羽生の法則 Volume 6 仕掛け

羽生の法則 Volume6
著者 :羽生 善治
出版社:マイナビ出版(日本将棋連盟)
出版日:2007-03-01
価格 :¥37(2024/08/31 16:50時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

法則シリーズのラストは「仕掛け」。

「まえがき」では、さまざまな戦形の攻め方の基本を紹介する、というようなことが書いてある。ラインナップを見ると確かにその通りで、内容はこんな感じになっている。

  • 矢倉
    • 先手が▲4六角▲3六銀▲3七桂の理想形を作れた場合
    • ▲3七銀戦法の基本。▲5八飛で一手得の形
    • 脇システム
  • 振り飛車
    • 石田流角交換型
    • メリケン向かい飛車
    • 先手藤井システム
    • 後手三間飛車▲3七桂急戦
    • 後手四間飛車①▲4五歩早仕掛け
    • 後手四間飛車②▲左4六銀
    • 後手四間飛車③▲3八飛(▲6八金直が入ると鷺宮定跡)
  • 角換わり
    • 木村定跡
    • ▲7九玉△3一玉型の腰掛け銀
    • 棒銀で銀交換
    • 棒銀で端攻め
  • 相掛かり▲3七銀△4四角
  • 横歩取り
    • 8五飛戦法山崎流
    • 相横歩取り

ただ、ラインナップは確かにこうなっているのだが、それぞれの変化は乏しく、さほど網羅的というわけでもない。一番うまく行く変化を1つ紹介、くらいの感じである。
個人的には、振り飛車の紹介でいきなり石田流でしかもいきなり角交換の変化というのはどうかと思ったし、次がまたメリケン向かい飛車というのも、なんというか本筋なのかそれ? と思ってしまった(笑)。もう少し考えようがあるよねぇ……。

あと、そもそも「仕掛け」と言っているのだから、仕掛けの局面から始めた方がよかっただろう。初手から並べるのはハッキリ紙面のムダだ。そこは割り切って、変化や戦形を増やした方がもっとよかった。

全体的に、なんか薄い本(←違う意味に取らないように←意味が判らない方は気にせず飛ばしてください)という感じ。2段くらいであれば、ほぼ常識の範疇といってよく、本書を読む必要はほとんどないだろう。初級者がいろんな戦形を一渡りするのにはいいと思う。

作成日:2014.08.04 
仕掛け

振り飛車の真髄② 石田流の極意 先手番の最強戦法

石田流の極意―先手番の最強戦法 (振り飛車の真髄) (振り飛車の真髄 2)
著者 :鈴木 大介
出版社:(株)マイナビ出版
出版日:2006-10-01
価格 :¥92(2024/08/31 14:12時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

初心者の救世主・鈴木大介が送る石田流解説本。

内容は、

  • 7手目▲7四歩
  • vs棒金
  • vs左美濃
  • vs居飛車穴熊
  • 角交換型
  • 右四間
  • 銀冠

といった感じ。一通りの対策は出揃っているので、本書を読めばとりあえず相手の出方は判る。そして、鈴木大介なので、振り飛車の勝ち方がよく判る。

7手目▲7四歩のところで△6二金の変化がないとか、左美濃で「省けない」と解説した端歩を居飛車穴熊編では突いていないとか(一応、手数が足りないという理由付けはしているが……)、少し都合のいい変化がないわけではない。
それでも、これだけの戦形を網羅し、とりあえずでも対応策を載せているのはポイントが高い。このレビューを書いている2014年では、石田流の流行は角交換四間飛車に取って代わられた感があり、そのためかあまり本書が古く感じない。4段前後くらいまでなら、本書の対策だけで結構指しこなせるのではないかと思う。

本筋の変化だけしか書いていないということもあり、とても読みやすい。
石田流初心者にはぜひとも勧めたい本。

作成日:2014.08.04 
三間飛車

久保利明の振り飛車の手筋1 さばきの四間飛車・急戦編

久保利明の振り飛車の手筋 1 さばきの四間飛車・急戦編
著者 :久保 利明
出版社:山海堂
出版日:2007-10-01
価格 :¥999(2024/08/31 23:44時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

振り飛車党の代表選手である久保が書いた手筋本。今回は四間飛車vs急戦に絞って解説している。

四間飛車が先手の場合も後手の場合も解説されているが、▲6五歩急戦がなかったり、▲4六銀戦法で2筋を突き捨てなかったりと欠けている部分も多い。また、内容のほとんどは後手四間の解説ではあるのだが、定跡近辺の解説ではなく実戦譜の解説のようになっており(確認したわけではないのだが、問題を見ていただければそう感じた理由も判っていただけると思います)、いやそりゃあ手筋だけどさぁ……とちょっと残念な気分になった。

あと、難易度がバラバラすぎる。
△8五歩に▲7七角、という問題が2問もあった(3問だったかな?)かと思えば、とても難しい手筋がふんだんに出てきたりしている。
それと、次の一手本の宿命のようなもので仕方がないことなのかもしれないが、解説が少なすぎる。
例えば第30問で、△8八歩と桂取りに打った手に対して、▲7二歩という手筋が正解である、としている。それは正しいと思うのだが、その解説が「△7二同飛と取らせると利かしになる」だけではあまりに不親切すぎる。後手は桂取りに歩を打ったのだから、まず説明するのは△8九歩成とされたらどう切り返すか、だろう。しかしその解説は一切されていない。
実際のところ、△8九歩成は▲同飛と取っておけば、今度は△7二飛と取れない(8五に銀がいて、△8九歩成▲同飛△7二飛は▲8五飛とボロッと銀を取られる)から△6二銀と▲7一歩成を受けるくらいしかなくて、そこで▲7六銀とすれば△同銀と取れない(8五の銀が動くと▲8二飛成と飛車が素抜かれる)から後手が困っている、ということだと思われるので、問題に間違いがあるわけではない。しかし、この説明を一切省いて「利かしが一発入った」で終わらすのは不親切に過ぎる。

攻められた手に対して▲6五歩や▲7八飛という振り飛車の手筋を再三登場させることで印象を強めたりとか、大駒をぶった切って攻めたりとか、面白い問題も数多く入っており、それなりに勉強になるとは思う。実際、白砂は第53問から第54問の手筋が見えなくて解答を見て感心したし。

題材や方向性、やりたいことは間違っていないと思うのだが、料理の仕方が間違っていたのではないか、と思ってしまう。ちょっと残念だった。

作成日:2014.08.04 
四間飛車

佐藤康光の居飛車の手筋2 強襲・矢倉編

佐藤康光の居飛車の手筋 2 強襲・矢倉編
著者 :佐藤 康光
出版社:山海堂
出版日:2007-08-01
価格 :¥232(2024/09/01 09:18時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

『佐藤康光の居飛車の手筋1』に続く次の一手形式の解説本。第2段は矢倉である。
内容は基本の▲3七銀戦法に始まり、森下システム、右四間飛車、左美濃戦法。
先手番から見た矢倉であり、そういう意味では「公平な視点」で書かれている本ではない。
また、少し内容が薄すぎる気もする。例えば▲3七銀戦法は宮田新手あたりまでで、後手版の対策も△9五歩型に限られている(△8五歩型がない)。森下システムも端攻めや深浦新手がない。本当に「先手が成功する形」だけを紹介している感じだ。まぁ、入口で読んでもらう本であるので、これはこれでいいという気もするが。

vs右四間、左美濃といった形を取り上げているのもポイントが高い。ただし、右四間は△4二金対策に触れていないので、安易に使うと痛い目を見ることだけはとりあえず書いておく。使いこなしたいのであれば、別の棋書も参考にすること。

判りやすく矢倉の組み方・戦法の狙いが書かれているので、初段くらいまでの居飛車等は参考にして欲しい。有段者は知っている変化が多いので前半はいらないだろうし、例えば左美濃などは『対矢倉 左美濃作戦』といった本も出ているので、そちらを参考にした方がいいだろう。

実は、本シリーズは4巻出して(評判を見て)以下続刊、という予定だったようだ。巻末に広告が載っている。しかし、本書を出版後わずか3ヵ月後に出版社の山海堂が倒産してしまったので、34巻は出版されていない。vs中飛車・三間飛車と角換わり・横歩取りを予定したようだが、無責任な感想を言えば、とりあえず一通りは出して欲しかったなぁ……。

作成日:2014.06.29 
次の一手 矢倉

佐藤康光の居飛車の手筋1 四間飛車粉砕編

佐藤康光の居飛車の手筋 1 四間飛車粉砕編
著者 :佐藤 康光
出版社:山海堂
出版日:2007-05-01
価格 :¥3,749(2024/08/31 21:16時点)
r1(評価:級位者)
r2(評価:初段~三段)
r3(評価:四段以上)

次の一手形式で解説する四間飛車破りの本。
急戦からは▲4六歩急戦とナナメ棒銀、持久戦は居飛車穴熊。あと、四間飛車穴熊に対する銀冠と、立石流対策、飯島流引き角戦法が掲載されている。基本的な四間飛車対策は網羅されている感じだ。

次の一手形式なので、通常の定跡書を読むように体系的に学ぶということはしづらい。その代わり、戦法を指す上での大体の雰囲気はつかみやすくなっていると思う。
ただ、その分内容は薄くなっており、立石流▲7七角対策などは、本当に狙いを示すだけに留まっている。まぁ、個人的な思い入れも強いので「こんな手は指さないだろー」と評価が厳しくなっている部分はあるのだが(笑)。

細かいことを言うと、本書の場合、珍しく「失敗例」がほとんど入っていない。よく「▲○○と指すと失敗する。振り飛車の立場に立って考えていただきたい」みたいな感じの問題があるが、そこはバッサリ切って、各問題の中で失敗例を解説するにとどめている。居飛車党にしてみれば「そんな立場なんて知らねーよ」と(笑)、まぁそこまで極端ではないにしろ、本書のように「どうやったら成功するか」を考えるだけでいいのになぁ……と思うことはよくある。なので、ホントにこういうことするんだ……と少し驚いた。

できれば体系だった棋書を読んでもらうことを前提として、こういう本をサブテキストとして活用すれば、棋力向上も早いのではないかと思う。棋書の性格上、買って手元に置いておくとよい、とまでは勧められないが、読んでみる価値は十分にある。

作成日:2014.06.29 
次の一手 四間飛車
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