題名に「新戦略」とあるが、その名のとおり定跡というよりは戦略について書かれている本である。
話としては、▲7六歩△8四歩に▲7八金とする形について解説し、次に、ここから△3四歩、△8五歩、△3二金の3種類の指し手について、それぞれの対応策を述べている。ちなみにその3種類以外の指し手では先手が指しやすくなるというのが著者の主張だ。
この指し方の基本は「角換わり、矢倉などで少しでも得な形を目指す」ものである。「定跡」ではなく「戦略」だというゆえんがここにある。よって、まず角換わりだとか矢倉の定跡を知っていることが前提となる。
であるから、本書を読むためにはそれらの知識は必須。初段くらいでは本書は価値がわからないと思う。既存の形より少しでも得をしようという、実にプロ好みの「戦略」なのだ。
白砂の場合、▲7六歩△8四歩スタートには必ず▲7八金とするので、ある程度参考にはなった。もっとも△3四歩の場合には本書とは違って▲2二角成△同銀▲7七桂とするのだが(笑)。
そういう事情があるので、出版されると同時にすぐ買った。
一番役に立ったなぁ……と思ったのが中飛車にする変化で、こういう力戦形はただてさえ定跡書が少ないので参考になる。特に本書では穴熊の変化を含めいろんな指し方を紹介しているので、自分なりに消化するのに都合がいい。
戦略であるがゆえに、「こっから先は○○の形になります。ただし少し得です」というのが多いので、人によっては中途半端と思うかもしれない。個人的には、本書は道案内であって地図ではないと思っているので、どこになにがありますよと教えてくれるだけでも十分参考になった。
居飛車党なら手にとってもいいと思う。
ただし、既存の定跡書は必須。高段者向けの本だろう。