将棋上達の方程式 手筋の公式 基礎編
駒別の手筋について、初心者(初級者ではなく、本当の意味での初心者)に解説する本。
はじめの2/3くらいで、講義形式でずーっと手筋を解説するという、かなり贅沢というか丁寧というか、ありそうでなかった形式を取っている。『寄せが見える本』の初心者版、といった感じだろうか。この形式は評価したい。
題材も、初心者向けということで、▲2二歩と打って桂馬が取れますとか、▲2五香で田楽刺しですとか、▲4一銀と割り打ちますとか、そういうレベルのものを一通り集めている。半可通の方が見ると「こんなカンタンすぎるもの」と哂いそうなものもたくさんあるが、こういう知識の集成が実は上達には一番いいのだ。著者はそこのところをよーくわかっているのだろう。本文中のイラストも含めて、物を教える才能があるのだと思う。こういう人はこういう人で立派なプロだ。
本音を言えば、個人的には若干文章が気になった。もう少し練ればさらに読みやすくなるのでは……と感じる部分も多々あった。ただ、この点については個人の手癖の部分が大きいからなんとも言えないのかな……と考えることにしている。
後ろのほうにちょっとだけ高度な(単に手数が長いだけと言ってしまえばそれまでなのだが(笑))手筋を載せて、「これが理解できたんだ。上達したんだなオレって」と読み手の心理をくすぐることも忘れていない(←冗談ですが、まったくの妄想ではないと思います)。なかなかに練られた良書だと思う。