著者の自戦記をまとめた本。
ただし、書名に「注釈」とある通り、ただ今までの原稿をまとめただけではない。著者にインタビューをして、内容の疑問点や当時との感覚の違い、自戦記より更に突っ込んだ著者の意見などを各章末にまとめている。なんとなくヲタっぽいというか「注釈で笑いを取る」的な感じはなくもないが、本書の主題は間違いなくそこにある。
自戦記を雑誌などに掲載する場合、あまりに個人的に突っ込んで内容に言及するわけにはいかないし(それはそれで面白いと思うが)、時間が経ってそれを読む場合、将棋の結論が変わっていたりしてそのまま内容を鵜呑みにもできなくなる。そういったフォローが、まずこの「注釈」によってなされている。
それだけではなく、インタビューを通じて、著者の将棋、棋士に対する考え方などにも触れている。
棋士はそんなに文章がうまい人ばかりではないし、自分の意見をうまく表現できないこともある。しかし、編集がその辺りをうまく誘導尋問(笑)することによって、当人がただ書く以上の濃い内容を引き出せている。実際、著者の考える「将棋」「棋士」「センス」といった内容が、非常に判りやすく、そして面白く書かれている。
自戦記そのもののレベルも非常に高いのだが、むしろこの「注釈」の部分を読み取って欲しい。
アマ高段になって、もう一つ棋力が伸びない人。そんな人には是非とも勧めたい。きっと「足りない何か」がなんなのか判るはずだ。