棋士が数学者になる時 千駄ヶ谷市場3
『将棋世界』誌に連載していた「千駄ヶ谷市場」をまとめたものの第3弾。平成20年2月から8月までの原稿をまとめている。ちゃんと奥付に書いてあったので、『孤高の大木 千駄ヶ谷市場2』からは改善されたようだ。そういえば、目次が前作よりもっと先鋭化されている。これはぜひ手に取って確かめてほしい……というほどの違いでもないんだけどね(笑)。
内容は、真部の絶局の話や、第66期A級順位戦佐藤vs木村の「歩が足りてるんだよ」など(ちなみに、この言葉は本書には載っていない)、将棋界好きの人には楽しめる話題が多いかもしれない。
最後に、本当にグチにしかならない話なのだが、本書のあとがきについて。
コンピュータ将棋について、まぁよくありがちな「人間ドラマがない」「プレッシャーがない将棋を見ていて物足りない」などといった評がされている。これは個人(あえて「プロ棋士」ではなく「個人」と言う)の考え方なのでどう考えようと知ったこっちゃないのだが、プロ棋士を持ち上げるためにコンピュータ将棋を下げた評をしている気がしてなんか厭だ。こんなのは将棋の世界に限った話ではなく、例えば2ch界隈でも、●流出で大騒ぎしている中、モ娘(狼)板は「○○アンチが全方位攻撃をしていた」だの「ズッキをDisってたのは○○ヲタ」だの、お前ら足引っ張る以外にすることはないのかと(笑)、そういうような世界も多いんだろう(なんか逆に狭い世界の話をしている気がするが……)。
しかし、プロ棋士にはそういうことはやって欲しくなかった。当事者だから。だからこそ。
言いたいのをそこはグッとこらえて、人間ドラマを標榜したいんであればそれだけを言えばいい。わざわざコンピュータ将棋をマクラに持ってくることはない。将棋もコンピュータ将棋も知っている者としてはとても残念に思う。