第1巻の『東大将棋ブックス四間飛車道場 第1巻 ミレニアム』に続く第2巻。今度は急戦である。
居飛車穴熊に囲う場合、まず▲5七銀▲5八金としてから穴熊に潜る。しかし、穴熊と見せてそこから▲4六銀と出て仕掛けてしまうというのが本書で解説している形である。
4六銀左の形に比べて3筋が薄いので、△3七歩成▲同桂△3六歩、といった反撃手段が生じる(4六銀左の形だと右銀が4八にいるので、△3七歩成は▲同銀と取れるからこの筋はない)。それを踏まえつつ、どう攻め込んでいくかという将棋だ。塚田監修で同じような形を解説した本が出ていたと思うが、多分絶版で手に入らないだろう。また、同じ所司和晴著「急戦! 振り飛車破り」も現在は入手困難なので、本書はその隙間を埋めるものになるだろう。
また、箱入り娘という珍しい囲いでの攻めについても解説してある。舟囲いから▲6八金寄とした形なのだが、これが意外と固くて使える。一応著者のオリジナルだということなので、奇襲チックに実戦で試す価値はあると思う。
ちなみに、「箱入り娘」を命名したのは加藤治郎名誉九段。『将棋は歩から』にそのへんの顛末は書いてある。しかし、確か箱入り娘とは7七桂も跳んである形だったと思うのだけれど、錯覚だったかなぁ……。
藤井システムに悩まされている居飛車党は必携。藤井システムの形だけ覚えて「急戦で来られると話が違う」と愚痴っている振り飛車党(笑)も必携である。
ただし、このシリーズ共通の欠点である「読みにくい」という部分についてはなんの改良もされていないので、有段者以外は手を出さない方がいいだろう。