棋士が数学者になる時 千駄ヶ谷市場3

棋士が数学者になる時 千駄ヶ谷市場3
著者 :先崎 学
出版社:マイナビ
出版日:2013-05-23
価格 :¥1,540(2024/09/01 13:53時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『将棋世界』誌に連載していた「千駄ヶ谷市場」をまとめたものの第3弾。平成20年2月から8月までの原稿をまとめている。ちゃんと奥付に書いてあったので、『孤高の大木 千駄ヶ谷市場2』からは改善されたようだ。そういえば、目次が前作よりもっと先鋭化されている。これはぜひ手に取って確かめてほしい……というほどの違いでもないんだけどね(笑)。

内容は、真部の絶局の話や、第66期A級順位戦佐藤vs木村の「歩が足りてるんだよ」など(ちなみに、この言葉は本書には載っていない)、将棋界好きの人には楽しめる話題が多いかもしれない。

最後に、本当にグチにしかならない話なのだが、本書のあとがきについて。
コンピュータ将棋について、まぁよくありがちな「人間ドラマがない」「プレッシャーがない将棋を見ていて物足りない」などといった評がされている。これは個人(あえて「プロ棋士」ではなく「個人」と言う)の考え方なのでどう考えようと知ったこっちゃないのだが、プロ棋士を持ち上げるためにコンピュータ将棋を下げた評をしている気がしてなんか厭だ。こんなのは将棋の世界に限った話ではなく、例えば2ch界隈でも、●流出で大騒ぎしている中、モ娘(狼)板は「○○アンチが全方位攻撃をしていた」だの「ズッキをDisってたのは○○ヲタ」だの、お前ら足引っ張る以外にすることはないのかと(笑)、そういうような世界も多いんだろう(なんか逆に狭い世界の話をしている気がするが……)。
しかし、プロ棋士にはそういうことはやって欲しくなかった。当事者だから。だからこそ。
言いたいのをそこはグッとこらえて、人間ドラマを標榜したいんであればそれだけを言えばいい。わざわざコンピュータ将棋をマクラに持ってくることはない。将棋もコンピュータ将棋も知っている者としてはとても残念に思う。

作成日:2013.09.02 
読みもの

孤高の大木 千駄ヶ谷市場2

孤高の大木 千駄ヶ谷市場2
著者 :先崎 学
出版社:マイナビ
出版日:2012-04-13
価格 :¥196(2024/09/01 13:53時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『将棋世界』誌に連載していた「千駄ヶ谷市場」をまとめたものの第2弾。平成19年頃の原稿をまとめている。というか、白砂がよく読んでいないのか、よくある「○年○月~○年○月の記事をまとめたものです」的な注釈がないように見える。なくてもよいと考えたんだと思うけど、あってほしいなぁ……。
目次も工夫されていて、本文がちょっとずつ載せられている。映画の予告編のような思わせぶりな文章が多く、なんだろうという気にさせられる。これを読ませて興味を引かせてレジへ持って行かせる作戦だとしたらなかなかうまいと思う(笑)。

先崎らしい読みやすい文章で、プロ棋士の世界が判りやすく紹介されている。また「プロなら一目」「ここはこうやるもの」といったプロの将棋観がそこここにあるので、単純な読み物としてでなく、棋力向上にも役立つと思う。特に中級者くらいの人はぜひ読んで欲しい。

個人的には、ラストの女流の部分が面白く読めた。清水のくだりはまぁいいや、という感じだったが、ダイジェスト的とはいえ、ここまで女流棋士の将棋を取り上げたのはなかなかないと思うので。女流の強さも弱さもよく判って楽しめた。もちろん、里見をはじめとする現在の女流トップはもっと強くなってきているが。

作成日:2013.09.02 
読みもの

将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編

将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編 (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :上野 裕和
出版社:マイナビ
出版日:2012-10-16
価格 :¥93(2024/09/01 13:53時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「序盤」「ガイド」とある通り、振り飛車の序盤についての「概略」を解説した本。もちろん全てを解説するのはムリなので、中飛車・石田流・角交換四間飛車のみに絞った解説となっている。

内容は以下の通り。

  • 「序盤の基礎知識」として、そもそも「序盤」ってなんなのかというところから、振り飛車居飛車双方の基本的な指し方を解説している。
  • 「歴史を振り返る」として、これまでの対抗形の歴史を紹介し、居飛車穴熊退治のために中飛車・石田流・角交換四間飛車が出てきた流れを解説している。その他、棋士の意識変化やインターネットの普及などについても触れている。
  • ゴキゲン中飛車・石田流・先手中飛車・角交換四間飛車のそれぞれについて、戦法の概要や成功・失敗のケースから最新形までを解説する。

特に戦法の解説については、単なる概要だけではなく、狙いや理想形を示すことにより、振り飛車側はその形に向かって指していくし、居飛車側はそれを防止すべく動くという図式がよく判るようになっている。特に初段前後くらいまでの人は、他の定跡書を読む前に、まさにガイドとして本書を読むといいと思った。
また、第1部は、初級者が読むと将棋で使うさまざまな専門用語が判ると思うので、初級者はこれも押さえておいて損はないだろう。

従来の棋書に比べればはるかに「概念」についての説明が多いので、いわゆる「指さないファン」も満足できる内容になっていると思う。また、そこかしこに見られる極度の藤井推し(笑)などを見ても、よくネットを見て研究しているのだなぁ(笑)と思った。とはいえ、いわゆる「指さないファン」は、そもそもこういうことに興味があるのかなぁ……などともチラッと思ったりした。それを言い出してしまうと身も蓋もないのだが。
初段くらいのまでの人であれば一度は読んでみてほしい。3段くらいまでの人も、最新形の確認にはもってこいなので、一回目を通すのはいいと思う。

作成日:2012.12.16 
振り飛車全般

女性のための将棋の教科書―誰でも簡単に始められる入門編

女性のための将棋の教科書―誰でも簡単に始められる入門編
著者 :上田 初美
出版社:つちや書店
出版日:2012-08-01
価格 :¥1,474(2024/09/01 14:19時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

「女性向き」というのをとにかく前面に押し出している珍しい(?)タイプの入門書。著者のところに「タイトル保持者」とあるのは、「女王」と書いても一般の人には何のことだか判らないからだろうか(笑)。
本書がどんなものなのかを知るためには、表紙折り返し部分(表2ってところかな)を読んでいただければそれで十分だろう。

将棋は、あなたの人生をより素敵に彩ります。
礼儀作法、深い友情、家族との時間、夢を叶える計画性……
将棋の魅力は、ただゲームとして楽しむことだけに留まりません。
将棋から得られるものを通して、女性の毎日はより、輝くことでしょう。(以下略)

えーっと……。

内容は、駒の動かし方から始まって、駒の取り方、簡単な手筋、囲いの種類、戦法について、詰め将棋、といったもの。
一応、きちんとコンパクトにまとまっていると思う。
オールカラーであることを利用して大事なところを黄色のマーカーでラインを引いたようにして表示したり、図面を細かく出したり、随所にマンガをはさむなど、判りやすく説明をしようという意図はきちんと感じ取れた。これはちゃんと評価しておきたい。

まぁ、逆に言うとツッコミたいところは随所にあるわけで、細かいところでは詰め将棋を詰み将棋と言ったり(P.87。誤植であると信じたい)、玉を詰ますことを「駒を詰ます」と言ったり、戦法を説明するのに「定跡や手筋のこと」と言ったり(まぁ間違いと攻め立てるほどのことではないのかもしれないけど、ニュアンス的には違うよなぁ……)、というのがある。
しかしそんな瑣末なことより、とにかく「居心地が悪い」。なんというか、『STORY』あたりの「モテぷよ女性(STORYの想定読者層は40歳台くらいかな)が若い男の子にもてもてっ!」みたいな、ものすごく作られた人工的な感じで、まぁこれは白砂が男だからしょうがないんだろうけど、どうにも居場所がなかった(笑)。読んだは読んだけどもういい(爆)。

個人的には、将棋というゲームはゲームとしてとても面白く、別に人生を素敵に彩りたい「から」やり始めたわけでもないし、それはあくまでも副次的なものだと思っている。なので、そんなサギっぽい(笑)誘い文句で将棋の素晴らしさを喧伝するのは、それは違うんじゃないかなぁ……と思う。もっと言っちゃうと麻雀で人生を語ったりする桜井章一と同じ臭いがしてなんかイヤだ。
ただ、これで、まっっっっっっっったく将棋に興味のなかった人が将棋に興味を持ってくれて、それで同好の士が一人でも増えるのであれば、それはそれで将棋界のためにはいいんじゃないか、とも思うので、(くどいようだが個人的には全くこういう宣伝方法には惹かれないが)これで興味を持ってくれる人もいるかもしれないので、そう考えるとこういう宣伝方法も「アリ」なんだろうなぁ……。

作成日:2012.10.16 
入門

羽生の五手詰

羽生の五手詰 (SUN MAGAZINE MOOK)
著者 :羽生善治
出版社:マガジン・マガジン
出版日:2012-05-31
価格 :¥838(2024/08/31 16:01時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

以前『羽生の一手詰』『羽生の三手詰』を出していたのだが、今度は5手詰。81問の5手詰と3問の実戦での詰の問題がある。

問題は基本的な手筋のものもあれば、駒を取って詰めるとか、どう見てもただの追い詰めだろうとか、これは3手詰に2手足しただけだよね、とか、「桂を逆から打っても詰みます(7問)」「こういう7手詰もあります(63問)」みたいに思いっきり自分から余詰を告白しているなど(笑)、どちらかというと、というかかなり「実戦的」な内容になっている。
かと思えば、たまにポンと限定打で詰ますとか、良問もいくつか混じっている。個人的には15問・34問・47問がよかった。
さすがにこのクラスの問題だと白砂は渋滞することがなく、「℃-ute「会いたい 会いたい 会いたいな」発売記念ミニライブ&握手会イベントinクイーンズスクエア横浜」の順番待ちの間に終わらせることができた。正答確認を含めて実質20分くらいだろうか。

まぁ、2時間並んでたんだけどねっ(血涙)
 ある意味「詰め将棋らしくない」問題が多いので、詰将棋アレルギーな初心者が手を出すのには向いているのかもしれない。

作成日:2012.09.16 
詰め将棋
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