鷺宮定跡 歴史と最先端
鷺宮定跡の創始者であり、急戦の大家である2ch名人青野の著した急戦本。
鷺宮定跡、新鷺宮定跡を主に解説しているが、その性質上、4六銀戦法なども入り混じっている。
もともと青野の定跡本は「(外れがないという意味の)カタい」本なので今回も安心して読んだのだが、歴史というか移り変わりというか最新定跡を追うのではなく、そこに行き着くまでの攻防に焦点を置いている感じの本だ。
事実、最新の攻防と言えるのは最終章くらいで、それ以外の内容は別の本で十分すぎるほどカバーできる。例えば藤井本や渡辺本などでも「この攻め方は振り飛車側のうまい受けがあってすたれ、代わって○○という指し手が……」というような解説が散見されるので、歴史に焦点を当てるのは正直「今さら感」がなくはない。
ただ、青野が書いた、という点に注目をするなら、これはまさに自分が戦ってきた歴史を証言しているようなものなので、そういう読み方をすればまた面白く読める。
最終章は最新の定跡が載っていて、また、同時に居飛車側の課題という部分もある。
悪い表現をすると居飛車有利にはならないということなのだが、この形が現在のプロのテーマになっているということを正直に紹介してくれたことには素直に驚いた。自分には判らない、ということは、なかなか言えないことだ。
また、これはどの本にも言えることなのだが、急戦は特に「その局面をどう見るか」という大局観の問題が関係する。
詰みまで研究すれば大局観もクソもないのだが、その前で終わっている場合は、その局面を持って「やれる」かどうかを自分で判断しないといけない。居飛車振り飛車双方が自分よし、と思っている局面もあるし、逆に双方自信なし、として避けるケースもあるだろう。
この部分が、居飛車党と振り飛車党では違うし、同じ振り飛車党でも微妙に違う。
最近は急戦本が数多く出版されているので、それらの主張を比べてみることも面白いだろう。