矢倉24手組みから始まって、3七銀戦法など基本的な矢倉戦についての解説をした本。題名の通り、定跡を深く解説するのではなく、定跡の本筋だけを紹介するような形になっている。
森下といえば『現代矢倉の○○』があるが、内容そのものはそちらで十分である。こっちの本は、創元社という出版元からも判る通り、入門編。
そのため、既に河出書房新社の本を持って読んだ、という人には必要ないと思う。あの本は難しくて……という人のための本だ。
ベースが河出書房新社のものなので、内容は本筋である。
ただし、コンセプトは先崎の「ホントに勝てる」シリーズと同じなのだが、非常に高度でもある。
題材が矢倉のためなのか、著者の森下が「正しいことを伝えるのが正しいことだ」と考えているからか、その辺は判らない。ただ、先崎本が「なんとなく指しこなしていけるようにする」というコンセプトなのに対し、本書は真っ向から矢倉の本筋を語っているような気がする。要は高段者の考え方をそのまんま書いているので、そのために高度な思想が見え隠れする内容になっている。
もちろん、指し口そのものは「入門編」なので、心配しながら読むほどではないだろうが、白砂は少し気になった。もっとも、これは振り飛車と矢倉の違いという本質的なものかもしれないので、なんとも言えないのだが。
とりあえず、初段くらいの人までなら読んで参考になると思う。有段者は必要ない。もっと他の本を読みましょう(笑)。