定跡

最新戦法 マル秘定跡ファイル

マイナビ将棋BOOKS 最新戦法 マル秘定跡ファイル
著者 :村田 顕弘
出版社:マイナビ
出版日:2012-02-23
価格 :¥856(2024/08/31 16:52時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

なんというか、普通の(?)定跡解説書とも違うし、かといって変態戦法紹介とも違う、ちょっと珍しい本。

内容は

  • 丸山ワクチン
  • 四間飛車穴熊vs銀冠
  • 石田流vs居飛車穴熊
  • 一手損角換わりvs早繰り銀
  • 横歩取り△5二玉型に対する先手の対策
  • ▲7六歩△3四歩▲6六歩の相振り
  • ▲7六歩△3二飛の相振り

基本的には居飛車党から見た本で、対抗系の場合には居飛車が勝ちになる。ただ、普通の定跡書と違うのは、どちらかというと、というか完全に「これ一本」の解説書なのである。
例えばよくある変態戦法本だと、例えば▲7六歩△3四歩に▲2二角成△同銀▲7七桂として後はどうやっても先手必勝とか(<をい)、そういう「どんな将棋でも自分の土俵に引きずり込んで勝つ」、という作りになる。本書はどちらかというと迎撃型の戦法なので、そこがちょっと違う。

それぞれの戦法は面白いし、自分のものにできれば不毛な(と敢えて言います。プロの方には頑張ってそれを極めてほしいですが)最新定跡の嵐から開放されるので、初段くらいの人は楽しんで将棋が指せるようになると思う。ただ、そうなるには実戦で鍛えに鍛える必要があるのかな、とも思う。
3段くらいまでの人は、一度読んでみるのはいいのではないだろうか。

作成日:2012.02.29 
全般

横歩取り必勝ガイド

マイナビ将棋BOOKS 横歩取り必勝ガイド
著者 :稲葉 陽
出版社:マイナビ
出版日:2012-02-22
価格 :¥1,049(2024/09/01 09:52時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「ガイド」と聞くと、もう中年オヤヂの白砂は「黄色本」を連想してしまうのだが(笑)、まさにそんな感じの横歩取り8五飛戦法の解説書。
内容は

先手中住まい
8五飛戦法に対して▲5八玉とする、かなりクラシックな形。それこそ8五飛戦法の黎明期からある形である。ただし、古き皮にもいろいろな新酒が注がれているので、古くて新しい形が楽しめる。
新山崎流
居玉のまま▲4八銀▲3七桂とする新山崎流。大げさではなく8五飛戦法が絶滅の危機に瀕するほどの実に論理的に構築された形なのだが、今では8五飛側が様々な対策を打ち出している。そのあたりを中心に。
△5二玉型
2012.2現在で最もホットな8五飛戦法の形。まぁ言ってしまえば「目先を変えた手」ではあるのだが、それゆえに微妙な形で△4一玉型では成立しない指し手が成立したりと、おそらくプロ棋士自身が楽しんで鉱脈を探している形である。そういう最新系なので、書き換わる可能性は十二分にある。
△8四飛型
8五飛戦法が指されたことで、旧式(?)の8四飛空中戦(内藤棋聖の十八番であった。ああ懐かしい。というか白砂もさすがにリアルタイムでは知らない(笑))がもう一度クローズアップされた。「8五飛戦法で培った手筋がこっちにも使えんじゃね?」というわけである。なので、それはそれでそこそこ指されている形である。

といったところ。

また、最後に「横歩取り詰将棋」として、8五飛戦法の囲いである中原囲いを詰ます実戦詰将棋が8題載っている。
この戦形を指しているんであれば、詰将棋アレルギーの人もぜひ「見て」ほしい。解答を見てしまっても構わない。知っているのと知らないのでは大違いである。
広い層に薦められる、とても「カタく」まとまっている良書だと思う。

作成日:2012.02.29 
横歩取り

ゴキゲン中飛車の急所

ゴキゲン中飛車の急所 (最強将棋21 #)
著者 :村山 慈明
出版社:浅川書房
出版日:2011-12-01
価格 :¥1(2024/08/31 22:33時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「序盤は村山に聞け」の村山が書いたゴキゲン中飛車本。全体的に居飛車目線な気がするが、内容そのものは非常に客観的に書かれている。

扱っているのは

  • ▲5八金右型
  • 超速▲3七銀
  • ▲7八金型
  • 居飛車穴熊
  • 丸山ワクチン

の5つ。とはいえ、実質的には▲5八金右急戦と超速の解説書と言っていいだろう。
特に▲5八金右型については、「▲1一龍から▲6六香(そのあと▲6五香打と重ね打つ)」「▲1一龍から▲3三角」「▲7五角」の3つの手について、実戦に現れることなく消えていった研究手なども合わせて書かれておりかなりディープな内容になっている。最後に「ゴキゲン中飛車指せる」の定跡がボナンザによって発見された、というのもなかなか面白い。
また、超速については、△3二金とする形と△3二銀とする形の両方を解説している。ただし、▲3七銀に△4四歩とする「菅井新手」については解説されていない(ちなみに、別の「菅井新手」が紹介されていて、これがまたちょっと笑える新手である)。2012.2現在、菅井新手はvs超速の最後の砦のような感じになっているので、もう少し刊行が遅ければ本書にも解説されていたかもしれず、そうすればもっと「役に立つ」本になっていた気がする。本当にもったいない。まぁ、もし入ったとしたら、第3章はカットになるんだろうな(笑)。
その第3章は「その他の対策」ということで、▲7八金型と居飛車穴熊と丸山ワクチンを軽く解説。いずれも、ゴキゲン中飛車に完膚なきまでに叩き伏せられて衰退した、というより興味が超速に移ったために指されなくなっている感もあり、押さえておいていい変化であることは間違いない。

とても力の入った本であることは読んでいけばすぐにわかると思う。ただ、だからこそちょっと編集に難を感じた。時系列に沿って新手を追いかけていく感じは嫌いではないのだが、せっかく「10年先まで使える本当の基本」と銘打っているのだから、むしろ変化を体系的にきちんとまとめた方がいいのではないかと思った。ちょうど、藤井の『四間飛車の急所』みたいな感じである。せめて『最前線物語2』くらい、各項の最初に取りまとめた説明が入るとか、そういう風になっていれば印象も違ったと思うのだが。
盤駒抜きで読むのは大変だと思うので(まぁ白砂はなしで読んだんだけど(笑))、また、級位者はそもそもゴキゲン中飛車をやるべきではないという古臭い感覚の持ち主なので(笑)、級位者の★は3となっているが、力作であることは間違いない。いつか読むために、また、タイトル戦のお供に手元に置いておくのも悪い手ではないと思う。逆に有段者は買いである。

作成日:2012.02.29 
中飛車

勝てる棒銀戦法

勝てる棒銀戦法 (将棋最強ブックス)
著者 :照市, 青野
出版社:創元社
出版日:2011-11-21
価格 :¥1,430(2024/08/31 22:07時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

以前、『最新 棒銀戦法』という本を書いていた著者がまたまた書いた棒銀本。「急戦の青野」と言うだけあって、なかなか面白く読めた。

内容は、すべて棒銀(当たり前か(笑))。

相掛かり棒銀
▲3六銀戦法、と言った方が通りがいいんだろうか。創元社の本らしく、相手が初級者の場合はこう攻める、というところから解説して、△8四飛~△3三角と正確に受けられた場合までを解説している。端桂を捌く筋というのはプロの実戦でもあったと思うのだが、そう言われてみれば解説した棋書はあまり見なかった気がする。
矢倉棒銀
早囲いにして、さらに▲3八銀▲2七銀から一直線に棒銀にしていく形。
後手であれば、『超過激!トラトラ新戦法』に出てたムリヤリ矢倉がそうなのかな。先手が早囲いにしているのにのんきに△4四歩△4三金右などと指して速攻をかけてこない「都合のいい変化」ではあるのだが、逆に今頃に早囲い、なんていうのはレトロとは言えなくもないので(まぁ藤井流があるか)解説書もそんなになく、中級者くらいまでであれば本書の通りにハマってくれるかもしれない。▲3六歩▲3七銀なんてしないで直球、というのは覚えやすくていいと思う。
vs四間飛車
角道を止めるクラシックな四間飛車に対しての棒銀。▲5七銀▲6八金直の2手を省略していきなり攻める形である。『四間飛車の急所 3 急戦大全 下』には載っている形ではあるのだが、▲4六歩まで省略して素早く攻めるというのが主張である。定跡外しとしては面白いと思うのだが、残念なことにその後の手順がかなり「創作的」でいただけない。藤井本に合流できる(結局棒銀側は▲4六歩と突くので、理屈的にはそのときに△1二香とすれば藤井本と同じ形になる)のにしなかったりとか、△6四角と出て▲5七銀と上がらせて△5三角と引くとか、ある程度対象棋力を下げるためには仕方がなかったのだと思うが、もう少しなんとかならなかったのだろうか。前述の『最新 棒銀戦法』は結構公平に書かれていたと思うのだが。
vs振り飛車穴熊
やはり▲6八銀型のまま攻める棒銀。最近の本には載っていないが、『定跡外伝』で同じ形が紹介されていた。あと、△3五銀の両取りの変化(といってどれくらいの人がわかるのか(笑))のとき、▲1六飛△4四銀▲1五飛に△3五銀という手があるのだが触れられていなかった。『定跡外伝』では▲4三角があるから無効、となっていたのだが、△3五銀▲4三角△7一金▲3二角成△同金と飛角交換しても、飛車の飛車がかなり不自由なので穴熊も指せる気がする。まぁこの変化を載せろとは言わないが、この変化に触れずに△1四歩▲1六飛△3五銀と「わざと手順前後をして」▲5五歩として逃げられるから棒銀良し、というのはちょっとウソくさい。

……と、随分と文句ばかり垂れたが、基本的に「本筋と少し違う指し方をして相手を惑わしハメる」という本なので、相手が惑わされた場合(=正解手ではない指し手を指した場合)の手順を載せるというのは全く問題がない。上記のツッコミは「ハメ手に対する受け方も書いといてくれると親切なのに……」というだけで、減点と言うほど酷いことだというわけではない。
むしろ、「本筋の有段者向け定跡書」が増えた中、まだこんなヒッカケ手順があったのか──いい意味でね──というのに驚いた。
まさに「勝てる」戦法で、なかなか面白く読めた。有段者でも一度読んでおくといいと思う。ヘンな話だが、定跡を微妙にずらすというのは将棋ソフトでも対応が難しい部分なので、24のソフト指し相手にも効くかもしれないね(笑)。

作成日:2012.02.19 
四間飛車 その他の居飛車

石田流の基本―本組みと7七角型

石田流の基本 (本組みと7七角型) (最強将棋21 #)
著者 :戸辺 誠
出版社:浅川書房
出版日:2012-02-01
価格 :¥1,540(2024/08/31 19:56時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

やっぱりホットな石田流の本ということで、石田流の使い手の一人である戸辺が出した本。タイトル通り、いわゆる石田流本組の形(▲7六飛▲7七桂▲9七角)と、▲9七角が▲7七角になった7七角型を解説している。

内容は、

vs棒金
△6三銀△8三金からいきなり△7四歩と突いていく形から、△5三銀を加えて攻めていく形まで。ただし、その辺まで行くと、石田流側が▲4五銀から反撃してそれを居飛車が受けるという展開となる。
vs左美濃・銀冠
本組から攻めていく形と、▲7七角から▲6五歩と捌いていく形の両方を解説。△9二飛からの千日手狙いや、△7二飛から攻めてくる形などについても言及している。
vs居飛車穴熊
石田流側から美濃囲いで攻める形と、相穴熊について解説。

当たり前の話だが振り飛車は捌いてナンボなので、その辺の攻めの形についてはくどいくらいに詳細に解説してくれている。初段前後くらいの石田流初心者にはありがたいと感じるだろう。本組の場合で▲7四歩を効果的に入れて▲9七角を捌いていく手法、▲7七角を▲5九角から大きく使っていく組み立てなどは参考になる。

一方、相穴熊の方は、△6三銀型のときはまぁいいとして、△5三銀型では「後手は△3三銀のビッグ4を目指します。しかし▲○○○とすることでそれが阻止できます(多分秘手だと思うので一応ヒミツ(笑)。詳しくは本書を手に取ってください)。よって先手よしです」で終わっている。まぁ大げさに言うとだけど。それはないんじゃないかさすがに(笑)。紹介している手法は面白かったのでいいんだけど、もう少し丁寧にいろんな形を見せてほしかった。特に棒金の解説が細かかっただけになおさらそう思ってしまう。
その棒金の解説だが、本当に詳しい。また、針の穴を通すような展開というよりは「豪快に捌こうよ。そうすれば美濃囲いだもん先手よしだよ」といった『振り飛車イズム』が出ていて好感が持てた。本書で紹介されている捌き方を会得すれば、他の振り飛車にも応用が利くと思う。

3段くらいまでだったら間違いなく買い。有段者でも一度は目を通しておくことをお勧めする。

作成日:2012.02.07 
三間飛車
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