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ゴキゲン中飛車の急所

ゴキゲン中飛車の急所 (最強将棋21 #)
著者 :村山 慈明
出版社:浅川書房
出版日:2011-12-01
価格 :¥1(2024/08/31 22:33時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「序盤は村山に聞け」の村山が書いたゴキゲン中飛車本。全体的に居飛車目線な気がするが、内容そのものは非常に客観的に書かれている。

扱っているのは

  • ▲5八金右型
  • 超速▲3七銀
  • ▲7八金型
  • 居飛車穴熊
  • 丸山ワクチン

の5つ。とはいえ、実質的には▲5八金右急戦と超速の解説書と言っていいだろう。
特に▲5八金右型については、「▲1一龍から▲6六香(そのあと▲6五香打と重ね打つ)」「▲1一龍から▲3三角」「▲7五角」の3つの手について、実戦に現れることなく消えていった研究手なども合わせて書かれておりかなりディープな内容になっている。最後に「ゴキゲン中飛車指せる」の定跡がボナンザによって発見された、というのもなかなか面白い。
また、超速については、△3二金とする形と△3二銀とする形の両方を解説している。ただし、▲3七銀に△4四歩とする「菅井新手」については解説されていない(ちなみに、別の「菅井新手」が紹介されていて、これがまたちょっと笑える新手である)。2012.2現在、菅井新手はvs超速の最後の砦のような感じになっているので、もう少し刊行が遅ければ本書にも解説されていたかもしれず、そうすればもっと「役に立つ」本になっていた気がする。本当にもったいない。まぁ、もし入ったとしたら、第3章はカットになるんだろうな(笑)。
その第3章は「その他の対策」ということで、▲7八金型と居飛車穴熊と丸山ワクチンを軽く解説。いずれも、ゴキゲン中飛車に完膚なきまでに叩き伏せられて衰退した、というより興味が超速に移ったために指されなくなっている感もあり、押さえておいていい変化であることは間違いない。

とても力の入った本であることは読んでいけばすぐにわかると思う。ただ、だからこそちょっと編集に難を感じた。時系列に沿って新手を追いかけていく感じは嫌いではないのだが、せっかく「10年先まで使える本当の基本」と銘打っているのだから、むしろ変化を体系的にきちんとまとめた方がいいのではないかと思った。ちょうど、藤井の『四間飛車の急所』みたいな感じである。せめて『最前線物語2』くらい、各項の最初に取りまとめた説明が入るとか、そういう風になっていれば印象も違ったと思うのだが。
盤駒抜きで読むのは大変だと思うので(まぁ白砂はなしで読んだんだけど(笑))、また、級位者はそもそもゴキゲン中飛車をやるべきではないという古臭い感覚の持ち主なので(笑)、級位者の★は3となっているが、力作であることは間違いない。いつか読むために、また、タイトル戦のお供に手元に置いておくのも悪い手ではないと思う。逆に有段者は買いである。

作成日:2012.02.29 
中飛車

勝てる棒銀戦法

勝てる棒銀戦法 (将棋最強ブックス)
著者 :照市, 青野
出版社:創元社
出版日:2011-11-21
価格 :¥1,430(2024/08/31 22:07時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

以前、『最新 棒銀戦法』という本を書いていた著者がまたまた書いた棒銀本。「急戦の青野」と言うだけあって、なかなか面白く読めた。

内容は、すべて棒銀(当たり前か(笑))。

相掛かり棒銀
▲3六銀戦法、と言った方が通りがいいんだろうか。創元社の本らしく、相手が初級者の場合はこう攻める、というところから解説して、△8四飛~△3三角と正確に受けられた場合までを解説している。端桂を捌く筋というのはプロの実戦でもあったと思うのだが、そう言われてみれば解説した棋書はあまり見なかった気がする。
矢倉棒銀
早囲いにして、さらに▲3八銀▲2七銀から一直線に棒銀にしていく形。
後手であれば、『超過激!トラトラ新戦法』に出てたムリヤリ矢倉がそうなのかな。先手が早囲いにしているのにのんきに△4四歩△4三金右などと指して速攻をかけてこない「都合のいい変化」ではあるのだが、逆に今頃に早囲い、なんていうのはレトロとは言えなくもないので(まぁ藤井流があるか)解説書もそんなになく、中級者くらいまでであれば本書の通りにハマってくれるかもしれない。▲3六歩▲3七銀なんてしないで直球、というのは覚えやすくていいと思う。
vs四間飛車
角道を止めるクラシックな四間飛車に対しての棒銀。▲5七銀▲6八金直の2手を省略していきなり攻める形である。『四間飛車の急所 3 急戦大全 下』には載っている形ではあるのだが、▲4六歩まで省略して素早く攻めるというのが主張である。定跡外しとしては面白いと思うのだが、残念なことにその後の手順がかなり「創作的」でいただけない。藤井本に合流できる(結局棒銀側は▲4六歩と突くので、理屈的にはそのときに△1二香とすれば藤井本と同じ形になる)のにしなかったりとか、△6四角と出て▲5七銀と上がらせて△5三角と引くとか、ある程度対象棋力を下げるためには仕方がなかったのだと思うが、もう少しなんとかならなかったのだろうか。前述の『最新 棒銀戦法』は結構公平に書かれていたと思うのだが。
vs振り飛車穴熊
やはり▲6八銀型のまま攻める棒銀。最近の本には載っていないが、『定跡外伝』で同じ形が紹介されていた。あと、△3五銀の両取りの変化(といってどれくらいの人がわかるのか(笑))のとき、▲1六飛△4四銀▲1五飛に△3五銀という手があるのだが触れられていなかった。『定跡外伝』では▲4三角があるから無効、となっていたのだが、△3五銀▲4三角△7一金▲3二角成△同金と飛角交換しても、飛車の飛車がかなり不自由なので穴熊も指せる気がする。まぁこの変化を載せろとは言わないが、この変化に触れずに△1四歩▲1六飛△3五銀と「わざと手順前後をして」▲5五歩として逃げられるから棒銀良し、というのはちょっとウソくさい。

……と、随分と文句ばかり垂れたが、基本的に「本筋と少し違う指し方をして相手を惑わしハメる」という本なので、相手が惑わされた場合(=正解手ではない指し手を指した場合)の手順を載せるというのは全く問題がない。上記のツッコミは「ハメ手に対する受け方も書いといてくれると親切なのに……」というだけで、減点と言うほど酷いことだというわけではない。
むしろ、「本筋の有段者向け定跡書」が増えた中、まだこんなヒッカケ手順があったのか──いい意味でね──というのに驚いた。
まさに「勝てる」戦法で、なかなか面白く読めた。有段者でも一度読んでおくといいと思う。ヘンな話だが、定跡を微妙にずらすというのは将棋ソフトでも対応が難しい部分なので、24のソフト指し相手にも効くかもしれないね(笑)。

作成日:2012.02.19 
四間飛車 その他の居飛車

石田流の基本―本組みと7七角型

石田流の基本 (本組みと7七角型) (最強将棋21 #)
著者 :戸辺 誠
出版社:浅川書房
出版日:2012-02-01
価格 :¥1,540(2024/08/31 19:56時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

やっぱりホットな石田流の本ということで、石田流の使い手の一人である戸辺が出した本。タイトル通り、いわゆる石田流本組の形(▲7六飛▲7七桂▲9七角)と、▲9七角が▲7七角になった7七角型を解説している。

内容は、

vs棒金
△6三銀△8三金からいきなり△7四歩と突いていく形から、△5三銀を加えて攻めていく形まで。ただし、その辺まで行くと、石田流側が▲4五銀から反撃してそれを居飛車が受けるという展開となる。
vs左美濃・銀冠
本組から攻めていく形と、▲7七角から▲6五歩と捌いていく形の両方を解説。△9二飛からの千日手狙いや、△7二飛から攻めてくる形などについても言及している。
vs居飛車穴熊
石田流側から美濃囲いで攻める形と、相穴熊について解説。

当たり前の話だが振り飛車は捌いてナンボなので、その辺の攻めの形についてはくどいくらいに詳細に解説してくれている。初段前後くらいの石田流初心者にはありがたいと感じるだろう。本組の場合で▲7四歩を効果的に入れて▲9七角を捌いていく手法、▲7七角を▲5九角から大きく使っていく組み立てなどは参考になる。

一方、相穴熊の方は、△6三銀型のときはまぁいいとして、△5三銀型では「後手は△3三銀のビッグ4を目指します。しかし▲○○○とすることでそれが阻止できます(多分秘手だと思うので一応ヒミツ(笑)。詳しくは本書を手に取ってください)。よって先手よしです」で終わっている。まぁ大げさに言うとだけど。それはないんじゃないかさすがに(笑)。紹介している手法は面白かったのでいいんだけど、もう少し丁寧にいろんな形を見せてほしかった。特に棒金の解説が細かかっただけになおさらそう思ってしまう。
その棒金の解説だが、本当に詳しい。また、針の穴を通すような展開というよりは「豪快に捌こうよ。そうすれば美濃囲いだもん先手よしだよ」といった『振り飛車イズム』が出ていて好感が持てた。本書で紹介されている捌き方を会得すれば、他の振り飛車にも応用が利くと思う。

3段くらいまでだったら間違いなく買い。有段者でも一度は目を通しておくことをお勧めする。

作成日:2012.02.07 
三間飛車

対矢倉 左美濃作戦

マイナビ将棋BOOKS 対矢倉 左美濃作戦
著者 :中田 宏樹
出版社:マイナビ
出版日:2012-01-25
価格 :¥561(2024/08/31 19:56時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

相矢倉の後手番の作戦として、先手が飛車先不突き矢倉で来るのだから△3三銀と受ける必要はなく、だったら△3三銀と上がらずに△3二銀のまんまにしておけばいんじゃない? という考えから、左美濃の形にする、というのがある。何年か前、佐藤康光が「ボクは優秀だと思うんですが誰もマネしてくれなくて」とグチっていた作戦である(笑)。
リクツから言えば間違っていないし、実際、矢倉であれば△4二銀△3三銀△5二金△4三金△3二金と5手必要なところを△3二銀△5二金△4三金の3手で済ませて(玉移動は同じ2二までということでカウントせず)、場合によっては後手にもかかわらず先攻しよう、という意欲的な作戦だとは思う。

大まかに言うと、早めに△6四角と出た手に対して▲3七銀と受けるか▲3七桂と受けるかで、それによって先手側の陣形が▲4六銀▲3七桂になったりスズメ刺し(っぽい形)になったり森下システム風になったりする。これらに対してそれぞれの対策が解説されている。また、左美濃を咎める意味で逆に先手から早めに▲2五歩と突いてくる形も解説してある。
しかし、それぞれの内容は相当にボリュームがある。本当に戦法として成立させるためにはこれくらいの対策は立てておかなければいけないのだろうが、それにしても変化が多い。

また、そもそも章立てがあまり多くないので、それも読みづらい元になっていると思う。なにしろ「左美濃編」と「▲2五歩早突き編」だけなのだ。もっと細かく章立てをして、それぞれの基本図から始めた方が、より体系的に理解できるはずだ。編集も止めろよ……。

内容はとても高度だし、定跡形の矢倉に疲れた後手番の秘策として勉強しておくのは悪くない。なので、有段者は一度見ておくといいだろう。上記の通り盤駒がほぼ必須なので、2段くらいではとても読みこなせないと思う。
せっかくの内容なのにもったいないなぁ……と思った一冊。

作成日:2012.02.04 
矢倉

よくわかる石田流

マイナビ将棋BOOKS よくわかる石田流
著者 :高崎 一生
出版社:マイナビ
出版日:2012-01-25
価格 :¥1,540(2024/08/31 19:56時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「よくわかる」シリーズ。今回は石田流。久保2冠や戸辺、菅井といった「使い手」も多く、タイトル戦などでもたびたび登場しているホットな戦形なだけに、なかなかにタイムリーだと言えるだろう。

内容は、

vs棒金・二枚銀
棒金の基本的な形から、▲7八飛▲6七金とする対策、それに対する△5四歩からの森内流を解説し、▲7七桂と跳ねない石田流の形まで解説。金の動きを保留し、▲7八金とすることも。
vs持久戦
△5四歩△5三銀から左美濃にする手と、△6四歩△6三銀から居飛車穴熊や銀冠などにする展開の解説。最新の▲7七角型にして▲4五銀から▲6五歩、という手順の解説もある。
vs右四間飛車
超、といってもいい急戦から、居飛車穴熊にする右四間まで。特に超急戦は手順解説が多い。
升田式石田流
基本的な升田式の狙いから、▲7四歩の鈴木新手、▲7五飛の久保新手、▲7四歩△同歩▲5八玉や▲7四歩△同歩▲4八玉など。
vs4手目角交換
▲7六歩△3四歩▲7五歩△8八角成のあとの解説。▲同飛と▲同銀と両方の解説がある。△2八角▲1八飛の形、というとわかる人が多いのかな?(少ないだろ(笑))
補足
落穂拾い、といった感じで、今までの仮説の中の変化手順や、取り上げなかったけどこんな感じで指せばいいよ、といった解説。

敢えて詳しく説明させていただいたが、いろんな形についてかなり突っ込んだ解説をしているので、いい意味でも悪い意味でもいままでの「よくわかる」シリーズっぽくない。想定棋力が上なのか、最近流行の戦形だから盛りだくさんにしたのか、ちょっとビックリするくらいのボリュームだった。
また、細かい話だが、補足で細かい(?)展開の解説をしてくれていたのもよかった。多分本編に組み込んでたら煩雑だっただろうし、巻末に持ってきたことでちょっとした「お得感」も出ている(笑)。

なんだかビビらせるかのような煽り方だが、逆に言うとこの1冊で石田流がだいたい指せると見ていいと思う(できれば鈴木本あたりで「うまくいった形」も勉強してほしいが)。その点ではお勧めの一冊。
有段者であっても、最近のタイトル戦のまとめだと思って手にとってみるのをお勧めする。かなり詰め込まれている感じはするが、知っている変化が多いだろうからそんなに苦にならずに読めるだろう。知識がすっとまとまる感じがしていいと思う。

作成日:2012.02.04 
三間飛車
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