奇襲・変態戦法


 奇襲大全
著者名湯川 博士/執筆 森 鶏二/監修

級位者☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
価格980円 4段以上☆☆☆☆
感想

 他に解説のしようがないが、変態戦法ばかりを集めた本である。

 それぞれの戦法には味があるが、残念にことに変化手順の説明に乏しい。カタログとしての機能を優先させたためだろうから仕方がないのだが、実際に載っている戦法を使おうという場合には困るかもしれない。その辺が「伝説」シリーズとの違いである。

 少し話が変わるが、昔脇田が「強豪と対戦する時、一発勝負で奇襲を指すのはよくない」と駒将に書いていた。その文章を読むと随分と私に気を使っているようで、というか私に文句を言われないように色々と予防線を張っている様が読み取れて笑えるが、私も全く同じ意見である。相手が強豪だからこそ、自分が普段指している、自分が一番信頼を置いている戦法に全てを委ねるべきではないだろうか。
 そういう意味で、私はこの本を「ここに載っている将棋を指せ」と薦めるわけではない。むしろ、その対策としてこの本を活用すべきである。そうしてこそカタログ的な本書の構成も生きるというものだろう。

 なお、この本はB6版となって改編されている。内容は薄くなったがおかげでより一層カタログっぽくなっていて、かえってお買い得かもしれない。



 角頭歩戦法
著者名米長 邦雄/著

級位者☆☆☆
出版社名山海堂 初段〜3段☆☆☆☆
価格650円 4段以上☆☆
感想

 米長邦雄著(多分ほんとに書いてはいないと思う)の奇襲戦法シリーズ第1弾。

 ▲7六歩△3四歩▲8六歩という仰天の出だしから、飛車を6筋に廻って軽く捌く戦法である。7七桂戦法と似ている形だが、7七桂戦法は6筋の歩は位と考えるので交換はしない。角頭歩戦法はあくまでも軽い捌きが身上の戦法である。
 とにかく図面が多いのがこのシリーズの特徴で、ほぼ2手ずつ、時には1手ごとに図面が入る。1冊まるごと図面だらけである。これをうざったいと感じるか盤駒なしで読めるのでラクだと考えるかは人それぞれだろうが、棋書を盤駒とともに読んだことのない私には非常に読みやすかった。
 都合のいい指し手に終始する場面もなくはないし、酷い時には実戦譜を1局紹介しただけで「……よって先手よし」となっている場合もあるが、まぁ仕方がないだろう。それよりもコンセプトを伝えることに重点が置かれているので、形を覚えればそれで十分である。

 指してみるのも面白いかもしれないが、所詮は奇襲戦法なので高段者には通用しないと思った方がいい。



 新鬼殺し戦法
著者名米長 邦雄/著

級位者☆☆☆
出版社名山海堂 初段〜3段☆☆☆☆
価格650円 4段以上☆☆
感想

 米長邦雄著の奇襲戦法シリーズ第2弾。

 有名な「鬼殺し戦法」を下敷きにして、早石田を組み込んだような指し方をする。具体的な手順は▲7六歩△8四歩▲7五歩△8五歩▲7七角△3四歩▲7八飛△7七角成▲同桂(!)である。
 なんだか八方破れのような形だが、これが意外と大丈夫だったりする。本書ではこの局面で、

1.△8六歩  2.△4五角  3.△5四角  4.△7六角  5.△6二金

 の5つの指し手を挙げ、その対処法を解説している。
 前著に続き図面も多く読みやすい。また、良くも悪くも綱渡りの指し手が続くんで非常にウソ臭いが(笑)、参考になる攻め筋もあり、初段前後の人には楽しめると思う。
「奇襲戦法」なだけに正しく受けられると一発で不利になってしまうが、面白い指し方ではあると思う。できれば自分なりに吸収して指しこなしてみてほしい。



 奇襲! 将棋ウォーズ
著者名湯川 博士/著

級位者☆☆
出版社名高橋書店 初段〜3段☆☆☆
価格1000円 4段以上☆☆☆
感想

「屋敷伸之の忍者将棋」シリーズの1作。はっきり言って、この本を買うなら『奇襲大全』を買った方がマシである。何しろ、書いたのが両方とも湯川博士である。内容も『大全』の方が実戦的だ。
 それでも、一応は目を通す価値はあるだろう。とにかく奇襲モノに目を通すのが大学将棋では必須だ。自分が使っても星を稼げるし、逆に相手に使われて星を落とすこともない。私を見ればそれは一目瞭然だろう(おいおい……)。

 貶しておいてから誉めるのも変な話だが、この本の良い所は「奇襲戦法」「変態戦法」をきちっと分けているところだ。
 将棋における奇襲戦法とは無理攻めとイコールであり、きっちり受ければ必ず受け切れる。変態戦法はメジャーでないと言うだけで、明確な欠陥があるというわけでない。
 本書では、第1部に奇襲戦法を置き、「奇襲封じテクニック」として対策を載せている。この点は「買い」である。



 超急戦! 殺しのテクニック
著者名横田 稔/著 塚田 泰明/監修

級位者☆☆
出版社名高橋書店 初段〜3段☆☆☆
価格1000円 4段以上☆☆☆
感想

 これも構成としては前2冊とほぼ同じ。対策を書いてあるところも全く同じだ。なので、若干点数は厳しくなっている。
 しかし、繰り返すが、こういう奇襲モノは一度は読んでおいて損はない。



 B級戦法の達人
著者名週刊将棋/編

級位者☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
価格1200円 4段以上☆☆☆
感想

 これは「奇襲戦法」ではなく「変態戦法」。本書に載っている変態戦法は、決して単純に撃破されてしまうヤワな戦法ではない。
 もちろん、「平美濃返し」や「鳥刺しモドキ」のように「ホンマかいな」という変化のウソくさいものもないわけではないが、「ポンポン桂」や「端美濃囲い」のようにプロの実戦に出てくる戦形も入っている。なかなか侮れないのである。
 一度は読んでみて楽しんで欲しい。

付記
  本書は『B級戦法の達人プラス』という形で再版された。

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 筋違い角と相振り飛車
著者名木屋 太二/著

級位者☆☆☆
出版社名主婦と生活社 初段〜3段☆☆☆☆
価格900円 4段以上☆☆☆☆☆
感想

 この本では筋違い角と相振り飛車の二つの戦形を扱っている。
 筋違い角対策としては、▲3四角に△6四歩と突く形が知られている。以下▲6六歩と四間飛車を目指すと△6五歩▲同歩△6六角でハマるという仕組みである。
 しかし、本戦法では角を7八ではなくなんと1六に引く。その後、相掛りのような形で攻めていく。そうすれば3四に歩がない分後手は困るだろうという考え方だ。

 また、相振り飛車の方は、なんと相振りにもかかわらず▲5九金の中原囲いに組む。▲2八銀▲3八金の形が敵の攻めを厚く受けていて、しかも▲5九金▲6八銀の形が飛車交換になった場合の飛車打ちに強い、というメリットがあると言うのだ。

 これも「ホンマかいな」系か、と思いがちだが、そこそこ実戦的だと思う。
 変化手順が多いのもいい。自分で研究をすれば済むことではあるのだが、やっぱり指針があるに越したことはない。本書なら、とりあえず盤駒を持ち出さなくてもラクに読むことができる。
 自分なりにアレンジして使いこなしてみたい戦形ではある。二、三段クラスでないと指しこなせないかもしれないが、お薦め度は大。



 必殺! かまいたち戦法
著者名鈴木 英春/著

級位者☆☆☆
出版社名三一書房 初段〜3段☆☆☆☆
価格1400円 4段以上☆☆☆☆
感想

 言わずと知れた英春流「かまいたち」の解説書である。駒澤大学将棋愛好会では、確か飯田が昔指していたと記憶している(飯田は私が将棋愛好会を一時離れた時期に入会してきたので,実はよく知らない。情けない先輩である)。
 このシリーズは好評だったらしく、この後も『必殺! 19手定跡』『必殺! 右四間』『英春流将棋問答』と続刊が続々出ている(この他にあと2冊出ている)。それだけ人気があるのだろうか。実際、プロにも英春流で勝ったと聞くし、これは「立派な変態戦法」だろう。

 内容の方も英春流の詳しい説明がされていて悪くはないのだが、定跡講座ではなく実戦譜を使って解説しているというのが珍しい。わざわざ投了まで解説しなくてもとも思うが、逆に「〜にて先手良し」でおしまいと言うのも不親切な気がするので、どちらがいいのかは判らない。個人的にはあまり好きでない形式である。

 また、図面の載せ方も難がある。私としては、図面は棋譜の始まりであり、棋譜の最後は次の図面であってほしいと思う。その方が棋譜を目で追えるからである。本書ではそれが逆になって、棋譜の終わりが図面になっている。これは何とかしてほしかった。もっとも、これについては姉妹書(?)の『メリケン向飛車戦法』でもそうなっているので、出版社である三一書房の方針なのかもしれない。

 もっと言うと、個人的に英春流そのものが好きではないので、なんでこの本を買ったのかがよく判らない。ただ、アマではいまだに指されている戦形ではあるので、自分なりの対抗策を確立させる意味でも読んではおきたいところだ。

 私は絶対この形にはならないので、対抗策を考えたことすらないのだが(笑)。



 超阪田流角命戦法
著者名木屋 太二/著 森内 俊之/監修

級位者☆☆☆
出版社名主婦と生活社 初段〜3段☆☆☆☆
価格950円 4段以上☆☆☆☆
感想

『筋違い角と相振り飛車』の著者が、再び変態戦法を紹介してくれた。今度は阪田流の変形バージョン。というか、阪田流に見せかけた戦法である。
 序盤の2二飛3三金型(阪田流は後手用の戦法)から、△4四歩△4二銀△4三銀△3三桂として△3二金と引く。金を上がったり下がったりしているので手損はしているが、この綺麗な形を作ってしまえば優勢という大局観である。この後、後手番にもかかわらず先手の飛車めがけて攻めまくる。決まれば実に痛快な戦法だ。

 こちらの目論見を外された場合についてのフォローもある程度されている。単純な奇襲ではないので有段者の知識が必要だが、指しこなせれば面白いだろう。



 居飛車奇襲戦法
著者名井上慶太/著

級位者☆☆☆
出版社名 創元社 初段〜3段☆☆☆☆
価格 1,200円 4段以上☆☆☆
感想

 奇襲、というよりはなんだか「定跡外伝」に近い内容で、有段者からすると有名な指し方が多い。それでも、初めて見る人にとってはなかなか面白い手順だと思う。

 個人的な話になるが、本書で紹介されている偽装棒銀(2六飛の形から銀が出て行く戦法)については、少し形は違うが後輩の塚本と少し研究したことがある。なかなかに優秀な戦法だと思われるが、実際に指すのは「勇気」がいるのではないだろうか(笑)。
 また、先手▲6五角戦法は有名なハメ手で、端歩を突いていることにより横歩取り△4五角戦法をより強力にできるというものである。ただ、これは大元の横歩取りの変化を知らないと飛び込めないので、初段くらいではおそらく指しこなせない。

 創元社らしい「変化をなるべく書かない」装丁の中、うまく工夫していると思う。同社の本の中では、どちらかというと上のレベル向けに書かれた本だろう。

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 振り飛車奇襲戦法 1
著者名小林 健二/著

級位者☆☆☆
出版社名 創元社 初段〜3段☆☆☆
価格 1,200円 4段以上
感想

 著者が小林健二というだけでいやーな予感がしたのだが(笑)、それが当たっちゃうから厭になる(爆)。
 石田流、ヒラメ、力戦中飛車、立石流という、まぁありがちな変態戦法を紹介している。変化の底もそんなに深くない。というか浅い。これどっかで見たぞ、ってことしか書いていない。

 ……頼むよホントに……。

 まぁ、変態戦法をおなかいっぱい語れるようなプロがいるとは思えないけど(笑)、それにしても、なんかやっつけ仕事感が漂っていて厭だ。大体、これらの戦法は過去さんざん語られている筈。それを、既存の変化をなぞるだけでただ出すというのはよく判らない。これはもう著者がどうこうではなくて、本を作る姿勢の問題かもしれない。
 まぁ、もともと創元社の本にそこまで期待はしていないんだけど。あくまでも入門狙いの本づくりを心がけている感じがするので。それにしてもさみしい作りだ。
 白砂は図書館で読んだのだが、30分くらいで読めた。その程度の内容である。買うことはない。

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 振り飛車奇襲戦法 2
著者名小林 健二/著

級位者☆☆☆
出版社名創元社 初段〜3段☆☆☆
発行年月/価格2002.7/1200円 4段以上☆☆
感想

 内容としては、坂田流、袖飛車穴熊、相振り飛車での代表的なうっかり手筋を扱っている。ただし、創元社であり、かつ著者が小林健二である。多くを期待しない方がいい(<をい)。実際、「消えた戦法の謎」や「奇襲大全」の域を出ていない。
 ただ、考えてみると「消えた戦法の謎」も「奇襲大全」も絶版である(「奇襲大全」は平成版が出たけど、果たして手に入るものかどうか……)。それを考えると、本書の存在意義も出てくるかもしれない。

 この欄では正直がモットーなので言ってしまうと、白砂は本書を図書館で借りたのだが、それで十分だと思った。それくらい底が浅い。もちろん、白砂が上記2冊の本を読んでいたから……というのが前提としてあるのだが、それにしてもちょっと。もう少しオリジナリティーを出してもいいと思う。
 高段者にとっては常識的な話だろうから、一度目を通せばいいと思われる。逆に、阪田流? なに? という人だったら買い。袖飛車穴熊も指してみるとそこそこ面白いし、見てみても損はない。

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 武市流力戦筋違い角の極意
著者名武市 三郎/著

級位者☆☆☆
出版社名毎日コミュニケーションズ 初段〜3段☆☆☆☆
発行年月/価格2003.5/1,300円 4段以上☆☆☆☆
感想

 感想、ね。感想だよ。

文章がヘタすぎ

 ホントに悪いと思う。ある意味、ゴーストを使っていない証明かもしれない。
 それにしても酷い。
 とにかく一度読んでみてくれ、としか言えない。久々に「読みにくい文章」に出会った。

 ただ、ひとつ気になることがあって、実は個々のフレーズについては自分でもよく使っているのだ(笑)。人のことをこんだけ言っといて、他人から見ると自分の文章もそう見えるんじゃなかろうか……と心配してしまった。

 内容はというと筋違い角で(<をい)、基本的には振り飛車型を扱っている。
 角交換していきなり▲4五角として、あとは四間飛車に振って▲6七角から捌いていく感じとなる。
 もう少し変化を多くしてくれると、もっと良かったと思う。
 例えば、▲4五角△6二銀▲3四角△3二金▲6六歩に△6四歩と突く手がある。▲8八銀ならいきなり△6五歩と突いて▲同歩△6六角、という狙いを持った手で、△6四歩には▲6八飛と備える一手となる。ここまでは本書にも書いてある。
 しかし、同じ筋違い角を扱っている『森内優駿流 筋違い角と相振り飛車』には、ここから後手が右四間にする狙いが示されていた。「アマ強豪間ではこの対策が浸透しており……」みたいな記述もあったので、有力な対策の一つだと思う。ところが、本書ではこの形は出てこない(と思う。一応買って読んだ)。

 数年前の本に負けてどーするよ武市さんよぉ。

 冗談はさておき、読みづらく変化の底も浅い気がするが、筋違い角の狙い筋と戦い方はきちんと示されている。なので、筋違い角で一発狙ってやろうと思っている人、やられて困っている人は一度読んでみるのもいいかもしれない。

(2003.6.4 記)

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 パワーアップ戦法塾
著者名豊川 孝弘/著

級位者
出版社名日本放送出版協会 初段〜3段
発行年月/価格2004.3/1,000円 4段以上
感想

 昔NHK将棋講座で講師を勤めていた著者が、その内容をまとめ、さらに新しい変態戦法も加えて書き下ろした本。

 ……というと聞こえはいいが、一つ一つの戦法について深く突っ込んで書いているわけではないので、級位者くらいの人がかじって使うとかえって手痛い目に遭いそうだ。『奇襲大全』と同じか、むしろやや少ない感じの解説量か。
 逆に、有段者だと知っている形がほとんどだろうから、新しい興味はそんなにない。冷静に考えると、どの層が読んで役立つのかという話になりそうだ(笑)。
 もっとも、形を見る分には面白いので、パラパラと読む分にはいいだろう。

 細かいことを言うと、なんか活字が太くて読みにくい。図面の入り方も少し違和感を感じる。
 個人的には、内容うんぬんより編集の部分で評価が下がった本。

(2004.3.27 記)

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