調べたわけではないのでくわしくは知らないが、雁木戦法の歴史は相当に古いものらしい。にもかかわらず、プロの公式戦で雁木戦法が指されることはほとんどない。なぜなのだろうか?
……知らない(<をい)。
冗談はさておき、というわけで、雁木はプロ間ではあまり指されない。しかし、アマチュアでは別だ。小暮氏を筆頭に雁木愛好家は意外と多い。
これまた理由は定かではないが、推察するに「自分の土俵に引きずり込む」効用が大きいものと思う。振り飛車党はそんなこと考える必要もないのだが(笑)、居飛車党の場合、特に後手番での指し方に困る。矢倉は勝率が悪いし、角換わりや相掛かりも同様だ。しかも、それらの戦形はすべて「日頃から研究してよく知っている」必要がある。そんなこと仕事が忙しいアマチュア愛棋家にはできるわけがない(いや、立派にやっている方ももちろんいますよ)。
そこで「定跡はずし」のひとつとして、雁木戦法がクローズアップされるわけだ。
相手は不慣れだし、こちらは右四間っぽく攻めるだけとコンセプトはとっても簡単。棋力はあっても情報戦で遅れをとる社会人アマ棋士にはもってこいの戦形だろう。
本書は、そういったアマチュアのために書かれている。豊富な変化と詳細な解説は読んでいて理解しやすい。図の使い方もアクセントが効いている。これは『伝説シリーズ』共通の特徴だろう。
社会人はもとより、学生将棋でも通用する居飛車党の切り札になりうる戦法だ。