勝負の視点
何だかすっかり評論家になってしまった青野九段の評論集。
プロの実戦譜を題材にその心理状態まで分け入って詳しく解説したり、読みの本質的な部分の解剖を試みたりと、『読みの技法』青野版という感じの作りになっている。
一度に読むのはちょっと苦しいが(私は文体がちょっと……)、例えば通勤通学の合間にパラパラとめくるのには適している。将棋を指さない人たちなどには特にお薦めである。本書を読んでいると、将棋を指さなくても指している「頭」が作られていく気がする。
ちなみに、『勝負の視点』にある「サリエリに見る天才の嫉妬」は、中原と米長をモーツァルトとサリエリの関係に喩えた評論で、これは将棋ペンクラブでなにかの賞を受賞したはずである。