摩訶不思議な棋士の脳

摩訶不思議な棋士の脳
著者 :先崎 学
出版社:マイナビ出版
出版日:2015-10-24
価格 :¥1,694(2024/08/31 23:07時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

週刊文春の「先ちゃんの浮いたり沈んだり」をまとめたもの。まえがきによると、もう全部単行本化したと思っていたらまだ残っていてそれをマイナビの人がまとめてくれた。かき集めたので時系列がバラバラ、とのことで、確かになとんなく時系列になっている気もするが確かにバラけて掲載されている。細かいことを言うと、できれば連載日を書いといてくれると嬉しかったかなぁ。

内容はいつもの通りで、棋士と呑んだりどこかに行って呑んだりたまに将棋を指したり、というもの。読みやすい文章なので、週刊誌の1ページ連載にはピッタリだったと思う。
とりあえず中村太一がいいヤツだということと山口恵梨子を将棋の世界に引き込んだ先崎GoodJobってことはわかった(笑)。

作成日:2018.01.17 
読みもの

渡辺明の思考: 盤上盤外問答

渡辺明の思考: 盤上盤外問答
著者 :渡辺 明
出版社:河出書房新社
出版日:2014-09-22
価格 :¥2,100(2024/09/01 14:19時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

虫嫌いで石川梨華と「ぬい(ぬいぐるみ)」が大好きな「渡辺くん」にいろんな質問をして、それについて渡辺が答える、という本。渡辺に興味がない人にとっては「なにが面白いんだ」となってしまいそうで、まぁある意味それは正しいのだが、羽生に勝つために渡辺2号を出してきたり、金と銀の優劣について真剣に考えたり、ファンでなくても楽しめると思う。
ファンももちろんだが、(こういう無粋なことはあまり言いたくないが)カンニング問題などでアンチ渡辺になってる人にこそできれば読んでほしい。かなり断定的なことも言っているので癇に障る部分もあるかもしれないが、ちゃんとした将棋ファンであれば、それらのことについてそういう考えの人がいてもいいな、と思えるだろうし、それなりに渡辺を再評価できると思う。

構成がごとげんとのことで、イメージ的には、「後藤元気のごとげん♥らぶりんですっ♥」に渡辺がゲストで出てきて視聴者メールを元にトークをする、という感じだろうか。そういえば、なんでアイドルラジオの投稿って「○○でした。○○ちゃんは××なとありませんか、教えてください」ばっかりなんだろうねぇ。まぁ自分がビジュルムで採用されたメールもそういう文章にしたんで人のことは言えないんだけども(笑)。
2017年はちょっと成績がふるわなかったが、頑張ってほしいなぁ……くらいには渡辺のことが好きになる本(個人的には、棋風があんま好きじゃないんで応援はしてなかったし今後も多分しない)。

作成日:2018.01.17 
読みもの

中学生プロ棋士列伝

中学生プロ棋士列伝 (洋泉社MOOK)
著者 :
出版社:洋泉社
出版日:2017-09-27
価格 :¥1,320(2024/09/01 14:19時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

加藤・谷川・羽生・渡辺・藤井という「中学生の時にプロになった棋士」にスポットを当て、人物像や経歴などを紹介する本。以前、瀬川がプロ棋士になった際にもそういう便乗本がいろいろ出たが、藤井フィーバー(あー表現がおっさんだなー)に当て込んでそんな意図で作られた本の一つなんだろうか。
ただ、書いているのが大川ということもあってか、中身は至極まともな作りになっている。棋譜や図面をほとんど出さず、逆に例えば加藤の奇行エピソードなども極力触れずに、純粋に棋士としての凄さを紹介している。これは好感が持てた。また、プロ棋士になるまでの行程や永世資格の条件、過去のタイトル戦の記録などもうまくまとめてあって、将棋を知らない大人が「プロになるのは大変なんだ」「すごい羽生が○連勝してる」など、データからも感心してもらえるようになっている。

唯一、どうしようもないのだが残念なところと言えば、発行が2017年10月だったことか。羽生の紹介ページで「あと1期で永世竜王だ」と触れられているが、これが永世7冠を持っている、あるいはもっと進んで国民栄誉賞まで話が及んでいれば、もっとインパクトが強かったはずだ。まぁ10月でももう藤井ブームも終わってる感があったと思うのでそれでも遅かったとは思うが、羽生の伝説、それも一番大きな伝説を記すことができるのとできないのとでは大きな違いがあるだろう。ホントにしょうがない話だとどうでもいいことではあるのだが。

藤井を入口にしてプロ棋士、あるいは将棋そのものに興味を持ってもらうためにはちょうどいい一冊だと思う。「指さない将棋ファン」なら持っていても損はない。個人的には「将棋連盟が棋譜を保存するようになったのは加藤が中学生プロになったのがキッカケ」というのが知らなかったので驚きだった。

作成日:2018.01.17 
読みもの

佐藤康光の矢倉

佐藤康光の矢倉 (佐藤康光の将棋シリーズ)
著者 :佐藤 康光
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2011-03-24
価格 :¥1,650(2024/08/31 15:10時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

四間飛車藤井システムを開発した藤井が、矢倉で新機軸を見せた「矢倉藤井システム」について解説した本。なんで佐藤が解説するのかはよく判らないのだが、内容はいいからまぁよしとしよう(笑)。
そしてまたなんでか判らないのだが、森下システムとセットになっている。単純に考えると双方ともに1冊の本にするには苦しく、合わせて出版した……ということなのだろうか、内容はいいからまぁよしとしよう(笑)。

矢倉藤井システムについては、基本的な形の解説から後手の対策までをいろいろ解説している。
森下システムは、ざっくり森下システムが消えた理由を紹介した後、復活の一因となった深浦流の▲5三歩から▲5四香、それを避けて後手が△4三金右と変化する指し方を解説している。
講座編で飛ばした部分を実戦編で紹介する、という、一風変わったシステムの本で、定跡本として読むと少し「とっ散らかった」印象を受ける。白砂は体系的に読んだ方が理解がしやすいクチなので、よりそう感じたのかもしれないが。とりあえず、講座編で「先手ピンチ。対策は実戦編で」はやめようよ(笑)。

解説そのものはとても丁寧で、重要な部分では2、3手で1ページくらいのペースで進むため、初級者でも判りやすいと思う。実戦編の方でもそれくらいのペースで解説してくれるのは少し驚いた。ただ、それならやっぱり体系立ててきちんと解説してくれた方が……と思ってしまった。また、ほんの少しの工夫なのだが、それぞれの解説の概略部分では行間を少し広げて読みやすくしてくれている。これはいいアイディアだと思った。

棋書としてはきちんとまとまっていて、ちゃんと藤井システム・森下システムが理解できる良書だと思う。

ただ、ちょっと卑怯な話なのだが、個人的なことを言うと、実は以前、藤井自身による解説会に参加したことがあるのだ。その時は(当たり前だが)本人から口頭で講義を受けたのだけれども、それがまたとても判りやすかったのである。その講座の内容と比べてみると、やはり「藤井流とはどういうものなのか」という大事な部分についての解説が少ないと感じた。一応10-11ページで解説はしているし、19ページでも補足はしてあるのだが、言葉だけではなく手順や図など、もう少し工夫があればなぁ……と思う。
もちろん、これはあくまでも個人的なバックボーンあっての感想であるし、解説が判りやすいことは確かである。初級者から有段者まで、しっかりと役に立つ棋書であることは間違いない。

作成日:2015.02.14 
矢倉

菅井ノート 後手編

菅井ノート 後手編 (マイナビ将棋BOOKS)
著者 :菅井 竜也
出版社:マイナビ
出版日:2012-09-27
価格 :¥759(2024/09/01 03:54時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

NHKの冒頭インタビューを観て以来、というかその際に聞き手の矢内が「だいじょうぶ、すぐ終わるから」と励ましたという逸話を聞いて以来、夫婦でファンをやっている菅井(<どういう説明だ(笑))の著書。振り飛車党でもあり、超速対策として自らの名を冠された「菅井流」を生み出した開発者でもある。

内容はほぼvs超速。

菅井流
▲3七銀に△4四歩と突く形。続けて▲4六銀なら△4五歩と引っ張り込んで攻めよう、という大胆な構想だ。▲7八銀型の対策にも触れている
△3二金型
いきなり後手が5筋を交換する形に対して、先手が▲5五歩とフタをする手と、2枚の銀で中央を制する形。また、少しスピードは落ちるが、▲5八金右まで囲う形や、端歩を突き合う形にも触れている。
△3二銀型
△3二金型と同様に5筋の歩を交換し、先手が2枚の銀で中央を制する形。後手の形の違いが問題となる。
銀対抗型
▲4六銀に△4四銀と受け止める指し方。穴熊の戦いになる。
一直線穴熊
前章をもっと先鋭的にして、超速を捨ててでもとにかく穴熊に囲う、という指し方。▲8八銀と上がらないことで、角頭を攻められた際に▲8八角と引くことができる、というう工夫により注目された。
その他
343戦法の改良形、少し古い5筋からの攻め筋など。

現在(2015年)ではあまり見られなくなったゴキゲン中飛車だが、この当時(2012年頃)は、ゴキゲン中飛車に対して超速という特効薬ができたと、振り飛車党も居飛車党もこぞってこの戦形を指していた気がする。

『島ノート』ほどではないが、上記で説明した通り、それぞれの形について詳細に解説されている。図面の挟み方や文字フォント、行間に至るまで、とても丁寧に仕上げられた本である。
繰り返しになるが現在ではやや下火になっている感がある戦法なので、今これを読んでゴキゲン中飛車党になる! という人はあまりいないだろうが、飛角が乱舞する振り飛車らしい振り飛車なので、指してみると楽しめると思う。振り飛車の勘所をこの戦法でつかんで、他の戦法、例えば角交換四間飛車などに移行すると、その感覚の同じところと違うところが判ってより一層指し手に深みが出るだろう。
そういう意味では、内容は有段者向けの本なのだが、むしろ初段前後くらいの居飛車党にお勧めしたい。居飛車らしい緻密さだけではなく、振り飛車流の「いい意味でのおおざっぱさ」がきっと掴めると思う。

作成日:2015.02.12 
振り飛車全般
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