最強の駒落ち 講談社現代新書 1757
8枚落ちから2枚落ちまでの駒落ち定跡を解説した本。『将棋世界』の連載「駒落ちのはなし」を加筆修正し、いくつか変化をプラスしたものである。
本書の特徴はなんと言っても「上手の指し方」が書かれていることだろう。
『将棋大観』はそもそも上手はうまく斬られるのが前提となっているし、『定跡なんかフッとばせ』は上手のゴマかし方は載っているが、あくまでも下手側から見た「紛れ筋」として採り上げられているだけだ。本書は、おそらく初めて「上手の目線」からも駒落ちを語っている本だ。
内容も十分に面白い。
8枚落ち棒銀対策、6枚落ち矢倉・四間飛車、4枚落ち向かい飛車(おそらく加筆分)など、始めて見る戦法も数多い。また、2枚落ちに代表されるような完成した駒落ち定跡もきちんと解説されている。本書を読めば、駒落ちを指したくなることは間違いない。
一貫して主張されるのは「駒落ちは力を養うのに最適」ということ。
最近は指されていないが、確かに駒落ちは将棋の体力がつく。平手だと勢力が均衡しているためになかなか攻めや受けの手筋を使うことはできない。しかし、8枚落ちではこちらが攻め潰すかどうかが問われるし、2枚落ちではたった金一枚ではあるが「攻めてくる恐怖」と戦うことになる。上手の戦力を減らすことによって、強くなるためのテーマが明確になるわけだ。
実際、白砂の同級生の女の子(昔、田中寅彦のNHK将棋講座でパソコンをいじってた子)は、東京渋谷「高柳道場」に通い、6枚落ちから2枚落ちを指して1年弱で初段程度になった。プロの指導のおかげもあるだろうが、自分の棋力に合わせて考えることができるのは駒落ちの最大の長所である。
白砂は自称定跡ヲタなのだが、振り返ってみるとその発端は『定跡なんかフッとばせ』だったような気がする。完成された二枚落ち定跡があり、実はそこには様々な裏街道がありと、ヲタ垂涎の内容だった。
本書は、そんな定跡ヲタを満足させる内容でもある。一回は読んで損はない