2011

最新の矢倉3七銀戦法

最新の矢倉3七銀戦法 (プロ最前線シリーズ)
著者 :屋敷 伸之
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2010-12-23
価格 :¥152(2024/08/31 21:08時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

タイトルの通り、矢倉3七銀戦法を解説した本。
加藤流と4六銀戦法△8五歩型、4六銀戦法△9五歩型を解説している。
△9五歩型は宮田定跡のその先を、△8五歩型は穴熊に組んでからの攻防が主流。

かなり詳しく、そしてしっかりと解説しているなと感じた。レイアウトなどが東大将棋シリーズに似ていたからかもしれない(笑)。解説部分に関してはよく書けていると思う。

ただ、少し気になったのが、変化が分岐したときの書き方。
例えば、▲2五歩に△3三銀と△1三銀という2つの手があったとする。そのとき、△1三銀は後述する、とする。これはいい。しかし、△3三銀の解説が一段落ついたところで、急に第○図というのが出てきて、それが△1三銀と指した局面なのだ。普通、「第○図は第○図の△3三銀で△1三銀と指した局面」とか書いておくよねぇ……。
これがあったので、ちょっと油断すると「あれ、今どこだっけ?」となってしまう。白砂は盤駒を出して棋書を読む人間ではないのでこういうことをやられるとより辛い。

内容がよかっただけに、この点はもうちょっと気を配ってくれてもよかったと思う。もちろん内容はいいので、評価は高いです。

作成日:2011.08.25 
矢倉

居飛車穴熊必勝ガイド

居飛車穴熊必勝ガイド (マイコミ将棋BOOKS)
著者 :佐藤 天彦
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2008-04-24
価格 :¥508(2024/09/01 14:20時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

題名の通り、居飛車穴熊vs四間飛車に絞って解説している本。ちなみに、居飛車穴熊が先手で解説してある。

内容は、

  • △3二飛型急戦……藤井システム対策に早めに▲3六歩と突いた手に対して△3二飛と回って△3五歩と突く手を狙ってくる展開。
  • △4五歩△3五歩急戦……△4五歩△3五歩としたあと、△4四飛△3四飛を狙ってくる展開。
  • △4四銀型……△4五歩△4四銀から△5五歩を狙ってくる展開。先手は松尾流を基点に考える。
  • △3二銀型……△3二銀の形から△4五歩と突く形。後に△4一銀△5二銀と固めたりもする。
  • △5四銀型……クラシカルな腰掛け銀。受けに重点を置いている。

となっている。

当然のことながら全て先手、つまり居飛車穴熊が指せる、という結論になるのだが、実は『四間飛車破り 居飛車穴熊編』からほとんど進化していない。渡辺本はかなり詳しく解説されているので、深い勉強をしたかったら、古い本ではあるが本書よりも渡辺本のほうがいいかもしれない。
逆に言うと、本書のよさはコンパクトにまとまっていること。主要な変化だけに抑えて枝葉をバッサリ削り、本筋を理解できるように考えられている。これはどちらがいいか悪いかということではなく、読み手がどちらを選ぶべきかという問題だろう。

という理由により評価は有段者はやや下げている。決して有段者が読む必要がないと言うわけではないので誤解のないように。

作成日:2011.08.22 
穴熊

マンガでおぼえる棒銀戦法

マンガでおぼえる棒銀戦法:この本を読めば友だちに勝てる!
著者 :高橋 道雄
出版社:創元社
出版日:2011-06-09
価格 :¥971(2024/09/01 17:26時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

マンガで戦法の解説ができるものなんだろうか、と正直疑ってかかっていたのだが、なかなかどうして、ちゃんと解説されている。もちろん、微に入り細を穿ちというわけにはいかないが、「棒銀でこうやって敵陣を破るんだよー」という基本ができている。
ここで、ホントはやっていいのかどうか微妙なところなのだが、本書で紹介されている解説手順の棋譜を掲載する。

▲2六歩  △8四歩A  ▲2五歩  △8五歩  ▲7八金B  △3二金  ▲2四歩  △同 歩
▲同 飛  △2三歩  ▲2八飛  △8六歩  ▲同 歩  △同 飛  ▲8七歩  △8二飛C
▲3八銀  △7二銀  ▲2七銀  △6四歩  ▲2六銀  △6三銀  ▲2五銀  △5四銀
▲2四歩D  △同 歩  ▲同 銀  △3四歩E  ▲2三銀不成F△4四角  ▲3四銀成 △2二角G
▲2四歩H  △4五銀  ▲3五成銀 △5四銀  ▲2三歩成 △同 金  ▲同飛成  △8六歩
▲同 歩  △8五歩  ▲7六歩I  △8六歩  ▲8三歩  △5二飛J  ▲2二角成 △同 飛K
▲同 龍L  △同 銀  ▲8二歩成 △8七歩成M ▲同 金  △8五飛  ▲9六角N  △3五飛
▲4一飛  △6二玉  ▲6一飛成O △同 玉  ▲5二金 まで先手勝ち

A:△3四歩と突けば棒銀の形は回避できる
B:▲2四歩は△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△8七歩で不利になる
C:△8四飛とし、以下▲3八銀△3四歩▲2七銀△3三角▲2六銀△2二銀▲2五銀△3五歩で棒銀不発
D:▲2四銀では△同歩▲同飛で銀損
E:△2三歩は▲同銀成△同金▲同飛成で先手有利
F:不成で行くのがポイント
G:△2二歩は▲4四成銀で駒損
H:▲2三歩でも悪くないが、▲2三歩成とと金ができた図と比べると若干損
I:▲同歩は△同飛で3五成銀取りと△8七歩を見られる
J:△同飛は▲2二角成△同銀▲同龍で先手銀得
K:△同銀は▲2六龍で先手有利
L:▲3四龍は△3三歩で先手やや不満
M:△2七飛は▲3九金△2三飛成▲3四歩で後手不満
N:▲8六歩は△8二飛で、▲8六飛は△3五飛で先手やや不満
O:詰み筋は他にもいろいろある

注目してほしいのが、▲2三銀不成から▲3四銀成、▲2四歩といった手筋を解説しつつも、▲2四歩と合わせ歩で攻めるのではなく▲2四銀と突っ込んだらどうなるのかという超初心者向けの手も解説しているところ。実際にこういう手を初心者が指してしまうのかどうかは正直わからないが、そういう「ダメな手」を解説しつつ駒の損得など基本的な部分についての解説もしているという点は評価できる。また、最後の詰めの部分についても何通りもの詰め方を解説したり、基本的な手順のみではあるが原始棒銀対策も紹介しているところなど、「次の一歩」の手がかりを残しているという点もいい。

将棋を覚えたての子供が本書を読んで、とりあえずの得意戦法とする……というにはちょうどいいだろう。良書と思う。

作成日:2011.08.13 
入門

大局観 自分と闘って負けない心

大局観 自分と闘って負けない心 (角川新書)
著者 :羽生 善治
出版社:KADOKAWA
出版日:2011-02-11
価格 :¥990(2024/09/01 17:26時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「羽生ブランド」の一冊、という感じがした。正直なところ。

羽生の将棋に対する考え方というのは、意外と目にする機会が多いように思う。おおげさな表現をすると、その内容がそのまま載っている。予想通りの一冊、である。
その「カタい」作りから、将棋の本と言うよりはビジネス書として位置づけた方がいいと思った。まぁ、このシリーズの既刊内容を見ればそんな持って回った言い方をしなくてもわかる当たり前の話ではあるのだが(笑)。ちなみに、既刊については裏表紙の折り返しに出てます。

内容は、勝負に関する事項──表題の「大局観」であるとか、精神力、運、セオリーなど──について羽生が自身の視点で語る、というもの。ざーーーっくり極端な約し方をしてしまうと、精神力って大事だよね、便利なものを過信しちゃダメだよね、といった感じの、まぁ典型的な「非論理賛美(白砂の造語です)」である。

誤解のないように言っておくと、羽生は別に論理が大事ではない、精神力がすべてであるといっているわけではない。ここは大事なところなのでハッキリ言っておく。
ただ、これまたありがちな話なのだが、

  1. 論理は大事
  2. 論理がすべてではない
  3. 非論理的なものは大事
  4. 非論理なものがすべてではない

という4つの面があったとして、だいたいにおいてこういう本で強調されるのは2と3である(笑)。やっぱりその方がウケがいいんだろうか。
場所によってはそれがものすごく強調されすぎたところもあったので、そういう点でも「これホントに全部羽生が書いたのかなぁ……」と思ってしまった。

作成日:2011.08.04 
読みもの

史上最強カラー図解 羽生流勝つための将棋入門

史上最強カラー図解 羽生流勝つための将棋入門
著者 :
出版社:ナツメ社
出版日:2011-04-14
価格 :¥1,100(2024/09/01 17:26時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

駒の動かし方から始まって、序盤・中盤・終盤にどのような目標を持って指せばいいか(玉を固める、駒を成る、など)の概論と各論、この辺りまでで大体120ページくらい。そこから先は囲いと戦形のガイドと手筋の紹介、次の一手が合わせて70ページくらい、といったところか。

書名の通り全ページオールカラーで、191ページで1,000円というのは頑張った価格なんだろうな、とは思う。ただ、この本の対象者が見えない。
すべての漢字にルビを振っているところからも、小学生程度を対象としているのだろうなということはなんとなくわかる。しかし、であれば「攻めの拠点を作る」とか「攻守のバランスに優れた」なんていう表現をするのはどうなんだろう。もう少し他の言い回しがあってもいいように思う。

どうも、子供向けとは言いながらも、将棋を知っている人がその知識で作ってしまった本、という感じがする。
内容は悪くない。特に、レベル2、3辺りの「序盤中盤終盤でやるべきことが違って、それぞれの目標に合った指し方をする」という解説は、ただ手筋を並べるよりも親切だしわかりやすいだろう。

前述のことからも、むしろ大人の入門者が読むべき本だと感じた。

作成日:2011.08.03 
入門
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