なんでも中飛車
創元社の入門編(白砂命名)シリーズである。
初手▲5六歩という原始中飛車(聞かなくなったなーこの言葉)から、ツノ銀、相振り、矢倉、カニカニ銀といろんな戦形での中飛車を取り扱っている。まさにタイトル通り、なんでも中飛車を指していけば勝てんだよ! という感じの一冊だ。
帯に「有段者は読まないで下さい」とあるように、読んでみると都合のいい手順が多いことは多い。それは否定しない。しかしまぁ本の方向性が「狙いを判りやすく示そう」ということなのだから、それを言ってはヤボというものである。
級位者相手に、難解な手順を経て形勢不明、なんていう手順を見せたって面白くもなんともない(笑)。やはりここは、バッサバッサと斬って落として「ほらすごいだろお!」とみせる本書のやり方が正しいと思う。
初段を少し過ぎた人には、ツノ銀中飛車の項がお勧めだ。駒組みで優位に立ち、そこから終盤へ向けて優位を広げていくための指し方、手筋が解説されている。どこかで読んだような手順ではあると思うのだが(笑)、最近ここまで丁寧に解説している本はなかったと思う。
有段者は、本書を「人に教えるための本」と思って読んでみてほしい。学生将棋や社団戦などでチームを組んで「教える立場」にいる人は必読。『ホントに勝てる』シリーズもそうだったが、人にモノを教えるというのがどれだけ大変なことか。本書を読むとそれがよく判る。
定跡書としての価値は決して高くはないが、教材としての価値は非常に高いと思う。丁寧に作りこまれた良書だろう。