定跡

東大将棋ブックス横歩取り道場 第6巻 3三桂戦法

横歩取り道場 第6巻 (東大将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2003-05-01
価格 :¥948(2024/09/01 05:09時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

すっかりお馴染みの東大将棋シリーズ。相横歩、8五飛、4五角ときて今度は3三桂戦法である。
屋敷あたりが随分勝ち星を稼いで話題になった時期もあった。最近では脇-深浦戦やそれを踏まえた谷川戦などが話題に上ったようだ。最近は8五飛戦法の影響で少なくなったが、一発の入りやすいこういう戦形は特に持ち時間の少ない将棋などでは威力を発揮する。完全に潰される定跡が確立されない限り、今後とも長く指されていくのだろう。

3三桂戦法の定跡書自体があまりなかったせいもあるのだろうが、かなり基本的な形から解説している。個人的には▲2七歩、なんていうのを久しぶりに見た(笑)。系統立てて、と言えるほど親切な作りにはなっていないが、狙い筋が単純なので体系化しやすく、作りやすかったのだろう。今までのシリーズよりは読んでいて雑多感は少なかった。
ひととおり読めば、3三桂戦法の狙いや攻め筋が判ると思う。

定跡書自体がないのだから、それだけで貴重な本と言えるだろう。アマチュアでは(もちろんプロでも)この戦法を得意にしている人も多いので、大会などで一発喰らってしまう、なんてことも十分にありうる。居飛車等は目を通しておいて損はない。

作成日:2003.05.21 
横歩取り

コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編

コーヤン流三間飛車の極意 急戦編・持久戦編 (プレミアムブックス版)
著者 :中田 功
出版社:マイナビ出版
出版日:2017-02-28
価格 :¥3,520(2024/09/01 06:24時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

前回、急戦編で三間飛車党の心をぐっと掴んだ(<そぉかぁ?)コーヤンの持久戦バージョン。元々、『島ノート』に書かれていた「中田功XP」は対居飛車穴熊だった。今回、そのXPの詳細な解説がついに読める! そう思った読者も多いはずだ。白砂もそうだった。

ふざけんな! 騙しやがったな!
これじゃただの真部流ぢゃねーかよぉっ!!

いやマジで。
期待はずれ。

少し真面目に解説すると、対左美濃と対居飛車穴熊が載っている。穴熊は3枚穴熊と4枚穴熊とに分けて解説しているが、とにかく全ての考え方は「▲4五歩から▲4六銀」というもの。これ、真部流だよねぇ……。
内容について言えば、▲4六銀型に左美濃に組むというのはそれだけで相当に味が悪い(▲4六銀と△2三玉の近さを考えてみれば判る)ので、三間飛車が有利になりやすいというのは判る。かなり作った手順もないではないが、▲3五銀や▲2三角といった捨て駒は作ってるっぽいけど既に手筋になりつつあるので、初段前後の人には参考になると思う。
穴熊の方は、もう少し詳しく解説して欲しかった。3枚穴熊と4枚穴熊とに分けて解説するという発想は評価できるが、それにしても解説が薄い。突っ込んだ解説を本書に求めている人は多いはずだ。
また、後ろの方に、穴熊の攻略方法について解説しているページがある。
囲いの崩し方、みたいな本を見ればだいたい書いてあることではあるが、定跡解説とプラスされているのでお得感はある。級位者は参考になるのではないだろうか。

三間飛車の解説書は少ない。それゆえに、ディープな解説を求めている人は多いと思う。もう少し、それらの声に答えて欲しかったと思う。

『コーヤン流三間飛車の極意 XP編』を出してくれたら、上の批判は即刻撤回するけど(笑)

P.S.ご指摘がありましたが、これXPだそうです。失礼いたしました。

作成日:2003.05.21 
三間飛車

振り飛車ワールド 第2巻

振り飛車ワールド 第2巻
著者 :毎日コミュニケーションズ
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2003-03-01
価格 :¥75(2024/09/02 10:09時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

いかにもごった煮感の強い装丁だが、どうやら直す気はないらしい(笑)。しかし、あとがきで明言するとは強気な……。

構成は前著と同じような感じで、インタビュー、指定局面対局、コラム的講座などがわらわら入っている。
今回の目玉はバンカナたんのコラム指定局面対局で、4六銀戦法に対して振り飛車の新手が紹介されている。4六銀戦法は『世紀末四間飛車』『スーパー四間飛車』など昔の棋書でも取り上げられ「詰みまで研究されている」とまで言われていたものだが、ここへきて新たな展開を見せている。
さわりだけ紹介すると、従来の定跡では△4六歩と叩いて▲同銀△4九飛となっていたが、ここで4九ではなく3九に打つのが研究の一手。以下いろいろ変化はあるのだが、どうも振り飛車がかなり有力らしい。
この変化は、それこそ森安ダルマ流の頃からの形で、どうして今まで気づかなかったんだ! というくらい単純な筋である。もちろん、実際は奥底にある変化の中で「やれる」筋が見つかって復活したのだと思うが、それにしても将棋の奥深さを感じる。

講座の方も相変わらずで、役に立つんだか立たないんだか白砂にはよくわからない(笑)。ただ、流してささっと読めるので、お得な感じはする。インタビューもなかなか味があったが、今度はバンカナたんにインタビューをして、ついでに写真をたくさん載っけてくれると嬉しい(爆)

作成日:2003.05.21 
振り飛車全般

四間飛車道場 第10巻 急戦vs穴熊

四間飛車道場 第10巻 (東大将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2003-04-01
価格 :¥1,320(2024/09/01 14:20時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

穴熊シリーズも佳境に入り、今度は対急戦。5七銀左、5七銀右、棒銀と、てんこもりのお得な一冊である。
どちらかというと居飛車有利の変化が多い解説になっているが、これは仕方がないことかもしれない。なんとなく少し不利なまま終盤を迎えて逆転、というのが穴熊のパターンだし。ただ、場合によっては寄せまで変化を掘り下げているので、穴熊の寝技が威力を発揮する場面は限られてきそうだ。

変化の流れとしては、通常の四間飛車vs急戦と比べてどーよ? という感じになりがちなので、目新しさは感じられない。一応、今までにない形や新手も紹介しているのかもしれないが、そういうわけであるのかどうかよくわからない。もっとも、まえがきで「あまり進歩していない云々」と書かれていた(と思う)ので、実際に目新しくはないのだろう。

有段者は常識の変化が多いと思うが、まぁ持っていて損はない一冊だと思う。級位者は『史上最強の穴熊 1.急戦編』とか『秘伝 穴熊王』でも読んでいた方がよっぽど役に立つ。

作成日:2003.05.21 
穴熊

消えた戦法の謎 あの流行形はどこに!?

消えた戦法の謎: あの流行形はどこに!? (MYCOM将棋文庫 10)
著者 :勝又 清和
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2003-05-01
価格 :¥916(2024/08/31 16:51時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

流行の戦形は常に移り変わる。今は中座飛車と藤井システムが将棋界を席巻しているが、かつては森下システムや塚田スペシャルが棋界の中心だった。
しかし、現在では誰も指していない。
あの戦形はどこに行った?

……というコンセプトで生まれた本書。はっきり言って「買い」である。
例えば、塚田スペシャルが消えた理由。詳しくは本書を読んでほしいが、谷川の△8二飛の自陣飛車の変化まで知っている人は少ないだろう。知らなければ、指されたときに負けてしまうのに、である。
消えた戦法は、やっぱりどこか欠陥があったのである。極端に言えば、プロの世界でつぶされた瞬間、その戦法は奇襲扱いになってしまうのだ。
奇襲戦法につぶされるのはバカらしい。ぜひとも本書を読み、戦法の移り変わりを知ってほしい。

どうでもいいことかもしれないが、本書に「風車」が登場する。その消えた理由は「新風車に移行したから(正確には「千日手がイヤになったから」なのだが(<おいおい……))、この部分、賭けてもいいが著者の勝又4段は伊藤7段に取材していない。また、別に最初から事情を知っていたわけでもない。
『風車の美学』を抜き書きしたのである。
読んでみると、なんの工夫もないさまがかえって笑える。確認してみてほしい。

作成日:2003.05.14 
全般
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