振り飛車

木村一基の急戦・四間飛車破り

木村一基の急戦・四間飛車破り (NHK将棋シリーズ)
著者 :木村 一基
出版社:NHK出版
出版日:2005-03-01
価格 :¥250(2024/09/01 02:46時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

NHK将棋講座のテキストに加筆修正したもので、棒銀戦法、ナナメ棒銀戦法、▲4五歩戦法、鷺宮定跡の4つの急戦を解説している。

内容はかなり高度なものだが、急戦一本と絞っているので読んでいてもそんなに苦にならない。以前白砂のコラムでもちょこっと述べた通り木村さんは「四間飛車は急戦で潰せる」と言っていた(奨励会3段時代)人なので、実戦に生じやすい形に多く解説を割いている。

ライターの小暮さんが関わっているようで、それも本書の解説が判りやすい一因になっているのだろう。
また、NHK鈴木本と同じく、限られた時間の中で区切る解説になっているので、改めて読むと「もう少し変化の解説があればなぁ……」と思う部分はある。しかしまぁ、そんなに多くはないのでこれは気にしすぎかもしれない。

それより気になったのは、変化図等でところどころに出ている、色の変わったマス目。

本書では、というかNHKの解説当時から、「▲○○×」といった眼目の指し手をキャッチーに紹介、という体裁を取っている。例えば「強く前進▲3五銀」といった感じに。
そのため、その章の図面はほとんど全て、上の例で言うと3五の地点がグレーで塗られているのだ。

これがどういう効果をもたらすか。

いい意味では常にその地点を注意して読むことができる。だから、「ここが急所だからこういう手を指してるのか……」といったことが直観的に理解しやすい。
しかし悪い意味で言うと、ひとつの図面の中に「直前の指し手が太字で」「急所のマス目がグレーで」という二つの強調が混在することになって、少しうっとうしい。
あくまでも個人的な感想なのだが、これはちょっと失敗かなぁ……。
もちろん、意欲は買うし、この形式が解説の理解の助けになっていることは間違いない。
グレー部分を少し薄くするとか、もっと違う強調方法にするとか、もう少し改良すれば、初級者中級者向けの新しい解説方法として使えると思う。

作成日:2005.03.30 
四間飛車

四間飛車の急所 4 最強の4一金型

四間飛車の急所 (4) 最強の4一金型 (最強将棋21)
著者 :藤井 猛
出版社:浅川書房
出版日:2005-03-05
価格 :¥1,540(2024/09/02 11:59時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『四間飛車の急所』シリーズ第4弾。
今回は後手四間飛車側が△5二金左を保留した形を解説する。

形自体はそれこそ大山時代からあった指し方で、部分的な裏技としてはいくつかの棋書でも散見できる。有名なところでは、対右四間飛車で▲1一角成△3一金として後手有利、というものがある……といって判る人が意外と少なかったりして……。
白砂の個人的なことを言うと、学生時代に高井さんがこの形を得意にしていて、急戦を袖飛車で破って勝星を荒稼ぎしていた。居飛車穴熊が出てしばらくの頃で、その頃は「鷺宮定跡」誕生などもあり、まだ急戦も多く指されていたものだった(<遠い目)。

まぁ、とにかく4一金型。
基本的なコンセプトは、△5二金左としないことにより、盤面右側に金を応援に出しやすくし、急戦を正面から受け止めようというものだ。また、△5四歩△6四歩といった歩を突かないことにより、△6四角とか△5四銀といった通常の定跡では生じない筋が発生することもある。もちろんこれはメリットばかりではなくデメリットもあってなんとも言えないところだが。
矢倉において飛車先不突きが誕生したように、金上がりを保留することによって、居飛車の態度に合わせてこちらの体勢を変化させることができる。これが本書の4一金型の狙いである。

そういう事情であるので、できれば、というか必ず2/3巻は読んでおかなければならない。「従来の形と比べて」という比較が多々発生するからだ。形は全然違うが、『高田流新戦略3手目7八金』と同じように、少しでも得をしようという志向レベルの高い形である。

内容は、そういう事情もあってか意外と薄い。
いや、こういう言い方は語弊があるか。比較対照という作業が多いため、新しく変化を覚えるという感じにはならないので、そんなに苦にならずに読めるのだ。少なくとも、既刊の2冊を読みこなせるレベルであれば本書はラクに読めるだろう。
もっともここが評価の難しいところで、ということは前2冊をきちんと理解せず本書を読んだ場合、どの程度それが「役に立つ」かというと疑問なのだ。もちろん本書だけ読んで4一金型の優秀性を理解し、4一金型だけを指す、ということは十分に可能だ。ただ、それができるのであれば前2冊はラクに読めるはずだし、ということはやっぱり本書は難しいのか……。
評価が難しいので、とりあえず「そこそこ大変」とだけ覚悟して下さい(<をい)。

本書の特徴は、今までになかった「実戦編(という名称ではないが)」がついたところだろうか。

今までのシリーズでは、仮にそれが実質的に実戦解説であっても、形としては定跡解説の体だった。
しかし、4一金型は「少しの違い」がたくさん生じる実戦的な戦法のためか、全ての形を網羅的に解説という形にはしづらい。そこで、戦い方考え方だけでも判ってほしい、ということで、実戦編を設けたのだろう。
厳しいことを言ってしまうと、煩雑であってもきっちりと「定跡」を作ってほしかったな……と思うのだが。

以上のように、本書はかなり高度な内容になっている。
初段くらいでは厳しい。きちんと読みこなせれば3段クラスにはなっていると思う。

作成日:2005.03.30 
四間飛車

鈴木大介の振り飛車自由自在

鈴木大介の振り飛車自由自在 (NHK将棋シリーズ)
著者 :鈴木 大介
出版社:NHK出版
出版日:2005-02-01
価格 :¥316(2024/09/01 21:34時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

NHKの将棋講座の内容をまとめた本。

よく言うと振り飛車vs居飛車の様々な戦い方が載っている本。悪く言うと雑多すぎて変化が薄くよく判らない本。あくまでもカタログ、俯瞰として眺めるために使う本だと考えればいいだろう。
それぞれの章末に簡単な「その戦形における振り飛車の戦い方」が載っているので、振り飛車を指したことがない! という初級者の人でも、だいたいの指し方は判ると思う。もっとも変化は「ほぼない」ので、本の通りに進むという甘い考えは捨ててかかった方がいい。本書は、「こういう<感じ>」という指し方指し回しに重点を置いた本である。

講座をそのまままとめた……というより、ひょっとすると更に圧縮しているかもしれない、と思えてしまうくらい本筋以外の内容がないので、これ一冊ではあまりに辛い。本書を読んだあと、別の本のフォローか必要だろう。
また、これはあくまでも個人的な意見なのだが、非常に読み辛かった。印字の濃さか書体か太さか行間か文字間か図と文字の間隔か、その辺はよく判らないのだが、とにかく読みにくい。もう少し他社製の棋書を参考して、「読みやすい」本作りにも留意してほしい。

作成日:2005.03.02 
振り飛車全般

振り飛車破りユニーク戦法

振り飛車破りユニーク戦法:独特の急戦7戦法で振り飛車を撃破! (スーパー将棋講座)
著者 :田丸 昇
出版社:創元社
出版日:2005-02-01
価格 :¥20(2024/09/02 11:59時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

対振り飛車のマイナー戦法を集めた本。
奇襲色や変態色はあまり強くはなく、あくまでもマイナー戦法の色合いが強い。

内容は、飛車先不突き右四間、富沢キック、5筋位取り急戦・持久戦、相振り左玉、地下鉄飛車、対三間飛車桂跳ねず▲4五歩急戦。ラインナップを見ただけでどこかで解説された感が漂うが、こうやって集めてみると面白そうに見えるから不思議だ(笑)。

変態将棋党なら(←いるんかそんな奴がゴロゴロと)知っている形がほとんどなので新鮮味がない。ただ、棋書であまり見ない形が多いので、一冊にまとめたという価値はあるかもしれない。
変化もそこそこ多いので、一定の形に組めるようになれは、その戦法をモノにするまでにさほど時間はかからないだろう。
一度は手にとって、形を知っておくのは悪くないと思う。

作成日:2005.03.02 
振り飛車全般

決定版 石田流新定跡

決定版 石田流新定跡:ライバルにひとアワ吹かす必勝戦法! (スーパー将棋講座)
著者 :鈴木 大介
出版社:創元社
出版日:2005-01-01
価格 :¥142(2024/09/01 06:24時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「あの」鈴木大介の創元社本。それだけでなんとなく察しがつくが、その通りの豪快な内容になっている(爆)。

内容は「▲7四歩早仕掛け」「棒金」「居飛車穴熊」の3つ。
最初の▲7四歩は、▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩▲7四歩という仕掛けのもの。『将棋世界』の「盤上のトリビア」でも紹介されたし、そのちょっと前に『近代将棋』で、それを読んだ白砂がコラムでも紹介している。
『東大将棋ブックス石田流道場』では、この仕掛けは△4四歩という軽い受けがあってムリ、という結論だったのだが、本書では石田流成功となっている。よくよく読み比べてみると、『石田流道場』では▲6五角としていたところを本書では▲5六角と深く引くようになっており、『石田流道場』での受けはうまくいかないということになっている。
どっちが正しいのかは自分の目で見て確かめてほしい

棒金と居飛車穴熊は、いずれも『島ノート』で紹介したような形。
確かヅラノートは棒金優勢だったと思うのだがその辺は素通り(笑)。居飛車穴熊はダイヤモンド美濃が優秀、という結論だったので、これは同じ結論だ。

『石田流道場』の紹介で書いたことなのだが、石田流はやはり独特の形とか間合いがあって、少し苦しそうに見えるけどこの形になれば勝負形、というパターンが結構ある。
もちろんプロの目で見れば実際は苦しいのだろうが、アマチュア同士の叩き合いならそうとも言えない。「攻められている」「受けさせられている」「美濃囲いが固くて寄せが見えない」など、居飛車側にプレッシャーとなる要素が多いからだ。そういう意味では、本書くらいざっくり解説してくれた方が、石田流魂(笑)が判りやすく理解できるのでいいのかもしれない。

初段、2段くらいまでの石田党は絶対に買い。▲7四歩の変化が気になる有段者も買い。その他の人は、パラパラと見るだけで十分だろう。

作成日:2005.02.10 
三間飛車
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