振り飛車

四間飛車道場 15 藤井システム破り

四間飛車道場 第15巻 (東大将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2004-02-01
価格 :¥868(2024/09/01 09:45時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

東大将棋四間飛車道場シリーズ第15巻は藤井システムvs急戦。
▲5七銀と上がった居飛車側が、穴熊に囲いに行くのではなく、▲3五歩、あるいは▲4六銀~▲3五歩と仕掛ける形を解説している。竜王戦の羽生-森内戦で出てきた形、と言えば、判る人も多いのだろうか?

こういう急戦は当然考えられてもいいところで、記憶では十年位前の『将棋世界』に武者野(だったと思う)が書いていた記事を読んだ記憶がある。その当時はまだ藤井システムも今ほど市民権がなく、「山田道美だったらこうやって急戦で潰しただろう」みたいな文章があったように思う。まぁ、それは置いておくとしても、藤井システムの異様な陣形を見れば、一目仕掛けたくなるところだろう。
振り飛車側にもいろいろな「寝技」の選択肢はあり簡単ではないが、初段くらいのシステム党相手になら十分に通用する急戦策ではないだろうか。

類書があるかと思っていたが、意外と多くなかった。
『島ノート』には急戦は1つしか載っていないし、『四間飛車の急所』も△6二玉型の急戦は載っていない。調べたところ、『最前線物語』に1章数ページ分と、『振り飛車ワールド』の千葉講座にあっただけだった。
これを考えれば、システム党も手元に置いて損はない本だと思う。

それぞれの急戦策は関連しているようで独立している部分も多いので、要は1冊に3本の急戦策が載っている本と考えればいい。それぞれの変化は多くてもタカが知れているので、本シリーズの「クソ編集」でも十分読みこなせる。
シリーズには珍しく、初段くらいの読者にも薦められる本だ。

作成日:2004.02.23 
四間飛車

最強力戦振り飛車マニュアル

最強力戦振り飛車マニュアル
著者 :鈴木 大介
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2004-02-01
価格 :¥94(2024/08/31 15:51時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

アマチュア振り飛車党の「教祖」となった感がある鈴木大介の力戦振り飛車解説本。力戦、と銘打ってはいるが、例えば中飛車編は『新ゴキゲン中飛車戦法』だったり、向かい飛車は『島ノート』の鈴木大介新手だったりと、どこかで紹介している形も多い。

鈴木大介ということで、まぁいつもの調子だ。読んでいて気持ちがいいし、とにかく振り飛車勝ちの変化が多いので、級位者くらいの人が読むと必勝戦法のように見えるだろう(笑)。騙されてはいけない、と言うのは簡単だが、級位者同士の対戦では相手が最善手を指してくる保証がどこにもないので、それを咎める手がたくさん載っている本書の形式は親切だとも言える。

もう少し詳しく個々の戦法を解説すると、

  • 中飛車……新ゴキゲン中飛車。こちらから▲2二角成と交換しに行く形。
  • 四間飛車……筋違い角穴熊。▲6七角と引いて振り穴に囲いカウンターを狙う。
  • 三間飛車……居飛車穴熊崩し。『居飛穴なんかコワくない』の改良形
  • 向かい飛車……升田流向かい飛車

といったところ。 そこそこページ数も多く、読んでいて楽しめる。向かい飛車の項などは『島ノート』の形を更に掘り下げているので、有段者であっても目を通しておいて損はないだろう。立ち読みで十分読める内容だが、気に入ったらレジに持ってってあげて下さい(笑)。

作成日:2004.02.23 
振り飛車全般

’04 振り飛車ワールド 1

振り飛車ワールド ’04 第1巻
著者 :毎日コミュニケーションズ
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2004-01-01
価格 :¥551(2024/08/31 15:25時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

2004年版、ということで、表紙もサルに変えて一新したこのシリーズ。つーか、この表示は続ける気なのね……。

内容はほとんど変わっていなくて、インタビューとか講座とか、読み応えは相変わらずだ。
唯一変わったのは指定局面対局で、今までは3つの局面を2局ずつだったものを、2つの局面を2局ずつに変更した。その代わり、テーマとは別に、最近のタイトル戦などから興味深い局面をピックアップし、それを2局戦うことにした。要するにテーマ図が2つになったような形で、そのうち一つは流行を追うようにしよう、ということなのだろう。研究と流行の両方が味わえるので、この形式は「お得感」があっていいと思う。

他の部分をざあっと見ていくと、千葉の講座は相変わらずだし、インタビューも面白かった。鈴木大介の講座は石田流vs棒金で、『島ノート』とは若干違う切り口で解説されている。これは石田流党には必見だろう。最後の「定跡信ずべし、信ずべからず」は裏定跡集で、これは久々のヒットという感じ。こういうのをアマチュアは待ってんのよ(笑)。
あと、バンカナたんの文章は、いつもながら顔とマッチしなくて面白い。もう少しいろんな本を読んだりして語彙や表現力が増えたら、もっといろいろなものが書けると思う。あじあじと比べちゃうのは両方にとって失礼かもしんないけど、バンカナたんの方に将来性を感じた。

新シリーズ第1弾ということもあって、いつも以上に気合が入っている感じがする。
細く長くでいいから火を絶やさずにいて欲しいと思っているので、焦らずゆっくり頑張って欲しい。

作成日:2004.02.10 
振り飛車全般

中飛車道場 1 ゴキゲン中飛車超急戦

中飛車道場 第1巻 (東大将棋ブックス)
著者 :所司 和晴
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2004-01-01
価格 :¥1,430(2024/08/31 22:07時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

ついにというかやっとというか、とにかくとうとうでました中飛車編。とりあえずゴキゲン中飛車ということだが、風車なんかはやっちゃくんないだろうから、実質的にはゴキゲン中飛車がほとんど、あとは3八飛戦法編とか居飛車穴熊編といったラインナップになるんだろうね。
内容はゴキゲン中飛車の超急戦バージョン。▲5八金右と構える形である。詰みまで調べられている超急戦から、少しゆっくりした戦いになる形まで、とりあえずのことは解説されている。▲2四歩と垂らす手は新手だと思うのだが、どこかで紹介されていただろうか? なかなか面白い手だと思った。

相変わらず読みにくい内容で、特に詰みまで行ってしまうほど深く研究してあると、今なんの形について解説しているのかが非常に判りにくくなる。手としては確かに一つのカテゴリなのだが、その辺は柔軟に目次分けをすることも必要だったのではないだろうか。
それでも、一通り以上のことは解説されているので、ゴキゲン党もやられて困る人も、読んでおいて損はない。

あとがきを読むと、少なくともあと2冊分はゴキゲン中飛車の解説だそうだ。▲7八銀型とか相振り飛車型も紹介されることになるのだろうか。

作成日:2004.01.28 
中飛車

四間飛車の急所 1

四間飛車の急所 (1) (最強将棋21 # 2)
著者 :藤井 猛
出版社:浅川書房
出版日:2003-12-01
価格 :¥1,415(2024/09/01 09:45時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

もはや現代振り飛車の教祖となった(笑)著者が、過去の膨大な棋譜・経験を通して四間飛車の全てに迫る本。第1巻の本書は、いわばそのイントロダクションとも言える「歴史編」だ。

ほとんど全ての戦法について、どんな形が登場しどんな対抗策が出て現在の最新形は何か、といった変遷が書かれている。
いわゆる「定跡書」としての位置付けではないので、指し手一つ一つに解説が入ってるわけではない。局面によっては符号が十数手続いて「……という変化で先手が悪い。よって……」といったような書き方もされている。それでも読んでいて判りづらくないのは、図面が多いことと、冷たすぎるほどに客観的に○×で局面を判断しているからだろう。「この手順だと先手不利になる(図面)。そこで修正手順でこう指すと先手有利になる(図面)。この展開はまずいので後手は新手を出し……(図面)」といった具合で、きちんと学術書のように分類整理されている。
5筋位取りや右四間飛車といった(特にプロ間では)マイナーな戦法についても解説がある。特に右四間飛車の項はアマチュアには参考になるだろう。ページとしては少ないが、そこらの定跡書よりはよっぽと役に立つ。ミレニアムついては最後に少し載っているだけだったが、これで十分なのかもしれない。個人的には、新しい指し方だからまだ分析ができていない、というより、藤井個人としてはミレニアムを恐れていない、という風に感じた。居飛車穴熊の項に比べると、客観的で冷静というよりは淡白で冷めている文章、と思えたのだ(ホントに個人的な感想ね)。

『最前線物語』『島ノート』は、同じようにプロの棋譜を漁っていても、研究というよりは最新の動向を紹介する本という感じがする。たとえて言うなら社会学の世界だろうか(もっとも、社会学とはなんぞやという問いは非常に難しい話なのだが……)。『角換わり腰掛け銀研究』の全てを探求せんという姿勢は完全に数学者の世界である。
そして本書は、『消えた戦法の謎』のような歴史学的手法で書かれた本だ。
ただ、『消えた戦法の謎』が完全に歴史の話をしている(なにしろその戦法は「消えて」いるわけだから)のに対し、本書は歴史を探りつつ現代の最新形を紹介するという二重構造になっている。
その辺りが、非常に「お得感」が強く、また、名著だと感じさせる要因なのだろう。

こういった試みは、ある意味採算を度外視しないと成り立たないものでもある。手を抜くことが許されないからだ。
我々アマチュアができることは、こういった良書をしっかりと評価し、「購入」という賛成票で応援することくらいだろう。
しかしそれくらいしかできないからこそ、それくらいのことはしっかりとやっていきたい。

作成日:2004.01.09 
四間飛車
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