仕掛けの時期 攻めの原点を探る

仕掛けの時機―攻めの原点を探る (1980年) (初段に挑戦する将棋シリーズ)
著者 :大内 延介
出版社:創元社
出版日:1980-06T
価格 :¥154,215(2024/08/31 16:52時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

中盤の入り口、つまり仕掛け周辺の指し手について、実例をあげながら具体的に解説している本である。形も相居飛車、対振り飛車、振り飛車とひととおりそろっていて、しかもそれぞれが豊富である。
定跡外れの形も数多くあり、また、ほとんどがプロの実戦から採ったということで、そういう意味では説得力もある。しかし……。

まず、例題がバラバラに載っている。例えば居飛車編の場合、矢倉を解説したあと角換わりに行き、再び矢倉に戻り、そして相掛かりといった感じになっている。だったら矢倉だけをまとめればいいのに、しかもできるだけ類似した形はページを近くした方がわかりやすいのに、わざとのようにバラバラにしてある。最初は手筋の種類によって分けているのかと思ったがそうでもないようだ。この辺については本当に意味がわからない。
また、「ほとんどが」プロの実戦ということだが、ちょっと疑わしい。
というのも、題材はすべて(読みやすさの都合上)先手番となっているのだが、その直前の後手の指し手が意味不明なのだ。例えば相矢倉で後手の指し手が△6二銀。形を見るに、どう考えても5三から引いた銀である。そして先手から▲3五譜△4五歩▲同銀以下つぶされるのである。どこの世界にそんな支離滅裂な指し手をするプロがいるのか。
初心者向けにわかりやすく解説する、という意図は判るのだが、「矢倉崩し」や「美濃崩し」以上に都合のいい図面が並んでいると、「ええかげんにせぃやコラ!」と言いたくなる。

加えて、あまりに手将棋の例題が多すぎる。いや、定跡をなぞっても意味がないとは思うのだが、それにしても無理がありすぎる。つかみ合い殴り合いの将棋で仕掛けの手筋を解説するというのでは、初心者にはわけがわからないんではないだろうか。

と、そういうわけで若干(もとい、かなり)点は辛めに設定してある。なによりも都合が良すぎるというのが大きなマイナス点である。
仕方ない気もするのだが……。

作成日:2001.07.20 
仕掛け

失敗しない仕掛け

失敗しない仕掛け
著者 :小野 修一
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2001-04-01
価格 :¥1,320(2024/09/01 00:27時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

定跡を覚えたとしても、まったくそのとおりに相手が指してくれるとは限らない。それはそのとおりで、不利になる定跡にみすみす踏み込んでくれるなんてことはそうそうない。そうでなくても、定跡から離れる、あるいは離れる直前というのは怖い瞬間である。そこから先、頼れるのは自分だけなのだから。
そこで本書では、その「定跡での仕掛け周辺」に焦点を絞り、仕掛けの時期、開戦の方法を解説する。

初心者や初段前後の人達には特に参考になる棋書だと思う。しかし、実際に読んでみるとほとんどが定跡をなぞっているだけなので、定跡を知っている人にとってはあまり意味がない。極論をするならば、本書を読むくらいならば定跡書をもっと読め、という感じである(笑)。特色を出したいのであれば、もっと「定跡の類似形」を例にとって解説して欲しかった。
逆に言うなら、本書は定跡のエッセンスを集めた「カタログ集」でもある。そう割り切って読むのであれば、初段前後の人達にはやはりお奨めである。
4段以上の人達は、本書に載っているくらいのことは知っていて当然なので、読む価値はあまりないだろう。

作成日:2001.07.20 
仕掛け

将棋・端攻め全集

将棋・端攻め全集 増補改訂版 (パーフェクトシリーズ)
著者 :大内 延介
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:1998-02-01
価格 :¥202(2024/08/31 16:22時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

いきなり個人的な話で申し訳ないが、7七桂戦法を研究して感じたのは端攻めの重要性だった。7七桂戦法は持久戦になる確率が高く、また相手は位を取ってくる将棋になる。下段飛車から桂香を2四あたりに打ちこんで終わりという形に常になるわけだ。
そうなると、がぜん端攻めが脚光を浴びてくる。桂香を手に入れるには飛車を打ち下ろすか端攻めで交換するしかないからだ。
という思考の流れからこの本にたどりついた、のだが……。

改めて思ったことなのだが、端攻めの主役は桂香ではなく、歩である。タタキ、垂らし、突き捨て、連打……。とにかく「歩」が活躍する。

『将棋は歩から』に全部書いてあるぞ……。
 というわけなので、ことさらにこの本を買う必要はないと思う。私の持っているのは変形A5版くらいの本だが、今はちょっと大きめの本がリバイバルということで出ているらしい。
だまされないように(ちなみに、写真はその復刻された方)。

作成日:2001.07.20 
手筋

最新棒銀戦法 単純かつ破壊力抜群!

最新棒銀戦法 (将棋必勝シリーズ)
著者 :青野 照市
出版社:創元社
出版日:2001-02-01
価格 :¥1,430(2024/08/31 15:32時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

その名の通り、棒銀について解説した本。
矢倉、角換わりと居飛車系の棒銀に限っている。対振り飛車は扱っていない。

自身が公式戦で指したためか、後手番での速攻矢倉棒銀については詳細に解説されている。▲2五歩を△3三角と受け、飛車先交換の瞬間に△8六歩から△2七歩と叩いていく例のやつである。
創元社の本にしてはおそろしく変化が深い。大げさではなく、東大将棋ブックス並である。最後はちょっとだけ都合がいい変化にしているところもあるが、それにしても小さなものだと思う。
有段者が読んでも十分に楽しめる。逆に級位者には変化の渦にとまどうかもしれない。このシリーズにしては異色の本である。

作成日:2001.07.20 
居飛車全般

将棋の基本戦法

将棋の基本戦法
著者 :松田 茂行
出版社:日東書院本社
出版日:1987T
価格 :¥49(2024/08/31 21:31時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

さまざまな将棋の戦法について、基本的な駒組みの部分までをわかりやすく解説した本。

非常に古い本である。昭和53年初版発行だ。
なので、取り上げられている題材は古い。有段者でも今の若い人は「新旧対抗」なんて知らないだろう。それほど古い。

この本のすごいところは、前書きで堂々と「これは作った手順です」と宣言していることだ。初めて読んだ時には気が触れたかとも思ったが(笑)、続きを読んで納得。ようするに、「初心者には、正しい指し方を提示して『形勢不明』とするよりも、ウソの指し方であっても理想を展開して『有利』とした方がいい」という考え方らしい。
これは、非常に優れた考え方だと思う。
いや、今までのいわゆる「高段者の定跡本」というやつも、そういう考えでウソ手順を載せていたのかもしれない。しかし、それを「言わない」のではサギでしかない。それをきっちりと明確にしたところが本書の(発刊姿勢の)素晴らしさである。初級者、中級者にものを教える時にはこうありたいものだ。

作成日:2001.07.20 
全般
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