かなり高度な内容を実は解説しているこのシリーズ。第3弾は「囲い」にスポットを当て、その崩し方を解説している。
登場するのは美濃・矢倉・穴熊の3種。
囲い崩しだったら対振り飛車の舟囲いはないの? と思ったが、冷静に書名を見てみれば『堅さをくずす本』だった。舟囲いは固さよりは広さを主張する囲いだ。
内容としては、まずはじめに一般的な囲い崩しの「形」を解説し、次に実戦譜で具体的な手順を解説する。次の一手形式で延々続く形式なので、図面はかなり多い。
ただ、どうも不満というか、事前の触れ込みとの落差のようなものを感じてしまった。こちらが勝手に感じてしまったものなので酷な話ではあるのだが。
最初、本書は「どういう形であればどういう囲い崩しの手筋が利用できるか」というテキスト(講座)的なものだと思っていたのである。この形はこの金と龍の位置関係に注目、この場合はこういう手筋が利きます、とか、この場合はここに後手の利きがあるため、手筋1は使えません、とか。
それも基本的な囲い崩しだよ、と言われてしまえばそれまでなのだが(<そうなのか)、むしろこれは「囲い崩しの応用」だと思う。で、本書は、その応用のメカニズムを解明した画期的なものだと思ってしまっていたのだ。
もっとも、本書の形式が白砂にはあまりなじまなかった、という方が根本的な問題で、そのために評価が低くなってしまっているのかもしれない。次の一手形式とはいえ、きちんと順序立てた例題が並んでいるので、体系的に学べると言えなくもない。
また、扱われている手筋はよくあるものだが、プロの実戦で出てきた「王道の寄せ」である。その手触りを覚えることは、間違いなく棋力向上につながるだろう。
結局のところ、題材自体は悪くない。あとは読者の腕次第、という感じの本だと思う。