振り飛車

勝てる棒銀戦法

勝てる棒銀戦法 (将棋最強ブックス)
著者 :照市, 青野
出版社:創元社
出版日:2011-11-21
価格 :¥1,430(2024/08/31 22:07時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

以前、『最新 棒銀戦法』という本を書いていた著者がまたまた書いた棒銀本。「急戦の青野」と言うだけあって、なかなか面白く読めた。

内容は、すべて棒銀(当たり前か(笑))。

相掛かり棒銀
▲3六銀戦法、と言った方が通りがいいんだろうか。創元社の本らしく、相手が初級者の場合はこう攻める、というところから解説して、△8四飛~△3三角と正確に受けられた場合までを解説している。端桂を捌く筋というのはプロの実戦でもあったと思うのだが、そう言われてみれば解説した棋書はあまり見なかった気がする。
矢倉棒銀
早囲いにして、さらに▲3八銀▲2七銀から一直線に棒銀にしていく形。
後手であれば、『超過激!トラトラ新戦法』に出てたムリヤリ矢倉がそうなのかな。先手が早囲いにしているのにのんきに△4四歩△4三金右などと指して速攻をかけてこない「都合のいい変化」ではあるのだが、逆に今頃に早囲い、なんていうのはレトロとは言えなくもないので(まぁ藤井流があるか)解説書もそんなになく、中級者くらいまでであれば本書の通りにハマってくれるかもしれない。▲3六歩▲3七銀なんてしないで直球、というのは覚えやすくていいと思う。
vs四間飛車
角道を止めるクラシックな四間飛車に対しての棒銀。▲5七銀▲6八金直の2手を省略していきなり攻める形である。『四間飛車の急所 3 急戦大全 下』には載っている形ではあるのだが、▲4六歩まで省略して素早く攻めるというのが主張である。定跡外しとしては面白いと思うのだが、残念なことにその後の手順がかなり「創作的」でいただけない。藤井本に合流できる(結局棒銀側は▲4六歩と突くので、理屈的にはそのときに△1二香とすれば藤井本と同じ形になる)のにしなかったりとか、△6四角と出て▲5七銀と上がらせて△5三角と引くとか、ある程度対象棋力を下げるためには仕方がなかったのだと思うが、もう少しなんとかならなかったのだろうか。前述の『最新 棒銀戦法』は結構公平に書かれていたと思うのだが。
vs振り飛車穴熊
やはり▲6八銀型のまま攻める棒銀。最近の本には載っていないが、『定跡外伝』で同じ形が紹介されていた。あと、△3五銀の両取りの変化(といってどれくらいの人がわかるのか(笑))のとき、▲1六飛△4四銀▲1五飛に△3五銀という手があるのだが触れられていなかった。『定跡外伝』では▲4三角があるから無効、となっていたのだが、△3五銀▲4三角△7一金▲3二角成△同金と飛角交換しても、飛車の飛車がかなり不自由なので穴熊も指せる気がする。まぁこの変化を載せろとは言わないが、この変化に触れずに△1四歩▲1六飛△3五銀と「わざと手順前後をして」▲5五歩として逃げられるから棒銀良し、というのはちょっとウソくさい。

……と、随分と文句ばかり垂れたが、基本的に「本筋と少し違う指し方をして相手を惑わしハメる」という本なので、相手が惑わされた場合(=正解手ではない指し手を指した場合)の手順を載せるというのは全く問題がない。上記のツッコミは「ハメ手に対する受け方も書いといてくれると親切なのに……」というだけで、減点と言うほど酷いことだというわけではない。
むしろ、「本筋の有段者向け定跡書」が増えた中、まだこんなヒッカケ手順があったのか──いい意味でね──というのに驚いた。
まさに「勝てる」戦法で、なかなか面白く読めた。有段者でも一度読んでおくといいと思う。ヘンな話だが、定跡を微妙にずらすというのは将棋ソフトでも対応が難しい部分なので、24のソフト指し相手にも効くかもしれないね(笑)。

作成日:2012.02.19 
四間飛車 その他の居飛車

石田流の基本―本組みと7七角型

石田流の基本 (本組みと7七角型) (最強将棋21 #)
著者 :戸辺 誠
出版社:浅川書房
出版日:2012-02-01
価格 :¥1,540(2024/08/31 19:56時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

やっぱりホットな石田流の本ということで、石田流の使い手の一人である戸辺が出した本。タイトル通り、いわゆる石田流本組の形(▲7六飛▲7七桂▲9七角)と、▲9七角が▲7七角になった7七角型を解説している。

内容は、

vs棒金
△6三銀△8三金からいきなり△7四歩と突いていく形から、△5三銀を加えて攻めていく形まで。ただし、その辺まで行くと、石田流側が▲4五銀から反撃してそれを居飛車が受けるという展開となる。
vs左美濃・銀冠
本組から攻めていく形と、▲7七角から▲6五歩と捌いていく形の両方を解説。△9二飛からの千日手狙いや、△7二飛から攻めてくる形などについても言及している。
vs居飛車穴熊
石田流側から美濃囲いで攻める形と、相穴熊について解説。

当たり前の話だが振り飛車は捌いてナンボなので、その辺の攻めの形についてはくどいくらいに詳細に解説してくれている。初段前後くらいの石田流初心者にはありがたいと感じるだろう。本組の場合で▲7四歩を効果的に入れて▲9七角を捌いていく手法、▲7七角を▲5九角から大きく使っていく組み立てなどは参考になる。

一方、相穴熊の方は、△6三銀型のときはまぁいいとして、△5三銀型では「後手は△3三銀のビッグ4を目指します。しかし▲○○○とすることでそれが阻止できます(多分秘手だと思うので一応ヒミツ(笑)。詳しくは本書を手に取ってください)。よって先手よしです」で終わっている。まぁ大げさに言うとだけど。それはないんじゃないかさすがに(笑)。紹介している手法は面白かったのでいいんだけど、もう少し丁寧にいろんな形を見せてほしかった。特に棒金の解説が細かかっただけになおさらそう思ってしまう。
その棒金の解説だが、本当に詳しい。また、針の穴を通すような展開というよりは「豪快に捌こうよ。そうすれば美濃囲いだもん先手よしだよ」といった『振り飛車イズム』が出ていて好感が持てた。本書で紹介されている捌き方を会得すれば、他の振り飛車にも応用が利くと思う。

3段くらいまでだったら間違いなく買い。有段者でも一度は目を通しておくことをお勧めする。

作成日:2012.02.07 
三間飛車

よくわかる石田流

マイナビ将棋BOOKS よくわかる石田流
著者 :高崎 一生
出版社:マイナビ
出版日:2012-01-25
価格 :¥1,540(2024/08/31 19:56時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「よくわかる」シリーズ。今回は石田流。久保2冠や戸辺、菅井といった「使い手」も多く、タイトル戦などでもたびたび登場しているホットな戦形なだけに、なかなかにタイムリーだと言えるだろう。

内容は、

vs棒金・二枚銀
棒金の基本的な形から、▲7八飛▲6七金とする対策、それに対する△5四歩からの森内流を解説し、▲7七桂と跳ねない石田流の形まで解説。金の動きを保留し、▲7八金とすることも。
vs持久戦
△5四歩△5三銀から左美濃にする手と、△6四歩△6三銀から居飛車穴熊や銀冠などにする展開の解説。最新の▲7七角型にして▲4五銀から▲6五歩、という手順の解説もある。
vs右四間飛車
超、といってもいい急戦から、居飛車穴熊にする右四間まで。特に超急戦は手順解説が多い。
升田式石田流
基本的な升田式の狙いから、▲7四歩の鈴木新手、▲7五飛の久保新手、▲7四歩△同歩▲5八玉や▲7四歩△同歩▲4八玉など。
vs4手目角交換
▲7六歩△3四歩▲7五歩△8八角成のあとの解説。▲同飛と▲同銀と両方の解説がある。△2八角▲1八飛の形、というとわかる人が多いのかな?(少ないだろ(笑))
補足
落穂拾い、といった感じで、今までの仮説の中の変化手順や、取り上げなかったけどこんな感じで指せばいいよ、といった解説。

敢えて詳しく説明させていただいたが、いろんな形についてかなり突っ込んだ解説をしているので、いい意味でも悪い意味でもいままでの「よくわかる」シリーズっぽくない。想定棋力が上なのか、最近流行の戦形だから盛りだくさんにしたのか、ちょっとビックリするくらいのボリュームだった。
また、細かい話だが、補足で細かい(?)展開の解説をしてくれていたのもよかった。多分本編に組み込んでたら煩雑だっただろうし、巻末に持ってきたことでちょっとした「お得感」も出ている(笑)。

なんだかビビらせるかのような煽り方だが、逆に言うとこの1冊で石田流がだいたい指せると見ていいと思う(できれば鈴木本あたりで「うまくいった形」も勉強してほしいが)。その点ではお勧めの一冊。
有段者であっても、最近のタイトル戦のまとめだと思って手にとってみるのをお勧めする。かなり詰め込まれている感じはするが、知っている変化が多いだろうからそんなに苦にならずに読めるだろう。知識がすっとまとまる感じがしていいと思う。

作成日:2012.02.04 
三間飛車

よくわかる角交換振り飛車

マイコミ将棋BOOKS よくわかる角交換振り飛車
著者 :横山 泰明
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2011-08-25
価格 :¥400(2024/08/31 15:06時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「よくわかる」シリーズ第4弾、ということらしく、角交換をする振り飛車を解説する本。
なんだか茫洋としたタイトルだが、内容を見てもらった方が早いだろう。

序章 角交換型振り飛車の特徴
角交換振り飛車の概要を解説
第1章 ゴキゲン中飛車対丸山ワクチン
△5六歩から歩交換ができた場合は△2一飛と回って飛車先逆襲。できなかった場合は△2二飛から銀冠、もしくは銀冠から△2二飛。
第2章 △3三角戦法
角交換から▲2五歩ときた場合は△2五桂ポン。角交換後に▲2五歩とこない場合は立石流。角交換してこない場合は角筋オープン向かい飛車。
第3章 角交換型四間飛車
▲2五歩と突いてきた場合は△3三銀から飛車先逆襲もしくは△4四銀から△3五歩。▲2五歩と突いてこなかった場合は持久戦。レグスペに合流。
第4章 角交換型石田流
升田式石田流。▲7四歩急戦などではなく、美濃に囲ってから攻める形。▲7四歩と交換できた場合とできなかった場合。
第5章 その他の角交換振り飛車
2手目△3二飛戦法・ダイレクト向かい飛車・端歩位取り角交換振り飛車。それぞれさわりだけ。

大体こんな感じだ。

本当に「さわり」だけなので、類書を紹介しているケースも多い。『角交換振り穴スペシャル』や『2手目の革新 3二飛戦法』などである。また、各章それぞれの戦法についても、類書がまったくないというわけではない。本書はあくまでも「どういうものか見てみよー」的なガイドの一冊である。なので、紹介されているのは、別の本を見れば必ずどこかに書いてあるだろうという変化ばかりと言っていい。
解説はごく基本的なものに限られているし、「少し有利」かな、ぐらいのところまでで終わっている。ひどいときには、立石流の1変化で「銀交換してるから指しやすい」で終わっているものもある。実際はちょっと立石流難しいんじゃないか、とも思える局面でだ。

とはいえ、あくまでもガイドの一冊。割り切って読むのであれば十分すぎる内容である。類書を紹介しているということは「あとはそっちを読んで詳しく勉強してね」ということであり、あとは知らんと突っぱねているわけではないのだし親切ではある。
また、違う戦法でも同じ形になっていくよ、というのが判りやすいのもいい点だと思った。結局片銀冠にして飛車を2筋に回りゃいいんだろみたいな(笑)。

3~4段以上であれば、本書の内容は知っていなければならないことなので、読む価値はない。
逆に、これから角交換振り飛車を指してみよう、と思っている初段前後の人であれば、まずは何をおいても本書から読むべき。それくらいガイドとしては優れている本だと思う。

作成日:2011.08.29 
振り飛車全般

渡辺明の居飛車対振り飛車〈2〉四間飛車編

渡辺明の居飛車対振り飛車 II 四間飛車編 (NHK将棋シリーズ)
著者 :渡辺 明
出版社:NHK出版
出版日:2008-02-13
価格 :¥1,100(2024/09/01 09:44時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

NHK将棋講座の内容をまとめたシリーズの後編。2冊目は1巻まるごと四間飛車である。
前書と同じく平易な語り口で、詳しい変化よりは大きく俯瞰で眺めるような内容になっている。

取り上げられているのは、ナナメ棒銀、4五歩急戦、棒銀、5筋位取り、玉頭位取り、居飛車穴熊、相穴熊と盛りだくさんで、穴熊は藤井システムについてもかなり筆が割かれている。
基本的なコンセプトも前書と変わらず、「急戦でも悪くないけど、美濃囲いは固いよ。居飛車穴熊のがいいんじゃない?」「居飛車穴熊は攻略が大変だよ。いろいろ工夫しないと」という歴史的なやりとりをふまえて書かれている。この辺り、初級、中級向けに説明するのはけっこう難しいと思うのだか、非常にうまくやっている感じがする。
前書同様、中級者にとって心強い味方になってくれる本だ。

どうでもいい話だが、藤井について「ユニークな解説や棋士のモノマネなどのファンサービスで有名ですが」って(笑)。

作成日:2008.03.24 
四間飛車
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