定跡

東大将棋ブックス四間飛車道場 第13巻 藤井システム

四間飛車道場 第13巻 (東大将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2003-10-01
価格 :¥238(2024/09/01 02:46時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

おなじみの東大将棋シリーズ。ようやく、本当にようやく藤井システムvs穴熊の登場である。出版のタイミングが難しかったということだが、とりあえず出したってよかったのにねぇ……。

内容としては、▲7八金と締まってから熊る形や▲5五歩と位を取る手、▲8六角と牽制する手などが主だったところ。また、後手の藤井システム側は△6二飛と回る形がほとんどで、これは△5二金左を△4三銀に替える手が主流になったために発生した手である。
あんまり解説されていなかった形(前述の事情から、最近になって生じた手だから。似たような形での飛車回りについてはいくつか見た記憶がある)なので、システム党は読んでおいて損はないと思う。

編集の方も相変わらずだが、今回はかなり形を絞っているのでそんなに煩雑感はなかった。
……実は慣れてきただけだったりして(笑)。

作成日:2003.11.04 
四間飛車

最前線物語

最前線物語 (最強将棋21 # 1)
著者 :深浦 康市
出版社:浅川書房
出版日:2003-09-01
価格 :¥1,540(2024/08/31 21:31時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『これが最前線だ!』の続編と位置付けていいと思う。出版社は違うのだが、独立してどうたらという話を聞いたことがある。まぁ大人の事情ということで、細かい詮索は抜きにしよう(笑)。
現在プロで指されている最新形について、その形ごとにテーマ図を設けて解説している本。形が固定されてからの解説なので、どうやってこの形に組むんだいという人は対象にしていない。最新形・定跡形を追うという意味で本書を読むなら、対象棋力は道場4段から、と言っても過言ではない。それほど解説は難しい。

前著では、およそプロで指されている形は奇襲・変態戦法や一部の力戦形を除いて全て網羅されているというほど広範囲にわたってカバーされていたが、今回は藤井システムと横歩取り8五飛戦法が誇張ではなく8割以上を占める。それだけ両戦法については突っ込んで解説されているわけだ。
また、前著では固定されていたページ割りが、テーマごとにバラバラになった。詳しく書きたいテーマについては6ページくらい割いているし、3ページでさらっと流している(本筋の変化が少ないという意味で、決して簡単という意味ではない)テーマもある。そのため、とにかく知られている変化をぶちこんであるような感じを受ける。手の密度の濃さで言えば東大将棋シリーズ並だろう。
しかし、東大将棋と違って数ページ単位で話を進めてくれるので、読んでいて内容を理解しやすい。解説のはじめに、半ページを割いて「これはこういう経緯でこうなった」「この狙いがあるのでこの形に持ってきた」というフリがある(ページ上半分に大図面があり、下半分に解説がある)ので、その都度きちんと立ち止まって読み込むことができるのだ。

先に「最新形・定跡形を追うという意味で本書を読むなら」という表現を使った。
何故かというと、本書の一番面白いところは、そこにないと白砂は思うからだ。
本書では各テーマを提示し、それぞれについて実戦譜を元に詳しく研究していく。その過程を追うことによって、読者は単に最新形を理解するだけでなく、将棋を極めんとするプロの苦闘の跡を読み取ることができるのである。

本書は、そんなプロ達の「激闘の記録」でもあるのだ。

偉人の伝記を読むように、NHKの『プロジェクトX』を観るように(笑)、本書を読んでほしい。対象棋力は問わない。細かい手順など判らなくてもいい。読んでいけば、プロがいかに考え、悩み、試行錯誤したかが判るから。
定跡という言葉でさらりと語られる手順の裏にある先人の苦闘。本書ではその過程をあますところなく見せてくれる。
実は、本書をはじめて読んだのは9月の初めだったのだが、既に20回ほど読み返している。それだけ「よみもの」としての鑑賞に耐えうる本だということである。良書だと思う

作成日:2003.10.01 
全般

加藤流振り飛車撃破

加藤流振り飛車撃破 (プロの将棋シリーズ 6)
著者 :加藤 一二三
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2003-09-01
価格 :¥235(2024/08/31 15:51時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「棒銀の加藤」が何十年ぶりか(だと思う)に著した棒銀本。対振り飛車の棒銀について、詳細な解説が加えられている。
『加藤流振り飛車撃破』という題名がついていながら何故か対中飛車3八飛戦法が載っているのだが(笑)、これは加藤先生の誠実な人柄によるものだと考えてほしい。棒銀と3八飛戦法を覚えればどんな振り飛車が相手でも怖くないぞという著者のメッセージなのだ。

本書のなにが凄いって、間違いなく著者自身が書いているということだ。
なんでって、

読めば判る(笑)

 あれは加藤先生以外には書けません
その文体はもとより、随所に散りばめられている「加藤哲学」は、これはもう著者独特のものだろう。これがゴーストだったらそれはそれで尊敬する。

カトピンファンの方は、絶対に買うこと(笑)。
そうでない人は、とりあえず「まえがき」と「あとがき」だけでも読んでみてほしい。
そのブッ飛び感についていける人は、買っても損はないと断言する。

作成日:2003.10.01 
振り飛車全般

なんでも中飛車

なんでも中飛車 (将棋必勝シリーズ)
著者 :森下 卓
出版社:創元社
出版日:2003-09-01
価格 :¥1,430(2024/08/31 22:31時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

創元社の入門編(白砂命名)シリーズである。
初手▲5六歩という原始中飛車(聞かなくなったなーこの言葉)から、ツノ銀、相振り、矢倉、カニカニ銀といろんな戦形での中飛車を取り扱っている。まさにタイトル通り、なんでも中飛車を指していけば勝てんだよ! という感じの一冊だ。

帯に「有段者は読まないで下さい」とあるように、読んでみると都合のいい手順が多いことは多い。それは否定しない。しかしまぁ本の方向性が「狙いを判りやすく示そう」ということなのだから、それを言ってはヤボというものである。
級位者相手に、難解な手順を経て形勢不明、なんていう手順を見せたって面白くもなんともない(笑)。やはりここは、バッサバッサと斬って落として「ほらすごいだろお!」とみせる本書のやり方が正しいと思う。

初段を少し過ぎた人には、ツノ銀中飛車の項がお勧めだ。駒組みで優位に立ち、そこから終盤へ向けて優位を広げていくための指し方、手筋が解説されている。どこかで読んだような手順ではあると思うのだが(笑)、最近ここまで丁寧に解説している本はなかったと思う。
有段者は、本書を「人に教えるための本」と思って読んでみてほしい。学生将棋や社団戦などでチームを組んで「教える立場」にいる人は必読。『ホントに勝てる』シリーズもそうだったが、人にモノを教えるというのがどれだけ大変なことか。本書を読むとそれがよく判る。
定跡書としての価値は決して高くはないが、教材としての価値は非常に高いと思う。丁寧に作りこまれた良書だろう。

作成日:2003.10.01 
中飛車

小倉流向かい飛車の極意

小倉流向かい飛車の極意 (プロの将棋シリーズ 5)
著者 :小倉 久史
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2003-09-01
価格 :¥850(2024/08/31 22:31時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

向かい飛車党だと語る著者が、向かい飛車について解説した本。

そもそも向かい飛車の本などというものがほとんどないので、それだけでも貴重だろう。手順のいくつか、特に最初の方の手順は『島ノート』丸かぶりだが、変化が変化なので仕方ない。
また、向かい飛車はその性質上必ず指せるというわけではない(相手が△8五歩としてこないと向かい飛車にする意味がない)ので、その点でややインパクトが薄い。
例えばゴキゲン中飛車や藤井システムは「とにかくこちらがその形に組め、しかも相手がどう来ても対応できる」という戦法である。それに慣れていると「なんだよ、書いてある形に全然なんないぢゃん」ということにもなりがちだ。これはもう戦法の持つ宿命ということで諦めるしかない。

惜しむらくは解説部分が少ない。
もう少し詳しく解説をするか、中盤での手筋などについていくつか指針を出してほしかったと思う。
向かい飛車について解説すると言いながら半分以上が実戦譜というのは、少しサギっぽいと思うぞー(笑)。

作成日:2003.10.01 
向かい飛車
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