定跡

よくわかる角交換振り飛車

マイコミ将棋BOOKS よくわかる角交換振り飛車
著者 :横山 泰明
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2011-08-25
価格 :¥400(2024/08/31 15:06時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「よくわかる」シリーズ第4弾、ということらしく、角交換をする振り飛車を解説する本。
なんだか茫洋としたタイトルだが、内容を見てもらった方が早いだろう。

序章 角交換型振り飛車の特徴
角交換振り飛車の概要を解説
第1章 ゴキゲン中飛車対丸山ワクチン
△5六歩から歩交換ができた場合は△2一飛と回って飛車先逆襲。できなかった場合は△2二飛から銀冠、もしくは銀冠から△2二飛。
第2章 △3三角戦法
角交換から▲2五歩ときた場合は△2五桂ポン。角交換後に▲2五歩とこない場合は立石流。角交換してこない場合は角筋オープン向かい飛車。
第3章 角交換型四間飛車
▲2五歩と突いてきた場合は△3三銀から飛車先逆襲もしくは△4四銀から△3五歩。▲2五歩と突いてこなかった場合は持久戦。レグスペに合流。
第4章 角交換型石田流
升田式石田流。▲7四歩急戦などではなく、美濃に囲ってから攻める形。▲7四歩と交換できた場合とできなかった場合。
第5章 その他の角交換振り飛車
2手目△3二飛戦法・ダイレクト向かい飛車・端歩位取り角交換振り飛車。それぞれさわりだけ。

大体こんな感じだ。

本当に「さわり」だけなので、類書を紹介しているケースも多い。『角交換振り穴スペシャル』や『2手目の革新 3二飛戦法』などである。また、各章それぞれの戦法についても、類書がまったくないというわけではない。本書はあくまでも「どういうものか見てみよー」的なガイドの一冊である。なので、紹介されているのは、別の本を見れば必ずどこかに書いてあるだろうという変化ばかりと言っていい。
解説はごく基本的なものに限られているし、「少し有利」かな、ぐらいのところまでで終わっている。ひどいときには、立石流の1変化で「銀交換してるから指しやすい」で終わっているものもある。実際はちょっと立石流難しいんじゃないか、とも思える局面でだ。

とはいえ、あくまでもガイドの一冊。割り切って読むのであれば十分すぎる内容である。類書を紹介しているということは「あとはそっちを読んで詳しく勉強してね」ということであり、あとは知らんと突っぱねているわけではないのだし親切ではある。
また、違う戦法でも同じ形になっていくよ、というのが判りやすいのもいい点だと思った。結局片銀冠にして飛車を2筋に回りゃいいんだろみたいな(笑)。

3~4段以上であれば、本書の内容は知っていなければならないことなので、読む価値はない。
逆に、これから角交換振り飛車を指してみよう、と思っている初段前後の人であれば、まずは何をおいても本書から読むべき。それくらいガイドとしては優れている本だと思う。

作成日:2011.08.29 
振り飛車全般

棒銀と中飛車で駒落ちを勝て!

棒銀と中飛車で駒落ちを勝て! (NHK将棋シリーズ)
著者 :高橋 道雄
出版社:NHK出版
出版日:2011-08-11
価格 :¥1,166(2024/08/31 17:15時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

高橋は以前にも同じようなコンセプトで『駒落ち新定跡』という本を書いている。そのときは矢倉・三間飛車穴熊・四間飛車だったが、今度は棒銀と中飛車である。

棒銀、という言葉を目にしたとき、反射的に「そりゃまずいだろう」と思った。玉を囲わず突進する定跡を解説していると思ったからだ。しかしそんなことはなく、4枚落ちより上ではしっかりと矢倉などに囲っていた。矢倉囲いを手順通りに組む、というのは初心者には実は結構ハードルが高いので、駒落ちのうちからやっておくというのはそれはそれでいいのかもしれない。
中飛車のほうも、基本的にはちゃんと美濃囲いに組んでから攻める。飛車落ちの穴熊はちょっとやりすぎだろうという気もしたが、まぁ上手の形に呼応して、ということでもあるので、現代将棋の「余裕があったら穴熊」に通じるものがあるしこれはこれでいいのかもしれない。

と、なんとも歯切れの悪い解説で申し訳ないが、批判的なことを書くなら『駒落ち新定跡』のときに書いたものがそっくりそのまま今回にも当てはまる。駒落ちはある意味「負けて覚える」ためのシステムなので、それを楽勝してしまう定跡では意味がない。もちろん、既存の駒落ち定跡の作り物感というか胡散臭さはよーくわかった上で、それでもさすがにここまでやるのは「やりすぎ」なんじゃないかと。で、実はこの考え自体は変わっていないので、それが評価にブレーキをかけているところはある。

ただ、改めて考えてみるに、これから将棋を始めよう、これから強くなっていこうという人に、「負けて覚えろ」と言うのは、「茨の道を歩け」と言っているのと一緒で、そんな大変なんだったらやーめたっ! ということにもなりかねない。そうでなくても、「負けて覚える」よりも「勝って覚える」ことができるんであれば、それはそれで楽しいに違いない。

というわけなので、褒めて伸びる子もいるわけだし、本書のような駒落ちを指すというのも十分にアリだとは思う。

作成日:2011.08.25 
駒落ち

よくわかる角換わり

マイコミ将棋BOOKS よくわかる角換わり
著者 :西尾 明
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2011-08-19
価格 :¥98(2024/09/01 09:51時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

角換わり、となってはいるが、基本的には現代の花形戦法である角換わり腰掛け銀を中心に解説した本。
めずらしく「木村定跡」から解説をしていて、▲8八玉△2二玉型では先手有利。じゃあ後手が一手早く仕掛けよう、ということで△2二玉の一手を省いて▲8八玉△3一玉型で仕掛けると後手有利。じゃあ▲8八玉もやめよう、ということで▲7九玉△3一玉型、という一連の流れが解説されていたのは驚いた。
その後、現代の角換わりということで一手損角換わりの話になり、相腰掛け銀、早繰り銀、棒銀、右玉といった対策の解説へと進んでいく。

その昔、『消えた戦法の謎』という本で「角換わりは三すくみの関係だったが腰掛け銀だけになった」みたいなことが書いてあったが、一手損角換わりが登場したことによってまたその「いろいろ入り混じったとっ散らかった状態」に戻ったとも言える。本書は、そのいろいろカオスになった状態の角換わりを丁寧にほどいて解説した本、というわけではない。そうではなく、おいしいところ、基本の部分だけをうまいことすくい出して整理してくれた本である。
なので、高段者であれば改めて読むまでもない(とまで言うと大げさだが)が、初段前後の人であれば役に立つだろう。

角換わりのはじめの一歩にはピッタリの本だと思う。

作成日:2011.08.25 
相掛かり・角換わり

最新の矢倉3七銀戦法

最新の矢倉3七銀戦法 (プロ最前線シリーズ)
著者 :屋敷 伸之
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2010-12-23
価格 :¥152(2024/08/31 21:08時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

タイトルの通り、矢倉3七銀戦法を解説した本。
加藤流と4六銀戦法△8五歩型、4六銀戦法△9五歩型を解説している。
△9五歩型は宮田定跡のその先を、△8五歩型は穴熊に組んでからの攻防が主流。

かなり詳しく、そしてしっかりと解説しているなと感じた。レイアウトなどが東大将棋シリーズに似ていたからかもしれない(笑)。解説部分に関してはよく書けていると思う。

ただ、少し気になったのが、変化が分岐したときの書き方。
例えば、▲2五歩に△3三銀と△1三銀という2つの手があったとする。そのとき、△1三銀は後述する、とする。これはいい。しかし、△3三銀の解説が一段落ついたところで、急に第○図というのが出てきて、それが△1三銀と指した局面なのだ。普通、「第○図は第○図の△3三銀で△1三銀と指した局面」とか書いておくよねぇ……。
これがあったので、ちょっと油断すると「あれ、今どこだっけ?」となってしまう。白砂は盤駒を出して棋書を読む人間ではないのでこういうことをやられるとより辛い。

内容がよかっただけに、この点はもうちょっと気を配ってくれてもよかったと思う。もちろん内容はいいので、評価は高いです。

作成日:2011.08.25 
矢倉

居飛車穴熊必勝ガイド

居飛車穴熊必勝ガイド (マイコミ将棋BOOKS)
著者 :佐藤 天彦
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2008-04-24
価格 :¥508(2024/09/01 14:20時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

題名の通り、居飛車穴熊vs四間飛車に絞って解説している本。ちなみに、居飛車穴熊が先手で解説してある。

内容は、

  • △3二飛型急戦……藤井システム対策に早めに▲3六歩と突いた手に対して△3二飛と回って△3五歩と突く手を狙ってくる展開。
  • △4五歩△3五歩急戦……△4五歩△3五歩としたあと、△4四飛△3四飛を狙ってくる展開。
  • △4四銀型……△4五歩△4四銀から△5五歩を狙ってくる展開。先手は松尾流を基点に考える。
  • △3二銀型……△3二銀の形から△4五歩と突く形。後に△4一銀△5二銀と固めたりもする。
  • △5四銀型……クラシカルな腰掛け銀。受けに重点を置いている。

となっている。

当然のことながら全て先手、つまり居飛車穴熊が指せる、という結論になるのだが、実は『四間飛車破り 居飛車穴熊編』からほとんど進化していない。渡辺本はかなり詳しく解説されているので、深い勉強をしたかったら、古い本ではあるが本書よりも渡辺本のほうがいいかもしれない。
逆に言うと、本書のよさはコンパクトにまとまっていること。主要な変化だけに抑えて枝葉をバッサリ削り、本筋を理解できるように考えられている。これはどちらがいいか悪いかということではなく、読み手がどちらを選ぶべきかという問題だろう。

という理由により評価は有段者はやや下げている。決して有段者が読む必要がないと言うわけではないので誤解のないように。

作成日:2011.08.22 
穴熊
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