておきの作戦」というのはなかなか面白かったが、これも解説と呼べるほど分量が多いわけではなく、どちらかと言うとカタログに近い感じがする。

正直言ってやや不完全燃焼ぎみなのだが、加藤先生が出す、ということに意義があるのだろう。
いつだったかの『将棋世界』で、「楽しそうに原稿を書いている加藤先生がいた」みたいな文章を読んだ。それが本当だとするとやっぱりこれはゴーストなんかではなく自分で書いているもので、そのバイタリティーは凄いと思う。

作成日:2005.05.08 
振り飛車全般

四間飛車破り 急戦編

四間飛車破り【急戦編】 (最強将棋21)
著者 :渡辺 明
出版社:浅川書房
出版日:2005-04-22
価格 :¥1,540(2024/08/31 22:47時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

竜王になって今一番注目を浴びている若手、渡辺の処女作。
急戦編、ということで、今回は4五歩早仕掛け、5七銀左(鷺宮)、棒銀について解説している。

体裁としては藤井本と似ていて、各テーマ図があって解説していく形。ただ、個人的な印象としては、藤井本ほど一本の流れがあるわけではなく、むしろ放射状にいろいろな形を解説している感じがした。
基本/上級/プロ級と項分けしてあるのも面白いところだ。
基本では「その形で勝つ側」から見た理想手順、上級では枝分かれや変化技など、プロ級では踏み込んで具体的に勝ちになる手順、といった感じで解説していく。ただ、じゃあ級位者は基本のところだけ拾い読みするかというとそういうことはなさそうなので(笑)、要は順番に難しい話をしていくよというマーキング程度に考えればよい。

この「プロ級」がまた曲者で、とにかく変化が多い。
図面もかなり贅沢に使っているのだが、それでも追いつかないほどの符号の嵐。これはさすがに盤駒がないと厳しいかもしれない。初段程度ではまずムリ。3段くらいの人でやっとどうか……といったところか。

最新形や独自の大局観にも触れているし、他の棋書や棋士名が頻繁に出てくるのも面白い。プロ棋士がここまで類書と自説を比較する本というのもなかなかないのではないだろうか。師匠に気を使わんでいいのか? と少し気になったほどだ(笑)。
その中で、加藤一二三に触れている部分もあった。当然棒銀のところね(爆)
加藤本では、棒銀は△4二金とされると困る、というのが結論として書かれているが、渡辺に言わせると、そもそもその形にするのが悪いんだそうだ。「他の棋士は指さないのに、一人だけここで▲2六銀と上がる」みたいなことが書かれていて笑った(←ごめんなさい)。
加藤本を読んで棒銀の未来を悲観した人は、迷わず買い。

作成日:2005.05.08 
四間飛車

四間飛車の急所 4 最強の4一金型

四間飛車の急所 (4) 最強の4一金型 (最強将棋21)
著者 :藤井 猛
出版社:浅川書房
出版日:2005-03-05
価格 :¥1,540(2024/09/02 11:59時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『四間飛車の急所』シリーズ第4弾。
今回は後手四間飛車側が△5二金左を保留した形を解説する。

形自体はそれこそ大山時代からあった指し方で、部分的な裏技としてはいくつかの棋書でも散見できる。有名なところでは、対右四間飛車で▲1一角成△3一金として後手有利、というものがある……といって判る人が意外と少なかったりして……。
白砂の個人的なことを言うと、学生時代に高井さんがこの形を得意にしていて、急戦を袖飛車で破って勝星を荒稼ぎしていた。居飛車穴熊が出てしばらくの頃で、その頃は「鷺宮定跡」誕生などもあり、まだ急戦も多く指されていたものだった(<遠い目)。

まぁ、とにかく4一金型。
基本的なコンセプトは、△5二金左としないことにより、盤面右側に金を応援に出しやすくし、急戦を正面から受け止めようというものだ。また、△5四歩△6四歩といった歩を突かないことにより、△6四角とか△5四銀といった通常の定跡では生じない筋が発生することもある。もちろんこれはメリットばかりではなくデメリットもあってなんとも言えないところだが。
矢倉において飛車先不突きが誕生したように、金上がりを保留することによって、居飛車の態度に合わせてこちらの体勢を変化させることができる。これが本書の4一金型の狙いである。

そういう事情であるので、できれば、というか必ず2/3巻は読んでおかなければならない。「従来の形と比べて」という比較が多々発生するからだ。形は全然違うが、『高田流新戦略3手目7八金』と同じように、少しでも得をしようという志向レベルの高い形である。

内容は、そういう事情もあってか意外と薄い。
いや、こういう言い方は語弊があるか。比較対照という作業が多いため、新しく変化を覚えるという感じにはならないので、そんなに苦にならずに読めるのだ。少なくとも、既刊の2冊を読みこなせるレベルであれば本書はラクに読めるだろう。
もっともここが評価の難しいところで、ということは前2冊をきちんと理解せず本書を読んだ場合、どの程度それが「役に立つ」かというと疑問なのだ。もちろん本書だけ読んで4一金型の優秀性を理解し、4一金型だけを指す、ということは十分に可能だ。ただ、それができるのであれば前2冊はラクに読めるはずだし、ということはやっぱり本書は難しいのか……。
評価が難しいので、とりあえず「そこそこ大変」とだけ覚悟して下さい(<をい)。

本書の特徴は、今までになかった「実戦編(という名称ではないが)」がついたところだろうか。

今までのシリーズでは、仮にそれが実質的に実戦解説であっても、形としては定跡解説の体だった。
しかし、4一金型は「少しの違い」がたくさん生じる実戦的な戦法のためか、全ての形を網羅的に解説という形にはしづらい。そこで、戦い方考え方だけでも判ってほしい、ということで、実戦編を設けたのだろう。
厳しいことを言ってしまうと、煩雑であってもきっちりと「定跡」を作ってほしかったな……と思うのだが。

以上のように、本書はかなり高度な内容になっている。
初段くらいでは厳しい。きちんと読みこなせれば3段クラスにはなっていると思う。

作成日:2005.03.30 
四間飛車
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