当時女流名人・倉敷籐花2冠だった里見が監修した入門書(まぁ実際は名前貸しなんだろうけどね……)。
内容は、序盤中盤終盤それぞれの局面での指し方の指針の解説。基本的には見開き単位である。
駒の動かし方などの知らない人向けの説明は15ページほどしかない。また、「指針」と書いた通り、本当に手筋や形の解説しかしていないので、本書を読んで「さぁ、将棋を指そう!」と言っても絶対に指せない。その点、『60分でわかる!はじめてでも勝てる将棋入門』などとは対極である。本書はあくまでも「入門者が強くなるための本」である。
逆に言うと、強くなるためのエッセンスはかなりうまく詰め込んである。
例えば、中盤での指し方の指針として「成駒を作る」と解説している入門書は多い。本書ももちろんそうなのだが、その解説は飛角桂歩の4種に絞っている。桂馬を中央に跳ねていって成る(捌く)とか、角を馬にするメリットについて解説するというのは、入門よりもワンランク上の解説だ。
ただし、子供向けにルビを振ってあるにしては「表裏一体」「玉を避難」などと書くのはどうかと思った。素直に「どちらもだいじ」「玉を安全なところに持っていく」でいいと思う。将棋を知っている人が解説するとどうしても文字数の関係からこういう言葉を使ってしまいがちなのだが、本当に読者のことを考えているのであれば知恵を絞ってなんとかしてほしい。難しいのは重々承知の上での要求ではあるのだが。
本書を最初の一冊にするというのはちょっと無理がある選択だが、入門書を読み終わった子供が次に手に取るにはピッタリの本だと思う。本書をちゃんとマスターすれば、2級くらいまではすぐだろう。