イナズマ流逆転術
『終盤の魔術師』森9段が書いた「逆転術」の解説書。
……と聞くと面白そうなのだが、実戦での逆転劇を見せられても、それを体系化できんのかい、という疑問が残る。まぁ、本書はそこそこうまく分類整理している方だと思うので、読んでいて苦にはならない。
ただ、苦にはならないのだが、立ち読みならいいけど買うほどでもないなぁ……というのが本音である。申し訳ない。
『終盤の魔術師』森9段が書いた「逆転術」の解説書。
……と聞くと面白そうなのだが、実戦での逆転劇を見せられても、それを体系化できんのかい、という疑問が残る。まぁ、本書はそこそこうまく分類整理している方だと思うので、読んでいて苦にはならない。
ただ、苦にはならないのだが、立ち読みならいいけど買うほどでもないなぁ……というのが本音である。申し訳ない。
これを知っている人は相当古い人か、さもなくば「通」であると断言する。
『将棋は歩から』の加藤治郎名誉九段(確か亡くなってこうなったと記憶している)の、1981年の著書である。
内容は『将棋は歩から』に劣らず高度なもので、将棋を指すうえでの基本的な考え方を講義している。こういう類の素材は時が経っても色あせるものではなく、また、加藤名誉九段の将棋に対する姿勢も手伝ってか、現在でも立派に通用する内容になっている。
将棋とは高等数学である。
そして数学とは、公式を組み合わせて解いていくものである(というか、数学を判りやすくしているのが公式である)。
プロが短時間の読みでも最善手を逃さないのは、この公式に基づいて考えているからであり、弱い人が長く考えても悪手を指すのはこの公式が理解できていないからである。
だからこそ、定跡や寄せなどの「末端」の知識よりも、将棋の「本質」に直結する公式を理解するべきである。
……と、長くなったがこれが本書の基本姿勢である。
目次を見ればそれが判るだろう。
本書では公式を大中小に分け、大型公式と中型公式について解説している。内訳はそれぞれ、
となっている。
言葉だけでは意味がわかりにくいものもいくつかあるが、有段者であればなにを言わんとしているかは判るはずだ。これだけ重要な問題をまるまる一冊かけて丁寧に解説してくれるわけである。
また、『将棋は歩から』もそうなのだが、棋書には珍しく二色刷り&横書きである。図面が本物の盤駒と同じ色というのも凄いし、横書きの棋書なんてこの本くらいだろう。これは想像だが、先に出た「将棋は高等数学」を意識してのことと思われる。
これを見つけたのは、確か大和の古本屋だったと思う。古本屋での値段は400円だったが、その何十倍分もの知識をこの本からはもらった。
おそらくほぼ間違いなく絶版だと思う。こんな良書を埋もれさせるとは、一人の愛棋家として本当に情けない限りだ。
付記:本書は2000年に復刻された。一人の愛棋家として本当に嬉しく思う。
島八段が出題する局面について、羽生・佐藤・森内の三者が自分の「読み」を披露する。局面は漠然としたものが多く、次の一手のように厳然たる正解が存在するものではない。つまり、トッププロの三者が「実戦でどう読んでいるか」が正直に書かれているのである。
実際にその局面に出会った時、どういう風に読みを展開していくのがいいのか。棋風の違いなども考慮しつつ読むと読み物としても楽しめる。
このシリーズは全体的に有段者向けに書かれているので級位者には辛いかもしれないが、それでもできれば手に取ってほしい。
もちろん、有段者は必携である。
定跡をなぞって進行している間は、将棋を指していてもあるていど気が楽なものである。
しかし、一度定跡を離れると、自分の大局観と読みがすべてを決めることになる。これは楽しくもあるが、同時にとても怖いことだ。特に「腕力」に自信がない人にとっては、その恐怖感はより強いものになる。
本書は、そういった定跡を外れた局面、漠然とした場面での指針を解説したものである。特定の戦形に限らず、序盤での差し手争い、中盤でのもみ合い、終盤での競り合いすべてについて解説をしているので、非常に「お得感」が強い。
大局観という形にしにくいものを表現することに挑戦し、そして成功した良書と思う。
まえがきに「定跡を覚えたい時や忘れた時に、辞書を引くように気楽に研究できる」とあるように、完全に定跡のカタログを目指した本。しかも、局面を仕掛け周辺に絞っているので、類似形を研究しやすい。
カタログに徹しているので、読みやすく理解しやすい。類似形をいくつも出すことにより、定跡の指し手の分岐(たとえば対振り飛車の棒銀の仕掛けでの△3三桂と△4五銀など)も直観的に頭に入ってくる。狙いを絞った分、うまくまとめている感じだ。
ただ。
古い(爆)
仕方がないことなのだが、昭和62年の本。矢倉に▲2九飛戦法が載っているような本である。
残念ながら、おそらく現在ではあまり役に立たない。
それでも、初段前後までの人には、定跡を勉強する上で「辞書」のように役に立つことは間違いない。もちろんそこから先のフォローも大事なのだが、幹となる定跡は長い年月の間さほど変わってはいない。
逆に、4段以上の人間は読む価値なし。断言(笑)