2008

将棋上達の方程式 手筋の公式 基礎編

将棋上達の方程式手筋の公式 基礎編: 初級者
著者 :北島 忠雄
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2008-03-01
価格 :¥878(2024/08/31 16:50時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

駒別の手筋について、初心者(初級者ではなく、本当の意味での初心者)に解説する本。

はじめの2/3くらいで、講義形式でずーっと手筋を解説するという、かなり贅沢というか丁寧というか、ありそうでなかった形式を取っている。『寄せが見える本』の初心者版、といった感じだろうか。この形式は評価したい。
題材も、初心者向けということで、▲2二歩と打って桂馬が取れますとか、▲2五香で田楽刺しですとか、▲4一銀と割り打ちますとか、そういうレベルのものを一通り集めている。半可通の方が見ると「こんなカンタンすぎるもの」と哂いそうなものもたくさんあるが、こういう知識の集成が実は上達には一番いいのだ。著者はそこのところをよーくわかっているのだろう。本文中のイラストも含めて、物を教える才能があるのだと思う。こういう人はこういう人で立派なプロだ。

本音を言えば、個人的には若干文章が気になった。もう少し練ればさらに読みやすくなるのでは……と感じる部分も多々あった。ただ、この点については個人の手癖の部分が大きいからなんとも言えないのかな……と考えることにしている。

後ろのほうにちょっとだけ高度な(単に手数が長いだけと言ってしまえばそれまでなのだが(笑))手筋を載せて、「これが理解できたんだ。上達したんだなオレって」と読み手の心理をくすぐることも忘れていない(←冗談ですが、まったくの妄想ではないと思います)。なかなかに練られた良書だと思う。

作成日:2008.07.21 
終盤・寄せ

最新矢倉戦法

最新矢倉戦法:▲3七銀戦法徹底研究 (スーパー将棋講座)
著者 :高橋 道雄
出版社:創元社
出版日:2007-08-01
価格 :¥110(2024/08/31 21:08時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

先手の立場から見た矢倉3七銀戦法の解説本。創元社フォーマットとでも言うべき大きな図面を豊富に用いた解説ながら、3七銀戦法の急所はキッチリと押さえられた良書に仕上がっている。

内容は、まずは3七銀戦法の基本形以前の変化(早い△8五歩や早い△4三金右など)を解説し、その後、基本形から△8五歩と△9五歩の2つの大きな分かれをそれぞれ解説していく。△9五歩型では▲6五歩に言及するなど最新の形にも触れていて、決して初級者向けだけの解説にとどまっていないのが好印象だった。
最後に、大きな流れとはやや外れた形、△5三銀型と△7三銀型、それと森下システムについての解説がある。分量はさほど多くないが、確かに押さえておきたい変化だ。

解説を最低限のポイントだけにしぼり、しかし不足なくまとめるというのはなかなかに難しいことだと思うが、それをやってのけた本だと感じた。本書一冊あれば、とりあえず先手番の矢倉は指しこなせるのではないだろうか。

作成日:2008.04.18 
矢倉

ボナンザvs勝負脳

ボナンザVS勝負脳: 最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21 C 136)
著者 :保木 邦仁
出版社:角川書店
出版日:2007-08-01
価格 :¥859(2024/08/31 15:38時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

時のタイトル保持者とコンピュータ将棋ソフトが平手で勝負する。こんな話が現実になったんですよね。渡辺竜王vsボナンザ。本書は、ボナンザ作者の保木さんと対局者渡辺竜王が、「世紀の一戦」前後について語った本である。

まずは保木さんがボナンザ開発の経緯を解説し、続いて渡辺竜王が「世紀の一戦」前後についての顛末を。そのあと二人の対談が入り、最後に二人がそれぞれ思うところを綴っている。

渡辺竜王の指摘はコンピュータ将棋の進歩にとって有用なものになるだろうし、ボナンザ開発の経緯はコンピュータ将棋に興味がある人であればぜひとも読んでほしい。個人的には、最後の保木さんの話が印象に残った。本題とは少し違う気がするんだけども……(笑)。

通常の「将棋の本」ではないが、コンピュータ将棋に興味がある人、コンピュータ将棋なんてまだまだでしょ、と思っている人は、一度手にとってみてほしい。同じ将棋の、けれど少しだけ違う新しい世界がそこにはある。

作成日:2008.04.18 
読みもの

頭脳勝負

頭脳勝負: 将棋の世界 (ちくま新書 688)
著者 :渡辺 明
出版社:筑摩書房
出版日:2007-11-01
価格 :¥38(2024/08/31 15:38時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

渡辺竜王が、将棋を知らない人に向けて書いた「棋士・将棋」解説本。ルールの解説からホームページの紹介、できるだけ平易な解説を試みた自戦記、詰将棋の収録など、意欲作である。

ちくま新書からの出版ということもあり、また、ターゲットが「将棋を知らない人」ということもあるので、できるだけ▲△を使わないで将棋を説明しようという試みだそうだ。確かに、その意志は感じた。
感じたのだが、しかし、じゃあそれが成功しているかというと、うーんどうなんだろう、というのが正直な感想である。自分自身がドップリ将棋に浸かっているせいで正常に判断できないということもあるし、そういう先入観を持ってしまっているせいか、どうも「わざとランクを下げて書いてます」的な空気が出てしまっているように感じてしまった。バカにしてる、とまでいうとそれこそ言いすぎだしそういうことでは絶対にないのだが、そのあたりのさじ加減に失敗している気がする。
じゃあお前にできんのかそれと言われるとできないしorz、それが非常に難しいということも重々わかっている。それについて攻撃するつもりは毛頭ない。前述のとおり、意欲は買うしこれからもこういう方面にも手を出し続けていてほしいと思っている(渡辺竜王はそういうことができる素質を持っているとも思ってるし)。ただ、本書に関しては、ちょっと失敗だったかな……と。

元々がどだい難しいテーマなので、及第点以上ではあるのかもしれない。ただ、どうにも肌に合わなかった……というのが正直なところである。客観的な書評でなくて申し訳ない。

作成日:2008.04.18 
読みもの

とっておきの相穴熊

とっておきの相穴熊 [マイコミ将棋BOOKS] (マイコミ将棋ブックス)
著者 :広瀬 章人
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2007-10-23
価格 :¥1,509(2024/08/31 21:43時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

相穴熊限定という非常に下品な(笑)分野にしぼった解説本。定跡書ではなく相穴熊を指す上での思想・考え方・大局観を解説する本で、昔、『秘伝 穴熊王』という本があったが、それと同じようなテイストの本だ。
穴熊マスターの広瀬プロとアナグマン遠藤アマとが、一つのテーマ図について自由に語り合うという対談形式になっているが、実際は広瀬プロの異質かつ鋭い大局観(とそれを裏打ちする深い読み)を堪能するという内容といった方が正しいだろうか。とにかく広瀬プロの手にかかると、固いと思われている穴熊があっという間に攻略されるし、さばけないと思っていた飛角が大暴れする。なんなんだろうこれは、と言いたくなるほどの「穴熊芸」である。

穴熊ビギナーは第1章、第2章の基本講座的な内容で勉強し、穴熊マスターは第3章で広瀬プロの名人芸を堪能してほしい。
穴熊党には必読の書である。
それ以外の人は読む必要はない(笑)。

作成日:2008.04.18 
穴熊
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