振り飛車

振り飛車の真髄② 石田流の極意 先手番の最強戦法

石田流の極意―先手番の最強戦法 (振り飛車の真髄) (振り飛車の真髄 2)
著者 :鈴木 大介
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2006-10-01
価格 :¥92(2024/08/31 14:12時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

初心者の救世主・鈴木大介が送る石田流解説本。

内容は、

  • 7手目▲7四歩
  • vs棒金
  • vs左美濃
  • vs居飛車穴熊
  • 角交換型
  • 右四間
  • 銀冠

といった感じ。一通りの対策は出揃っているので、本書を読めばとりあえず相手の出方は判る。そして、鈴木大介なので、振り飛車の勝ち方がよく判る。

7手目▲7四歩のところで△6二金の変化がないとか、左美濃で「省けない」と解説した端歩を居飛車穴熊編では突いていないとか(一応、手数が足りないという理由付けはしているが……)、少し都合のいい変化がないわけではない。
それでも、これだけの戦形を網羅し、とりあえずでも対応策を載せているのはポイントが高い。このレビューを書いている2014年では、石田流の流行は角交換四間飛車に取って代わられた感があり、そのためかあまり本書が古く感じない。4段前後くらいまでなら、本書の対策だけで結構指しこなせるのではないかと思う。

本筋の変化だけしか書いていないということもあり、とても読みやすい。
石田流初心者にはぜひとも勧めたい本。

作成日:2014.08.04 
三間飛車

久保利明の振り飛車の手筋1 さばきの四間飛車・急戦編

久保利明の振り飛車の手筋 1 さばきの四間飛車・急戦編
著者 :久保 利明
出版社:山海堂
出版日:2007-10-01
価格 :¥999(2024/08/31 23:44時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

振り飛車党の代表選手である久保が書いた手筋本。今回は四間飛車vs急戦に絞って解説している。

四間飛車が先手の場合も後手の場合も解説されているが、▲6五歩急戦がなかったり、▲4六銀戦法で2筋を突き捨てなかったりと欠けている部分も多い。また、内容のほとんどは後手四間の解説ではあるのだが、定跡近辺の解説ではなく実戦譜の解説のようになっており(確認したわけではないのだが、問題を見ていただければそう感じた理由も判っていただけると思います)、いやそりゃあ手筋だけどさぁ……とちょっと残念な気分になった。

あと、難易度がバラバラすぎる。
△8五歩に▲7七角、という問題が2問もあった(3問だったかな?)かと思えば、とても難しい手筋がふんだんに出てきたりしている。
それと、次の一手本の宿命のようなもので仕方がないことなのかもしれないが、解説が少なすぎる。
例えば第30問で、△8八歩と桂取りに打った手に対して、▲7二歩という手筋が正解である、としている。それは正しいと思うのだが、その解説が「△7二同飛と取らせると利かしになる」だけではあまりに不親切すぎる。後手は桂取りに歩を打ったのだから、まず説明するのは△8九歩成とされたらどう切り返すか、だろう。しかしその解説は一切されていない。
実際のところ、△8九歩成は▲同飛と取っておけば、今度は△7二飛と取れない(8五に銀がいて、△8九歩成▲同飛△7二飛は▲8五飛とボロッと銀を取られる)から△6二銀と▲7一歩成を受けるくらいしかなくて、そこで▲7六銀とすれば△同銀と取れない(8五の銀が動くと▲8二飛成と飛車が素抜かれる)から後手が困っている、ということだと思われるので、問題に間違いがあるわけではない。しかし、この説明を一切省いて「利かしが一発入った」で終わらすのは不親切に過ぎる。

攻められた手に対して▲6五歩や▲7八飛という振り飛車の手筋を再三登場させることで印象を強めたりとか、大駒をぶった切って攻めたりとか、面白い問題も数多く入っており、それなりに勉強になるとは思う。実際、白砂は第53問から第54問の手筋が見えなくて解答を見て感心したし。

題材や方向性、やりたいことは間違っていないと思うのだが、料理の仕方が間違っていたのではないか、と思ってしまう。ちょっと残念だった。

作成日:2014.08.04 
四間飛車

佐藤康光の居飛車の手筋1 四間飛車粉砕編

佐藤康光の居飛車の手筋 1 四間飛車粉砕編
著者 :佐藤 康光
出版社:山海堂
出版日:2007-05-01
価格 :¥3,749(2024/08/31 21:16時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

次の一手形式で解説する四間飛車破りの本。
急戦からは▲4六歩急戦とナナメ棒銀、持久戦は居飛車穴熊。あと、四間飛車穴熊に対する銀冠と、立石流対策、飯島流引き角戦法が掲載されている。基本的な四間飛車対策は網羅されている感じだ。

次の一手形式なので、通常の定跡書を読むように体系的に学ぶということはしづらい。その代わり、戦法を指す上での大体の雰囲気はつかみやすくなっていると思う。
ただ、その分内容は薄くなっており、立石流▲7七角対策などは、本当に狙いを示すだけに留まっている。まぁ、個人的な思い入れも強いので「こんな手は指さないだろー」と評価が厳しくなっている部分はあるのだが(笑)。

細かいことを言うと、本書の場合、珍しく「失敗例」がほとんど入っていない。よく「▲○○と指すと失敗する。振り飛車の立場に立って考えていただきたい」みたいな感じの問題があるが、そこはバッサリ切って、各問題の中で失敗例を解説するにとどめている。居飛車党にしてみれば「そんな立場なんて知らねーよ」と(笑)、まぁそこまで極端ではないにしろ、本書のように「どうやったら成功するか」を考えるだけでいいのになぁ……と思うことはよくある。なので、ホントにこういうことするんだ……と少し驚いた。

できれば体系だった棋書を読んでもらうことを前提として、こういう本をサブテキストとして活用すれば、棋力向上も早いのではないかと思う。棋書の性格上、買って手元に置いておくとよい、とまでは勧められないが、読んでみる価値は十分にある。

作成日:2014.06.29 
次の一手 四間飛車

相振り飛車基本のキ

相振り飛車 基本のキ (マイコミ将棋BOOKS)
著者 :藤倉 勇樹
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2007-09-28
価格 :¥459(2024/09/01 09:43時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『新・振り飛車党宣言!』などでも知られる振り飛車党の書いた相振り本。

内容は、

  • 第1章 金無双・美濃囲い編
  • 第2章 矢倉・穴熊囲い編
  • 第3章 その他の戦型
  • 第4章 ポイントチェック

となっている。基本的な相振りの形はほぼ網羅されているといっていいだろう。

ガイドに徹し、ポイントを絞って解説していることから、とても判りやすく感じた。少し「矢倉原理主義」的なところがあるかなぁという気がするが、これは逆に白砂が振り飛車における矢倉をそんなに信用していないからかもしれない(笑)。
相四間飛車や原始中飛車対策など、ちょっとレアだけどアマチュアではありそうな形についてもきちんと触れられており、基本だけではあるが本当にこれ一冊で相振りの基本は押さえられると思う。

あえて文句をつけるなら、だが、原始中飛車(同じマイコミから本が出ていることもあってか『ワンパク中飛車』と言われている)で角道はそんなにすぐに突かないだろう。△3四歩(実際は先手で▲7六歩)と突いているため、△5六歩▲同歩△同飛には▲2二角成△同銀▲6五角と反撃されてしまっている。本当の原始中飛車は△5四歩△5二飛△5五歩△5六歩といきなり攻めてくるものだろう(笑)。
あと、各章のことを「ステップ○○」と呼んでいるのも少し気になった。続きになっているものもあるが基本的に各章は独立しているので、ステップとは言い難い。もう少し違う名前の方がいいと思う。細かすぎで申し訳ないが、気になると気になるもんなのよ(←日本語がヘン)。

そんな重箱の隅を突く話はさておき、本当によくまとめてあるので、せっかく5段にもなっていることだし(執筆当時は4段)、最新の変化も加えて2かなんかを出してくれるととても嬉しい。
絶版なので手に入れられないのがもったいない良書だと思う。相振り飛車を指したいのであれば、初段くらいまでは特にお勧めである。

作成日:2014.06.27 
相振り飛車

杉本昌隆の振り飛車破り

杉本昌隆の振り飛車破り (MYCOM将棋ブックス)
著者 :杉本 昌隆
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2007-02-01
価格 :¥190(2024/08/31 22:23時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

振り飛車党(現在は居飛車党に鞍替えしているが)の杉本が書いた振り飛車破り本。振り飛車党であれば振り飛車がやられてイヤなこともよく知っているだろう、という考えで依頼があったらしい。

内容は以下の通り。

▲3五歩急戦vs後手藤井システム
室岡新手で有名な形。かなり詳しく解説している。初段くらいまでの人は、むしろ室岡新手以前の指し方(△3五同歩・△3二金)の際の速攻手順を読んでほしい。
先手藤井システムvs居飛車穴熊
居飛車側から△4五歩と仕掛ける形や、△5五角急戦など。これも詳細に解説されている。ここまでで本の半分くらい。発刊当時(2007年)はまだ藤井システムが指されていた時代なんだなぁと思わされる。
5筋位取り急戦
もはやB級戦法に近い作戦だが、5筋位取りでなおかつ急戦というのが面白い(もちろん昔から指されていた戦法ではある)。最終的には振り飛車有利という結論になっているような気もするが(笑)、一発狙いには知っておいてもいいかもしれない。
ポンポン桂
従来からある「富沢キック」の話も出てくるが、どちらかというと藤井システム対策という感じ。これもあまり類書がないので、とりあえずは押さえておきたい変化だ。
三間飛車vs居飛車穴熊
居飛車穴熊側が△8四飛をギリギリまで受けない(その手を囲いに回す)というちょっと贅沢な指し方。先手が何もしなければしれっと1手得できるわけで当然先手は▲7四歩から動いてくるが、むしろそれを誘ってカウンターで切り返す、というのが基本的な骨格。実戦的な考え方で言えば、▲7四歩から歩を交換されるデメリットよりとにかく居飛車穴熊に囲えるメリットを追求した、とも言える。
石田流vs銀冠
最近はあまり見ない気がする(そもそも石田流を目指さない)が、▲7四歩急戦がらみで石田流がバンバン指されていた頃、居飛車側が急戦を避けて銀冠に囲うという将棋がよくあった。その形のこと。△9二飛と千日手を目指す形、と言えば判りやすいか。
山本流石田封じ
昔からの石田流対策に、▲7六歩△3四歩▲7五歩△4二玉という指し方がある。▲7八飛なら△8八角成▲同銀△4五角で、定跡の▲7六角を防いでいる(△4二玉としたため▲4三角成が先手にならない)から後手有利、という仕組みだ。そのため、△4二玉には▲6六歩と穏やかに指すのが無難、とされている。それをもっと突き詰めて、▲6六歩と穏やかに指してきたらその▲6六歩を目標に△6四歩~△6二飛と右四間にしたらどうだろう、というのがこの山本流の骨子である。なかなか面白い発想で、特に石田流という「形」を指したいという石田党にはイヤな対策だろう。

藤井システム破りに大半を割いているが、むしろ読んでほしいのはそれ以外のB級戦法の部分だ。なかなか類書がないので、こういうまとまった解説は貴重である。

本のツクリで少し言わせていただくなら、ちょっと密度の違いがありすぎてとまどってしまう。ポンポン桂などはかなり散文的に書かれているので、大体の狙いは判るのだが、じゃあ本書を読めばバッチリ指しこなせるかというと難しいと思う。
もっと言ってしまうと、密度の濃い内容とガイド的な内容を同じレイアウトで見せようというのがそもそも無理だと思うので、いっそのことどちらかに絞ってしまった方が(贅沢を言えば2冊出してしまえば)よかったんじゃないか、とさえ思う。

内容は悪くない、というかとてもいいので、初段くらいまでの人は、藤井システム関連は飛ばして(笑)、その他のページを、少し面倒でも盤駒を用意して読み込めばいいと思う。有段者は本書の内容くらいは知っていないといけないことなので、サラっと読むくらいでいいだろう。

あと、いおたんヲタの人は、わすが2ページだけどチラっと登場しているので、そうだよなぁあの連載のときはかわいかったなぁ……と思いつつ、囲碁界に呪いをかけておいてください(笑)。

作成日:2014.06.22 
四間飛車 奇襲・変態戦法
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