振り飛車・対振り飛車 − 振り飛車総合


 定跡外伝
著者名週刊将棋/編

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミニュケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
価格1200円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 巷には定跡書が溢れている。
 しかし、当然のことながらそれらの定跡書は「全ての変化」を解説してあるわけではない。紙数の都合もあるだろうし、すっきりと優勢にならないから掲載しないということもあるだろう。酷いのになると、不利になると困るから言わない、なんていうケースもあるかもしれない。かくして、「定跡書なんて役に立たないよ」なんて陰口が囁かれることになる……(笑)。
 本書は、そんな「定跡外の定跡」を解説している。
 むろん、プロやアマ高段者は当然知っている変化だ。定跡よりも常識の範疇かもしれない。しかし、初段をちょっと過ぎて「定跡書なんてさぁ……」と言っている人には目からウロコがぼろぼろ落ちること請け合いである。
 ちょっとウソっぽいな……という変化がないわけではないのだが、それもホンの数ヶ所。全編ほとんどが「実戦的な定跡書」である。表紙に書かれた「将棋の裏ワザ教えます」の言葉は真実だと思う。
 定跡がまだおぼつかない初段くらいではちょっと難しいかもしれないが、その少し上くらいの人にはお薦めである。もちろん、高段者は知っていて当然、是非目を通しておいて欲しい。



 高田流新感覚振り飛車破り
著者名高田 尚平/著

級位者☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
価格1200円 4段以上☆☆☆☆
感想

 玉頭位取りという戦法がある。
 本書で紹介されている戦法は、それをベースに、もっと積極的に良さを求めていく戦法である。読んでみるとなかなか面白い。
 残念ながら勝率は芳しくないが(笑)、ツボにハマった時の破壊力は凄まじいものがある。場合によっては「駒がぶつかっていないけど優勢」まであるのだ。それだけ罠いっぱいの「楽しい」戦法なのである。

 定跡編の解説も詳しいし、実戦譜も豊富に載っている。とりあえず本書があればこの戦法を指しこなすことができるだろう(というか他に解説書なんてないか……(笑))。
 受けの力も強くないといけないので初段前後では苦しいかもしれないが、居飛車穴熊は藤井システムが厭だしなぁ……と思っている居飛車党はいいかもしれない。



 高田流新戦略3手目7八金
著者名高田 尚平/著

級位者
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆
発行年月/価格2002.8/1200円 4段以上☆☆☆☆
感想

 題名に「新戦略」とあるが、その名の通り定跡というよりは戦略について書かれている本である。
 話としては、▲7六歩△8四歩に▲7八金とする形について解説し、次に、ここから△3四歩、△8五歩、△3二金の3種類の指し手について、それぞれの対応策を述べている。ちなみにその3種類以外の指し手では先手が指しやすくなるというのが著者の主張だ。
 この指し方の基本は「角換わり、矢倉等で少しでも得な形を目指す」ものである。「定跡」ではなく「戦略」だという所以がここにある。よって、まず角換わりだとか矢倉の定跡を知っていることが前提となる。
 であるから、本書を読むためにはそれらの知識は必須。初段くらいでは本書は価値が判らないと思う。既存の形より少しでも得をしようという、実にプロ好みの「戦略」なのだ。

 白砂の場合、▲7六歩△8四歩スタートには必ず▲7八金とするので、ある程度参考にはなった。もっとも△3四歩の場合には本書とは違って▲2二角成△同銀▲7七桂とするのだが(笑)。
 そういう「事情」があるので、出版されると同時にすぐ買った。
 一番役に立ったなぁ……と思ったのが中飛車にする変化で、こういう力戦形はただてさえ定跡書が少ないので参考になる。特に本書では穴熊の変化を含めいろんな指し方を紹介しているので、自分なりに消化するのに都合がいい。

 戦略であるが故に、「こっから先は○○の形になります。ただし少し得です」というのが多いので、人によっては中途半端と思うかもしれない。個人的には、本書は道案内であって地図ではないと思っているので、どこに何がありますよと教えてくれるだけでも十分参考になった。
 居飛車党なら手にとってもいいと思う。
 ただし、既存の定跡書は必須。高段者向けの本だろう。

この本を購入する : → boopleicon → es-books → amazon.com


 島ノート 振り飛車編
著者名島 朗/著

級位者☆☆☆☆
出版社名講談社 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2002.11/1800円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 振り飛車vs居飛車についての研究書。
 定跡書、というと特定の形を指す感じがするので、ここでは敢えて研究書という表現を使いたい。それくらい、王道としての定跡だけでなく、ちょっと変わった戦法など膨大な形についての考察が書かれている。

 まず素直に驚いた。
 これだけの研究を、アマチュアのために惜しげもなく公開してくれたヅラ……じゃなかった著者には敬意を表したい。ホントに凄い。いくつか既出の手もないわけではないが(例えば石田流封じに対抗する343戦法。学生の頃、既に白砂が会報に発表しているくらいメジャーだった)、それを上回るだけの新戦法、新研究がたくさんある。
 基本と発展という具合に分けているのも好感が持てる。
 大体が奇襲の本だと、ここでいう基本の「うまくいった部分」だけ取り上げておしまい、という感じになる。本書は「発展」の項を設けて、細かい枝分かれの変化、その先の実戦解説など、有段者でも満足できるようにきちんとフォローをしている。ここまで懇切丁寧に解説してもらえれば、その手順にも説得力が出ようというものだ。

 手紙で質問をできる、などという新機能(昔、別の本であったらしいが)も話題だが、そんなことよりなによりこの研究量である。本書の魅力はそれに尽きる。
 初心者から有段者県代表クラスまで、というヒキ文句は「下限」に関してはちょっと怪しいが、上が県代表クラスというのは間違いない。自分が有段者だと思ったら即買いだし、後々の棋力向上のことを考えても、5級くらいまでの人なら持っていて損はないと思う。それより下の人は、申し訳ないがもっと他にやることがあるはずだ。
「渾身の、一冊です」と著者が語る通り、正に毛根を削って……あ、いやいや、とにかく渾身の一冊だろう。

 1800円という値段は決して安くないが、内容を考えれば決して高くはない。できることなら皆さんも買ってほしい。売上がよければ、今後のシリーズかも夢ではないと思うから。

この本を購入する : → boopleicon → es-books → amazon.com


 振り飛車ワールド 第1巻
著者名毎日コミュニケーションズ/編

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2003.1/1,300円 4段以上☆☆☆☆
感想

 題名からはどういう本だか判らなかったのだが、手にとってみて、これ以外に名前のつけようがないなと思った(笑)。要するに、振り飛車についてのことが雑多に書いてある本である。
 お堅い定跡書、というよりは、雑誌やムックの感覚で読める本である。藤井前竜王や剣持のインタビューやあじあじ(安食総子女流)のコラム、指定局面戦、講座など、いろいろある。個人的には、一番最後の記事、後手△3一飛の新手に笑った。こういう手もあるんだなぁ。

 既に第2巻の発行が決まっているようで、どんな内容になるか楽しみである。
 とりあえず、目に付いたところから読む、という感じで楽しめると思う。いろいろ入っているので、どの棋力の人に、とは少し言い難い。

(2003.3.16 記)

この本を購入する : → boopleicon → es-books → amazon.com


 ホントに勝てる振り飛車 先崎学式将棋レクチャー&トーク
著者名先崎 学/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名河出書房新社 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2003.1/1,300円 4段以上☆☆
感想

 ホントに勝てるシリーズ第2弾。既に「〜穴熊」が発行予定だそうで、これは初級者にやさしいシリーズ本の誕生かもしれない。
 本書は三間飛車、中飛車、向かい飛車を扱っている。
 どれもよくある形で、かつ既存の定跡書でさんざん語られた部分ではある。しかし、できるだけ初級者に判りやすく書こうというコンセプトで作られているせいか、非常に読みやすくかつ理解しやすい。こういうたとえがいいのかどうか判らないが、同じ道を走っているのに違う景色を見ているような感じがする。一応は有段者の白砂でもそうなので、初段以前の人は立ち読みでもいいから是非一度は読んでみて欲しい。

 定跡書はどうあるべきか、というのは非常に難しい問題だと思う。「羽生の頭脳」はその一つの回答だと思うし、東大将棋本もまた一つの回答だと思う。指しこなす本シリーズもまたそうだろう。
 本シリーズは、それらとはまた別の、非常に魅力ある一つの回答だと思う。

 もちろん、本書を読んだだけでホントに勝てるわけではないのだが(笑)、それでも、ホントに実力がつくことだけは約束できる。

(2003.2.19 記)

この本を購入する : → boopleicon → es-books → amazon.com


 振り飛車ワールド 第二巻
著者名毎日コミュニケーションズ

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2003.3/1,300円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 いかにもごった煮感の強い装丁だが、どうやら直す気はないらしい(笑)。しかし、あとがきで明言するとは強気な……。

 構成は前回と同じような感じで、インタビュー、指定局面対局、コラム的講座などがわらわら入っている。
 今回の目玉はバンカナたんのコラム指定局面対局で、4六銀戦法に対して振り飛車の新手が紹介されている。4六銀戦法は「世紀末四間飛車」「スーパー四間飛車」などから始まって、詰みまで研究されていると言われていたものだが、ここへきて新たな展開を見せている。
 触りだけ紹介すると、従来の定跡では△4六歩と叩いて▲同銀△4九飛となっていたが、ここで4九ではなく3九に打つのが研究の一手。以下いろいろ変化はあるのだが、どうも振り飛車がかなり有力らしい。
 この変化は、それこそ森安ダルマ流の頃からの形で、どうして今まで気づかなかったんだ! というくらい単純な筋である。もちろん、実際は奥底にある変化の中で「やれる」筋が見つかって復活したのだと思うが、それにしても将棋の奥深さを感じる。

 講座の方も相変わらずで、役に立つんだか立たないんだか白砂にはよく判らない(笑)。ただ、流してささっと読めるので、お得な感じはする。インタビューもなかなか味があったが、今度はバンカナたんにインタビューをして、ついでに写真をたくさん載っけてくれると嬉しい(爆)

(2003.5.21 記)

この本を購入する : → boopleicon → es-books → amazon.com


 振り飛車ワールド 第三巻
著者名毎日コミュニケーションズ

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2003.5/1,300円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 すっかりお馴染みとなったシリーズの第3弾。なんでも1の増刷が決まったそうで、嬉しいのが判るがうるせぇぞ(笑)。

 今回はインタビューがカトピンさん(加藤一二三)。
 もともと嫌いな人じゃなかったけど、今回のインタビューはよかった。個人的には、これを読めただけでもこの本を買う価値はあった。棒銀戦法に賭ける想い(笑)、勝負に対しての真摯な姿勢など、ひふみんワールド炸裂である。
「居飛車穴熊にすると藤井流(藤井システムとは言わない(笑))をはじめとする急戦を相手にすることになる。そのまま攻められて負かされて何が楽しいんだ」
 というような台詞はなかなか言えないと思う。それに続けて、
「急戦は自分が攻めていく。それで負かされるのは自分が弱いからで、納得がいく」
「棒銀戦法は悪くない。問題なのは自分の実力だ」
 など、名言の嵐。とにかく一度読んでみて欲しい。
 そして「いい!」と思ったら、ファン投票のつもりで買ってあげて下さい(笑)。

 その他は指定局面対局やらバンカナタン&あじあじのエッセイやらちょっとしたコラム講座や、目次としてはだいぶ固まった感がある。それぞれなかなか面白いので、暇つぶし程度に気軽に読めるのはいいと思う。ただし、指定局面対局は前回ほどのインパクトはなかったなぁ……。

 どうでもいい話だが、編集に携わっている西村詩さん。これ、「ぽえむ」と読むそうだ。白砂が学生の時にその名を馳せていた学生強豪の一人である。将棋に携わる仕事につけるって、なんかいいなぁ……。

(2003.6.4 記)

この本を購入する : → boopleicon → es-books → amazon.com


 振り飛車ワールド 第4巻
著者名毎日コミュニケーションズ/編

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2003.7/1,300円 4段以上☆☆☆☆
感想

 もう4冊目か……と少し驚いてしまった。なかなかの刊行ペースだと思う。「矢倉ワールド」や「横歩取りワールド」を出したとしてそれくらい勢いが続くんかい、と考えると、やっぱり振り飛車というのはアマチュアの人気戦法なんだな。
 今回はインタビューが鈴木大介と加瀬純一、指定局面が棒銀、千葉の講座は5七銀右急戦、その他のエッセイ、講座というラインナップ。

 鈴木大介のインタビューはなかなか面白かった。創元社での定跡解説っぷりそのまんまの人である(笑)。いや、誉めてんのね、これ。これからも頑張ってほしいと思う。
 棒銀の方はそんなにインパクトがなかった。これは本文にも書いてあったが、指定局面の設定自体がちょっとまずかったと思う。新手爆発、という感じではなかった。千葉の講座は相変わらずのクオリティで、安心して読める。バンカナたんは例によって写真が2枚(笑)。

 今後、どういう方向に進むのか(例えば10巻くらい出たとして、なんかその先が続かなそう……)気になるが、そんな先のことは置いといて、十分に楽しめると思う。
 正直、本にするような話かなぁ……と、いい意味でも悪い意味でも思うんだけど。

(2003.8.25 記)

この本を購入する : → boopleicon → es-books → amazon.com


 振り飛車ワールド 第5巻
著者名毎日コミュニケーションズ/編

級位者 
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段 
発行年月/価格2003.9/1,300円 4段以上 
感想

 すっかりおなじみになったシリーズ第5弾。
 インタビューが大内ってどーなのよ?(後々のために書いときます。このあと、なんだか殴打事件とかあって話題になりました) って気もするんだけど(笑)。

 ガチンコ勝負は右▲4六銀。かなり薄い形なのだが、それを補うスピードがあるので振り飛車党にとってはうるさい形だ。名人戦などでも出た形だが、その辺は素通り。
 今回は、なかなか見ごたえがあったと思う。

 また、今回から「符号で見る振り飛車」企画が始まった。例えば6五であるとか、その「升目」にスポットを当て、手筋を紹介するというものだ。
 ……続くのか、これ?

 千葉の講座は相変わらずだし、バンカナたんの写真も相変わらず2枚だし(笑)、その辺は変わっていない。

 巻末のおまけのようなページ(定跡信ずべし、信ずべからず)が、今回は大山特集だった。
 一言でいうとネタ切れだと思うのだが(<をい)、なかなか面白かった。

(2003.11.4 記)

この本を購入する : → boople → es-books → amazon.com


 加藤流振り飛車撃破
著者名加藤 一二三/著

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2003.9/1,300円 4段以上☆☆☆
感想

「棒銀の加藤」が何十年ぶりか(だと思う)に著した棒銀本。対振り飛車の棒銀について、詳細な解説が加えられている。
『加藤流振り飛車撃破』という題名がついていながら何故か対中飛車3八飛戦法が載っているのだが(笑)、これは加藤先生の誠実な人柄によるものだと考えてほしい。棒銀と3八飛戦法を覚えればどんな振り飛車が相手でも怖くないぞという著者のメッセージなのだ。

 本書のなにが凄いって、間違いなく著者自身が書いているということだ。
 なんでって、

読めば判る(笑)

 あれは加藤先生以外には書けません
 その文体はもとより、随所に散りばめられている「加藤哲学」は、これはもう著者独特のものだろう。これがゴーストだったらそれはそれで尊敬する。

 カトピンファンの方は、絶対に買うこと(笑)。
 そうでない人は、とりあえず「まえがき」と「あとがき」だけでも読んでみてほしい。
 そのブッ飛び感についていける人は、買っても損はないと断言する。

(2003.10.1 記)

この本を購入する : → boople → es-books → amazon.com


 振り飛車ワールド 6
著者名毎日コミュニケーションズ

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2003.11/1,300円 4段以上☆☆☆☆
感想

 もう6冊めか……。すっかりお馴染みになったなぁ。

 今回は全体的に内容は盛りだくさん。
 インタビューが谷川と櫛田。あ、太文字は普通逆か(笑)。まぁでも、ある意味正しい強調かも。もうインタビューする人がいないのかなぁ。
 指定局面対局はミレニアム。初の持久戦ということで、なかなか面白かった。最新の攻防、というわけではないが、振り飛車側がどう指せばいいか、といった指針のようなものがなんとなく判る。
 あとのコラム&エッセイはいつもの布陣。
 鈴木大介の講座は石田流vs棒金で、久しぶりに役に立つ講座を書いたなをい、って感じ。正直、升田式の解説ってどーなん? と思ってたので(笑)。石川の符号講座は飛車特集。ちょっとむりがないかこれ。
 千葉の講座は最新藤井システムの攻防。相変わらずの濃い内容だ。そのほか、ミレニアム退治の手筋集もあったりして、何度も言うがかなり「お得感」のある一冊となった。

 ……最後に。
 これは被害妄想、というか加害妄想なのかもしれないんだけど、一つ謝っておきたい。

バンカナの写真、

一枚になってました。

(2003.12.24 記)

この本を購入する : → boople → es-books → amazon.com


 ’04 振り飛車ワールド 1
著者名毎日コミュニケーションズ/編

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2004.1/1,300円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 2004年版、ということで、表紙もサルに変えて一新したこのシリーズ。つーか、この表示は続ける気なのね……。

 内容はほとんど変わっていなくて、インタビューとか講座とか、読み応えは相変わらずだ。
 唯一変わったのは指定局面対局で、今までは3つの局面を2局ずつだったものを、2つの局面を2局ずつに変更した。その代わり、テーマとは別に、最近のタイトル戦などから興味深い局面をピックアップし、それを2局戦うことにした。要するにテーマ図が2つになったような形で、そのうち一つは流行を追うようにしよう、ということなのだろう。研究と流行の両方が味わえるので、この形式は「お得感」があっていいと思う。

 他の部分をざあっと見ていくと、千葉の講座は相変わらずだし、インタビューも面白かった。鈴木大介の講座は石田流vs棒金で、『島ノート』とは若干違う切り口で解説されている。これは石田流党には必見だろう。最後の「定跡信ずべし、信ずべからず」は裏定跡集で、これは久々のヒットという感じ。こういうのをアマチュアは待ってんのよ(笑)。
 あと、バンカナたんの文章は、いつもながら顔とマッチしなくて面白い。もう少しいろんな本を読んだりして語彙や表現力が増えたら、もっといろいろなものが書けると思う。あじあじと比べちゃうのは両方にとって失礼かもしんないけど、バンカナたんの方に将来性を感じた。

 新シリーズ第1弾ということもあって、いつも以上に気合が入っている感じがする。
 細く長くでいいから火を絶やさずにいて欲しいと思っているので、焦らずゆっくり頑張って欲しい。

(2004.2.10 記)

この本を購入する : → boople → es-books → amazon.com


 最強力戦振り飛車マニュアル
著者名鈴木 大介/著

級位者☆☆☆☆☆
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2004.2/1,500円 4段以上☆☆
感想

 アマチュア振り飛車党の「教祖」となった感がある鈴木大介の力戦振り飛車解説本。力戦、と銘打ってはいるが、例えば中飛車編は『新ゴキゲン中飛車』だったり、向かい飛車は『島ノート』の鈴木大介新手だったりと、どこかで紹介している形も多い。

 鈴木大介ということで、まぁいつもの調子だ。読んでいて気持ちがいいし、とにかく振り飛車勝ちの変化が多いので、級位者くらいの人が読むと必勝戦法のように見えるだろう(笑)。騙されてはいけない、と言うのは簡単だが、級位者同士の対戦では相手が最善手を指してくる保証がどこにもないので、それを咎める手がたくさん載っている本書の形式は親切だとも言える。

 もう少し詳しく個々の戦法を解説すると、

  • 中飛車……新ゴキゲン中飛車。こちらから▲2二角成と交換しに行く形。
  • 四間飛車……筋違い角穴熊。▲6七角と引いて振り穴に囲いカウンターを狙う。
  • 三間飛車……居飛車穴熊崩し。『居飛穴なんかコワくない』の改良形
  • 向かい飛車……升田流向かい飛車
 といったところ。  そこそこページ数も多く、読んでいて楽しめる。向かい飛車の項などは『島ノート』の形を更に掘り下げているので、有段者であっても目を通しておいて損はないだろう。立ち読みで十分読める内容だが、気に入ったらレジに持ってってあげて下さい(笑)。

(2004.2.23 記)

この本を購入する : → boople → es-books → amazon.com


 振り飛車破り超急戦ガイド
著者名深浦 康市/著

級位者☆☆☆☆
出版社名日本将棋連盟 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2004.3/1,365円 4段以上☆☆
感想

「振り飛車破り」と名がついているが、全ての振り飛車に対応している本ではない。
 ゴキゲン中飛車▲5八金右の超急戦と、対藤井システムに▲3五歩から▲4六銀と急戦で挑む形。それと、かなり古いが後手三間飛車に対する急戦の解説をしている。
 こうやって文字にすると「随分とかたよった戦法に絞ったなぁ」という気になるが、しかし、これで振り飛車対策はほぼ万全という現実(笑)。今のプロの目が、いかに藤井システムとゴキゲン中飛車に集中しているかが判る。

 本書の特徴は「終盤編」をつけたことです、というのが、本書のウリの一つになっている。
 定跡書で「〜にて先手よし」となっていても、そこから勝ち切れない人もたくさんいる。そこで、定跡書の終わりから実際に勝ちに持っていくまでの考え方や指し方を解説する、というものだ。
 わざと意地悪い言い方をしてしまえば実戦譜をつけただけなのだが(笑)、こういう姿勢は評価していいと思う。高段者は自分で実戦譜を並べて会得するのだろうが、3段くらいまではなかなかそういうことはできない。棋譜の裏側、行間が読めないからだ。こうやって偉そうに言ってる白砂もそんなもん読めないんですけどね(笑)。
 だから、仮に実戦譜に解説をつけただけのシロモノであったとしても、文章にして棋書という形で提供してくれるのはありがたいと思う。

 本当は級位者にも読んで欲しいと思うが、さすがに採り上げた戦法が難しすぎる。強くは薦められない。そのため、☆1つ少なくしている。
 また、本書の内容は東大将棋シリーズとかなりかぶる部分があるので、有段者はそちらを読んだ方がよりいいと思う。そのため、かなり評価を落としている。

(2004.4.5 記)

この本を購入する : → boople → es-books → amazon.com


 振り飛車ワールド ’04第2巻
著者名毎日コミュニケーションズ/編

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2004.3/1,365円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 内容はこんな感じ。

  • インタビューは中原と中田功
  • 指定局面対局は居飛車穴熊vs藤井システム、▲3五歩からの急戦と藤井システムからの急戦
  • 石田流講座はvs左美濃
  • 千葉の講座は右4六銀戦法
  • その他いろいろ
 個人的には、中田功のインタビュー部分だけでもこの本は買い。戦術的なものも人間的なものも、どちらの部分も読んでいて楽しめた。
 指定局面対局は、四間飛車道場の15巻とほぼ同じ形。一応、最新の研究ということで、有段者は読んでおいて損はないだろう。しかし、この急戦が成立しているようなら、藤井システムはやばいんじゃないのか……? 千葉の講座も急戦だったし、もはや対穴熊だけを考えていればいい時代は終わったのかなぁ。

 ここのところ、本シリーズの対象棋力が上を向いてきた気がする。今まではもう少し全方位的だったように思うのだが、気のせいだろうか。

(2004.4.6 記)

この本を購入する : → boople → es-books → amazon.com


 振り飛車ワールド ’04第3巻
著者名毎日コミュニケーションズ/編

級位者☆☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆☆
発行年月/価格2004.5/1,365円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 内容はこんな感じ。

  • インタビューは三浦と真部
  • 指定局面対局は△3二銀型藤井システム、ゴキゲン中飛車▲5八金右、5筋位取り型
  • 石田流講座はvs左美濃
  • 千葉の講座は居飛車穴熊
  • その他いろいろ
 三浦にインタビューってどーよ? と思っていたのだが、冷静に考えてみればミレニアムがあった。忘れてた(爆)。
 指定局面対局は△3二銀型藤井システム。なんでも最近新手が出たそうで、それについて深く掘り下げている。△3五歩なんて手、全然知らなかった。
 久保の自戦記は、盤駒ナシで読むのはキツいと思う。さすがに図面間の手数が長すぎ。別にページに縛られてはいない(……よなぁ?)のだから、もう少しなんとかして欲しかった。

 今回から新しい編集者が配属されたようで、なんだか凄い「前へ前へ」という感じがする(笑)。個人的には別に嫌いではないが(好きでもない。なくても困らない)、これを嫌がる人もいると思う。ギャンブルだったと思うのだが、成功したかどうかは今後のツクリを見れば判ってくるだろう。
 まぁ、今回はバンカナタンの写真だけで満足かな(笑)。

(2004.6.10 記)

この本を購入する : → boople → es-books → amazon.com