2005

図式百番

図式百番
著者 :内藤 國雄
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2005-01-01
価格 :¥1,797(2024/09/01 15:07時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

詰将棋の名手内藤國雄の詰将棋集。
「図式」という言葉には、江戸時代の名人が将軍様に奉げた「献上図式」で知られるように、「自分の持てるもの全てを駆使して作り上げた作品」という意味合いが辞書的な言葉の意味以上に強く感じられる。著者が「図式」という言葉を敢えて使ったのもそのためで、この辺は前書きに詳しい。
箱入り豪華装丁で税込み3,990円というのは大層なものだが、それなりのものに仕上がっている。

内容的には、自身が前書きで触れている通り実戦形が多く、個人的にはちょっとなぁ……という気がした。
それこそ『図巧』『無双』のような構想作や難解作てんこもりの「図式集」であってもよかったはずだ。もともと詰将棋のような解答のさせ方を考えて作っている本ではなく、あくまでも鑑賞主体の「詰将棋」なのだから。
この点は某詰将棋作家氏の意見に同意なのだが、だからといって本書が「くだらない作品ばかり収録されたそこらのえらく高価な作品集」とまではさすがに言えないと思う(←違うものを指していたらごめんなさい)。白砂の勘違いであればいいのだが、あまりの言い方なので少し気になった。まぁ個人の感じ方だから別にいいっちゃあいいんだけどね(笑)。

以下は正に個人的な話を。長いよ(笑)。

白砂がはじめて「詰将棋」というものに触れたのは、内藤9段(この言葉がしっくりくるのはやっぱこのあと無意識に「将棋秘伝」と続いちゃうからかなぁ(笑))の著書だった。
本書でも触れられている筑摩書房の現代将棋全集。この「図式集(中)」の著書が内藤9段だったのね。
何度かこの欄で触れているように、白砂が子供の頃、市立図書館ができたのが小学5年生のとき。将棋の本も片っ端から読み漁って、大体読み尽くしたぞ……という時、書架の最上段の豪華装丁本が目についた。全集だったんで、場所を喰うから大体こういうのってのは最上段か最下段に置くんだよね図書館ってのは(笑)。
そこで書かれていたのが、内藤9段が子供の頃に出会ったという図巧1番の話。
見るからに難しそうな詰将棋に出会い、図面を覚える少年。詰まそうとしても判らなかったんで今度は解答を覚えるために立ち読みに通い詰め(笑)、飛打ち飛合での打歩詰打開に驚愕する。そして(本書には書かれていないが)、その作品を自作だといって兄達に見せ、「うぅむ、國雄は天才や」と言われるところまで、解説を含めてその本は何度も何度も読んだ。

白砂もちょうど小学6年生の12歳。これは運命的でしたよホントに。

そこからやっぱり白砂も子供ながらに詰将棋作成を始め、とはいっても棋力が5級くらいだったからたいした作品も作れなかったんだけど(笑)、その頃の創作ノートは今も大切に持ってます。
「詰将棋」という、将棋ではあるけども全く違う世界への興味を広げてくれたのは、間違いなく内藤9段だった。

作成日:2005.02.14 
詰将棋

日本将棋用語事典

日本将棋用語事典
著者 :原田 泰夫
出版社:東京堂出版
出版日:2004-12-20
価格 :¥1,298(2024/09/01 14:19時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

将棋でよく使う用語を集めて解説した本。
将棋用語だけでなく、将棋界用語、詰将棋用語、盤駒作成用語まで網羅している。
「辞典」という感じではなく、やっぱり「事典」。説明が非常に細かく丁寧だ。

「名棋士の談話室」と名づけたコラムページが非常に充実していて(下1/3が全部そう)、一つ一つの言葉について島、森内、佐藤、羽生、中原、米長の各氏が解説している。
ここを読むだけでも十分に面白かった。
もう一度読みたいかというと微妙なので買う価値があるかと言われると困るが、言葉の定義を知ることも重要な上達法の一つだと考えているので、初段くらいまでの人なら手元に置いておいて損はないと思う。有段者なら、知っている言葉ばかりだろうから値段=コラム代ということになるだろう。

ちなみに白砂は、「肩銀」「兜矢倉」という言葉と、盤駒作成関連の用語が判らなかった。なんだよ肩銀って……。

少し気になったのが、あとがきの言葉。
どうやらこの本、最初は伊藤果と編集とで出版する予定だったらしい。ところが、言葉の解釈について揉めたようで、伊藤果はいわば「舞台から降りた」形となっている。
伊藤果ということを考えるとおそらく詰将棋用語関連での行き違いだと思うのだが、なんでそんなことになってしまったのかを考えると少し寂しい。

作成日:2005.02.10 
その他の分類

谷川流寄せの法則 応用編

谷川流寄せの法則 応用編
著者 :谷川 浩司
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2004-12-01
価格 :¥402(2024/08/31 23:32時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

前著『谷川流寄せの法則 基礎編』に続く応用編。なのだが……

そんなに難しくなってない気が……

あくまでも白砂の感想、なのだが、基礎編にあった「きちんと解説する」感があまりなく、問題形式でどんどん進んでいく。最初の格言を用いての解説もなんか上っ滑りの感があって、あまり実用的(基礎編と比べて)ではない。
難易度の方も、一つ一つの問題の難易度は基礎編とさほど変わらないと思う。
これが仮に、読む深さなり読む広さなり、あるいは攻防の速度計算だったり、もう少し難しい要素が入って入れば別なのだが、そんな感じもあまりしなかった。

谷川の本はそれこそ昭和の頃から良書が多く、期待する部分はあったのだが、その期待が過剰になってしまったのかもしれない。また、『寄せが見える本 応用編』との比較でそう思えてしまったのかもしれない。と、まぁ、いろいろ外部要因があって偏見が入ってしまっているのかもしれないが、要するに、白砂としてはあまり期待したものではなかった。

もう少し「解説」がきちんとあって、寄せの系統立てでもしてくれたら、評価はまた違ったものになったかもしれない。

作成日:2005.02.10 
終盤・寄せ

決定版 石田流新定跡

決定版 石田流新定跡:ライバルにひとアワ吹かす必勝戦法! (スーパー将棋講座)
著者 :鈴木 大介
出版社:創元社
出版日:2005-01-01
価格 :¥142(2024/09/01 06:24時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「あの」鈴木大介の創元社本。それだけでなんとなく察しがつくが、その通りの豪快な内容になっている(爆)。

内容は「▲7四歩早仕掛け」「棒金」「居飛車穴熊」の3つ。
最初の▲7四歩は、▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩▲7四歩という仕掛けのもの。『将棋世界』の「盤上のトリビア」でも紹介されたし、そのちょっと前に『近代将棋』で、それを読んだ白砂がコラムでも紹介している。
『東大将棋ブックス石田流道場』では、この仕掛けは△4四歩という軽い受けがあってムリ、という結論だったのだが、本書では石田流成功となっている。よくよく読み比べてみると、『石田流道場』では▲6五角としていたところを本書では▲5六角と深く引くようになっており、『石田流道場』での受けはうまくいかないということになっている。
どっちが正しいのかは自分の目で見て確かめてほしい

棒金と居飛車穴熊は、いずれも『島ノート』で紹介したような形。
確かヅラノートは棒金優勢だったと思うのだがその辺は素通り(笑)。居飛車穴熊はダイヤモンド美濃が優秀、という結論だったので、これは同じ結論だ。

『石田流道場』の紹介で書いたことなのだが、石田流はやはり独特の形とか間合いがあって、少し苦しそうに見えるけどこの形になれば勝負形、というパターンが結構ある。
もちろんプロの目で見れば実際は苦しいのだろうが、アマチュア同士の叩き合いならそうとも言えない。「攻められている」「受けさせられている」「美濃囲いが固くて寄せが見えない」など、居飛車側にプレッシャーとなる要素が多いからだ。そういう意味では、本書くらいざっくり解説してくれた方が、石田流魂(笑)が判りやすく理解できるのでいいのかもしれない。

初段、2段くらいまでの石田党は絶対に買い。▲7四歩の変化が気になる有段者も買い。その他の人は、パラパラと見るだけで十分だろう。

作成日:2005.02.10 
三間飛車

上達するヒント

上達するヒント (最強将棋レクチャーブックス(3))
著者 :羽生 善治
出版社:浅川書房
出版日:2005-01-31
価格 :¥1,430(2024/09/02 11:59時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

将棋を指す時の大局観とか考え方について、羽生が解説した本。

いつだったか会社の厚生部のイベントに無理矢理狩り出されてねずみランドまで行かされて、「俺はこんなとこ嫌いじゃあ!!」とか言って速攻で新森ビルに遊びに行って、そのついでに寄った八重洲ブックセンターで『羽生の奥義』とかいう本を見つけて中を見てみたら外人向けの解説かなにかが書いてあって、どうもその本を一冊にまとめたものらしい(長ぇよ)。

内容としては、先崎の『ホントに勝てる~』シリーズを将棋全般に拡充したような感じだ。位とか捌きといった概念をなるべく言葉で説明しようという意図が感じられた。随所に「~か判れば有段者」といった記述があるように非常に難しい作業だったと思うのだが、なかなかうまくいっていると思う。
大人のための入門書、という体ではあるが、読み進むとともに対象棋力も上がっていくので、実際には初段くらいないと全部を理解するのは難しいかもしれない。初心者向けではなく、初級者、中級者向けの本だろう。

将棋の概念は口で説明するのが本当に難しいのだが、それに果敢に挑戦した本だと評価したい。
もっとこういう本が出れば、アマチュア棋力の底上げにもなると思う。

作成日:2005.02.10 
大局観
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