第17回世界コンピュータ将棋選手権出場記
■はじまりから直前まで プログラムの話
白砂のプログラミング経歴はこっちに簡単に書いてあるが、結論だけを簡単に言うとBASICとCOBOLとCをかじった程度である。それで将棋プログラムを作ろう、選手権に出よう、というのだからいい度胸してると自分でも思うが(笑)、とにかく、やると決めた以上はなんとかちゃんと動くものを作らないといけない。
実際に開発を始めたのは年が明けてからだった。
遅いといえば遅いが、れさぴょんを使用することは最初から決めていたので、それをベースにすればかなり開発はラクになるだろうという目算はあった。
開発環境としては、白砂はBCB6は持っているのだが、逆にれさぴょんをどうやってBCBで開発していくのか使い方が判らなかった(こういうのを「宝の持ち腐れ」というorz)ので、BCCを使うことにした。BCC Developerをダウンロードし、setbccでパス設定を……と、入門書に書いてあるような手順を踏んで開発環境を整えた。
とりあえず、れさぴょんがコンパイルできるかどうか試そう、ということで、関連ソースを読み込んでプロジェクトを作り、コンパイルしてみた。
assertion failed: config, file d:\ilink\import.cpp, line 311
abnormal program termination
** error 1 ** deleting debug\6-1.exe
うぅ……(泣)。
ぐぐってみると、どうも相当根っこが深い(内部的なエラーらしい)ようだ。そんなのどうこうできるわけもないし、おいおい開始1分で開発断念かよ……(泣)。
ところが。
れさぴょんの別の話がどっか(確か昔の将棋プログラムスレ)で上がっていて、それによると「-v0 -vdオプションをつけると正しく動く」ということだった。
あれ待てよ。俺、コンパイラオプションなんて指定したっけ?(<をい)
というか、そもそもBCCDevでのオプションの指定方法が判ってなかったよ……orz。
調べてみると「プロジェクト」→「プロジェクト設定」でさまざまなオプションが指定できるらしい。すっごい具体的に言うと、プロジェクト設定の「オプション3」の「その他オプション」に書くと指定ができる。sikou.dllを作るつもりなので、/def:"sikou.def"もここで指定。これでコンパイルすると……
作ったはずのsikou.dllがないよぅ……orz
これは単なる勘違いだった。
BCCDevは、プロジェクトを作るとその中にdebugというフォルダを作る。そのフォルダ内にsikou.dllはできていた。
……そんなこんなで、ようやく開発が始まった(<をい(笑))。
結論から先に書いておくと、かめぴょんでは、れさぴょんをベースに以下の修正を行った。
- ソースの整理
- 具体的に言うと、kyokumenクラス、sikouクラスを独立したソースにした。
- 戦形の追加
- 7七桂戦法と3二金戦法を戦形に追加。
- 王手生成ルーチンの見直し
- 王手可能な手を最初から用意して、それらの手が指せるかどうかを判定する方法に変更。
- 勝手読み定跡を追加
- 7七桂戦法について、こちらの指し手だけを列挙した定跡ファイル(テキストだけど)を用意し、まだ指していなければその手を指す、という方法。ハマると綺麗に陣形を作ってくれる。
- 残り時間に応じた探索深さの設定
- 基本的に7手読み、時間切迫の場合は5手→3手→1手と減っていく方式にした。
本当は探索深さではなく探索時間で区切りたかったのだが、方法が思いつかなかったので断念した。
- 手筋をいくつか追加
- れさぴょんでは「焦点の歩」が手筋として登録されているが、さすがに少なすぎる。
飛車先の歩をきちんと受けるようにする、角を打たれるようなスキを作る手は指さない、玉の周りに利きがある場合に持駒の金銀を打ってそれを軽減する、という手筋を追加した。
その他、途中局面からでも開始できるようにしたりとか、ログを吐くときにyyyymmdd-hhmmss.txtで吐くとか、こまごまとしたことはやっている。
ただ、逆に言うとやったのはこれだけ。ほぼ「れさぴょんのまま」と言っても過言ではない。
これで選手権に出ようというのだから、ツラの皮が厚いよなぁ……。
上記の説明だけでは判りづらいかもしれないので、いくつか補足を。
まず「勝手読み定跡」。これはかなり昔から考えていた機能だった。人間が指すときも、形をなんとなく覚えていてそれに向かって指していく。それを実現したかった。形、ではコーディングが難しいので、とりあえず手順で覚えさせよう、というのが狙いである。
指し手だけを列挙した勝手読み定跡ファイルを用意し、そこに登録された指し手を順番に指していく。単純に順番に指していくのではなく、そのまま指すと悪くなる局面、例えば第1図で△8八角と指された場合、▲7八金は△9九角成で悪くなるので▲7八金は指さない。
ただし、△8六角という手にも▲7八金と指す(笑)。
こちらがよくなる可能性があってとしても、それを神経質に追うのはまだ無理、そのチャンスは見送っても腹は立たない、という考え方である。もちろん、浅く探索させて得な手があればそちらを指す、という方法も考えたのだが、今回は見送った。
この勝手読み定跡が成功した顕著な例がオープン戦の対戦である。
第2図が途中局面。7七桂戦法は相手の陣形、手順が微妙に変わるケースが多いため、単純な定跡ファイルだけでここまでの形を作らせることは難しい。ここまで組んでくれれば、白砂なら先手必勝である(笑)。
しかも第2図から△8四飛に機敏に▲4一角と打ち込み、△4二金引▲6三角成△9五歩▲7四歩△同飛▲同飛△同歩▲8一馬と捌いたのを見れば「かめぴょん強いですね/まったりゆうちゃんと互角ですね/これは二次予選に行くレベルかも……(小宮日記)」と誤解してしまうのも無理はない。まぁ、そのあと▲8三桂などと打ってしっかりと実力を発揮しているのだが(笑)。
最初にこの勝手読み定跡を導入したときには合法手チェックをしていなかった。そのため、オープン戦の2戦目でいきなりバグが爆発してしまった。
第3図がその局面。
この局面で、▲6八飛と指してしまい、合法手チェックでハネられてそのまま止まってしまった。
どういうことかというと、発端は後手のspearが△7四角と打った局面。勝手読み定跡の次の指し手は▲6八飛なのだが、それは△4七角成とされて先手が不利になる。そこで▲6八飛を指さずに通常モードで考えて▲3八銀と指した。そこから後手が△1四歩としたのが第3図なのだが、ここで勝手読み定跡は、指そうとして指せなかった▲6八飛を指そうとする。
しかし。
プログラム内部では念のための確認として▲6八飛と指した局面を浅く探索するのだが、この「指したことにして」というのが曲者だった。一手進める関数は、合法か否かを考えずに単純に一手を進める、という機能しか持っていない。そのため、違法な指し手であってもルール通りに指したことにして先に進んでしまうのだ。
その結果、不利になる局面ではない(第3図で2八飛が6八にワープできたら、そりゃいい形だろうよ……(泣))ため▲6八飛を候補手としてそのまま返してしまい、それは違法手なので指し手として認められず、でも思考ルーチンは指したものと考えているのでのんきに相手の指し手を待っていて……という状態で止まってしまった。
解決方法は簡単で、その指し手が合法かどうかのチェックを入れるだけでいい。そのチェックを入れてからはきちんと動作するようになった。
次に「王手生成」について。
れさぴょんでは、「可能な指し手を列挙し局面を生成し、王手がかかっていれば王手」という王手生成法をとっている。しかしこれだと王手でない手も局面を生成するので効率が悪すぎる。そこで、王手が可能な指し手というものを用意しておいて、それが合法手かどうかという判定をするという方式に変更した。
通常の金銀桂歩の王手は列挙するだけなので楽だったのだが、開き王手の判定が非常に面倒だった。
例えば、こんなミスをしていた。
第4図。
この局面で△1四歩を王手と認識していたorz。
開き王手の定義(のひとつ)を「玉から利きを調べていって最初に自分の駒aがあり、さらにその先に飛駒bがある場合、駒aが動くことで駒bによる開き王手がかかる」としていたのだが、当然ながら駒aが駒bの利きの方向に動く場合には王手にならない。第4図の△1四歩がまさにこのケースである。
「玉から利きをたどっていって最初に自分の駒aがあり、さらにその先に飛駒bがある場合、駒aが現在たどっている利きの方向(正逆含む)以外に動くことで駒bによる開き王手がかかる」という風に定義すればいいのだが、れさぴょんの中ではいろいろとルーチンを呼んでいて、正しく判定しようとすると、駒aの利きの方向をもう一つ追加しなければならなりそうなのだ。
さてどうしよう……と思ってれさぴょんのソースを眺めていると、
void kyokumen::AddMove(int SorE,int &teNum,Te *teTop,int from,int diff,int pin,int Rpin)
{
if (Rpin==diff||Rpin==-diff) {
return;
}
……
……あるじゃん。
AddMoveを呼ぶとき、Rpinを設定することで「現在たどっている利きの方向(正逆含む)以外に」の部分を判定してくれるわけだ。
これを追加したところ、きちんと王手生成をするようになった。
毎日がこんな調子で、苦闘の連続だった。
あれ、forって真判定だっけ偽判定だっけ、と言えば入門書をめくり、whileはどっちだったっけと思えばれさぴょん内を検索してそこからコピーして使った(笑)。
まぁ、単純にスキルがないだけなんだけどねorz。
このあたりの話は書き出すとキリがないし、そもそもあまりにも恥じさらしにすぎるのでこの辺でやめておこう(泣)。
■はじまりから直前まで プログラムの以外の話
選手権に出ることを決めたあと、実際のかずさアークへの行き方や宿泊先についても検討を進めた。
白砂一人だけだったら極貧行程の極貧旅館でもなんの問題もないのだが(学生時代は18きっぷでいろいろ行ってた)、今回は妻が一緒に行きたいと言っていたので、まぁゴールデンウィークでもあるし旅行のつもりでのんびりと行こうかなぁ……と。
で、こういうことは経験者に聞いちゃえ、ということで、うさぴょんの育ての親さんにメールを出して根掘り葉掘り聞いてみた(急にメール送ってごめんね)。その結果、
- 隣接のホテルは高いけど、隣接してるからやっぱ便利だしホテルだから綺麗
- 食事はホテルなんでバカ高い
- バスは東京からだとホテル前まで行く。横浜川崎だと木更津まで
ということだった。
これを全面的に信頼して、宿泊先は隣接ホテルのオークラアカデミアパークホテルに決定した。おおざっぱなタイムスケジュールとしては、前日の夜に中央林間−大手町経由で東京まで行き、そこからバスでホテル前まで。滞在は3泊として、一応最後に決勝戦の様子だけ見て、昼頃に帰宅。こんな感じである。
ホテルはCSAでも提供してくれていたが、ツインで\13,500と少々高めだった。しかし、ネット予約をするとツインが\9,800になるという。3ヶ月前の1日から予約が可能になる(今月来月再来月の3か月分のカレンダーから予約ができ、毎月1日にカレンダーが書き替わる)ので、3月1日を待ってその日の夜に予約を入れた。
バスは一ヶ月前から予約が可能だったので、電話で予約。そのときダメモトで訊いてみたところ、一ヶ月以上前ではあるが帰りの分の予約も同時にできるということだった。その場で往復分の予約を完了させた。
また、考えなければいけないのが荷物。
まず問題となるのが、参加のためのPCだ。
化物みたいなデカいPCを持っていく人とか扇風機で冷やすだとか何台も持っていってホテルで対戦調整だとかいろいろ聞いたことがある。車であればそういう無茶もできるのだろうが、白砂は車を持っていないので抱えて持っていくか宅配かということになる。持って行くのは重いし配送は破損が心配だ。
そこで、Bonanzaに習って、ノートPCで参加することにした。
Core2Duoのノートであればそこそこの性能は出せるし、15インチ程度のものであればメモリ2G搭載というのは無理なスペックではない。どうせ決勝へ行くほどの強いプログラムでもないし(笑)、ある程度の速度が出ればいいやという考えだった。
価格と性能を考えて、CPUをCore2DuoのT7200に決め打ち。なんでもT7000シリーズはL2キャッシュが4MBあるそうなので、ちょっとは速いかなと(笑)。で、それを積んであるノートで価格の安いもの、を物色した。
見つかったのがDell。Inspiron 6400という機種である。15.4インチで2.8kg。これならなんとか運べないこともない。
しばらく悩んでいたのだが、クーポンで安くなった時期があったので、それに乗っかった形で購入した。
実を言うと、当初は並列化をしようか……なんてことも考えて『マルチコアCPUのための並列プログラミング』なんて本も読んだりしていたのだが、前述の通りそれ以前のレベルの問題が頻発してそれどころではなかった。2コアの意味は全くなくなったが、それでも速度的にはかなり速いはずなので、その点はまぁよしとしよう。少なくとも現在白砂がデスクトップで使っているPentium4 3.2Gなんかよりは全然違うはずだ(笑)。
せっかくなので、マウスとLANケーブルも購入した。
とにかく持ち運びの便だけを考えて、マウスはUSB充電式ワイヤレスマウスを、LANケーブルは自動巻取タイプの携帯タイプのものを購入した。
うん。いわゆる衝動買いってやつかな(爆)。
しかし、最近のこういう製品は随分と進化していて驚いた。しかも安いし。使えるから使い続けるっていうのもそれはそれで大事なんだろうけど、数年おきくらいに見直して入れ替えるというのも必要かもしれないなぁ。まあ、そういうところで大事に使い続けてしまうのが自作ヲタの性なんだよなぁ……(笑)。
ついで、といってはなんだが、鞄も新調した。
車がついてゴロゴロ引いていくタイプのものを夫婦揃って購入。今までこういうタイプの鞄を使ったことがなかったので、とても新鮮だった。
当日は、このゴロゴロ鞄にリュックという予定だった。リュックにはPCとマウス、LANケーブルといった選手権関係のものを、鞄にはその他のものと、あと入りきらなかった妻の荷物を入れていくつもりである。女ってやっぱ大変だよなぁいろいろ。
というわけで、宿も決め、行路も決め、持って行くものもすべて揃った。
あとは5月2日(前日出発なので)を待つだk……。
「二日目ヒマだよね」
え?
「1次予選で負けたら、二日目はヒマだよね」
……そ、そりゃそうだけど……
確かに、もし初日で敗退したばあい、2日目の5月4日はまるまるヒマになる。
白砂は会場で見ていても楽しめるだろうが、将棋を指さずプログラムもあまりしない(一応はできる)妻が見ていてもなんも楽しくないだろう。
と、いうわけで、二日目がヒマになった場合のスケジュールを考えることに(なんで負けるの前提なんだよ……orz)。
やれマザー牧場に行こうだとか、いやここは新丸ビルだろうとか、いろいろな案が出た。ちなみに、白砂は「ねずみーらんど」を蛇蝎のごとく嫌っているので、いかに近くに存在しようともその選択肢はない。
最終的に選択したのが、これ。http://www.guinness.com/ja_jp/rally/(GUINNESSのページ。閲覧にはアクセス国と生年月日の入力が必要です)
昼間っから酒ってどーよ……
■選手権開始直前まで
5月2日は半日だけ休暇を取り、ゆっくりと準備をしてから出発した。
ほぼ予定通りの乗り継ぎで、大手町に到着したのが17:30頃。
バスの出発時間が19:20。時間もあったので夕飯を食べることにした。地下街にいろいろ店があるというのはリサーチしていたのだが逆にたくさんありすぎて決められず(笑)、目についた蕎麦屋に入った。『たけがみ 一轍そば』という店だったが、質量ともに十分に堪能できる店だった。
食後、もう少し時間があるぞということで、せっかくだからホテルでなんかスイーツでも食べようと地下街を練り歩き、『ドゥーカドゥ』という店でロールケーキの詰め合わせを買った。
なんかもう、これから選手権に挑もう、って感じじゃないね(笑)。
かずさアーク行きのバス停には18:45頃に到着した。予約もしているし、これくらい前に着いておけば余裕かな……と思っていたら、
すでに長蛇の列
いや驚いた。こんなに人がいるとは。
しかも、行き先がいろいろあって、それぞれに長い列ができている。
はじめは木更津行きかと思ってそちらに並んでしまったが、隣のおっさんに「かずさアークは4番(一番左)だよ」と教えられ、慌てて列を移動した。安房鴨川なんて関係ないだろと思っていたのだが、よくよく考えてみればかずさアークは途中駅で、終点は安房鴨川駅だった。危ない(笑)。
19:10くらいになったとき、係員(がいた。これにもビックリしたが、仕事ぶりを見ているといないとダメだなやっぱ)が「安房鴨川駅行にご乗車の方で予約券をお持ちの方は、3番にお並びください」とアナウンスをはじめた。この長蛇の列を見ていて、予約してるけどホントに乗れるのかなぁと心配になっていたのだが、ちゃんとこうやって予約優先の措置をとってくれていた。なにしろ電話予約のみで運賃当日支払いだったので、無事に乗車できるまでは心配で仕方がなかった。実際、予約は定員確保というだけのもので、「座席」はすべて自由席である。二人で乗った場合に隣合わせに座れるという保証はないのだ。
今回は30分以上前から並んだので、順番は前から4番目だった。東京は始発ではないので多少座席は埋まっていたが、それでもちゃんと座れることができた。
バスは定刻に出発。疲れのせいもあって、すぐに寝てしまった。
目が覚めると、外は真っ暗。いや、もともと夜だったのだが、街灯もなんもなしの真っ暗闇。
駒澤大学は千葉県富浦にセミナーハウスを持っている。その関係で木更津はよく通ったものだ。しかし、考えてみると夜に通ったことはなかった。こんなになんもないところだったとは……。
少し行くとやっと街灯がちらほらと出てきて、あれよあれよという間に大きな道路に出て、そこからしばらく山を登ったところが目的地のかずさアークである。
乗客の何人が一緒に降りるかと思っていたら、白砂たちだけだった。バスを待っている間、いかにもヲタっぽい感じの青年たちが何人かいて「あれは絶対出場者だ」などと二人で話していたのだが、まったくの冤罪だったらしい。ホント申し訳ない。
バス停は一応オークラアカデミアパークホテルを含む敷地内にあった。しかし、どうもバス停は敷地の端っこにあるようで、降り立っても小さい入口がひとつあるだけでホテルらしさは欠片も感じなかった。
仕方がないので、とりあえずその入口から入ってみた。
中に入ると、目の前に長ーい廊下があって、天井から「ホテルはこちら」みたいな掲示がかかっていた。なるほどこの廊下を渡っていくとホテルにつながるのね……と思って歩いていくと……
いきどまりかよをい
何度も現地に行っている人は知っているだろうが、ホテルに行くためには、入口を入ったらすぐに右に曲がらなければならない。そうすると10mほど先にさらに右に折れ曲がっていて、そこがエレベーターホールになっている。そのエレベーターで3Fに上がると、ホテルに直結する渡り廊下がある。フィットネスクラブのプールなんかが見える長い廊下だ。それを抜けるとホテルのフロント階に着く。ちなみに、入口から入ってすぐ左にあるのがここで紹介されているハヤシライス屋さんである。ついでにどうでもいい話をひとつすると、ブログではハヤシライスが800円ほどとなっているが、今年の5月5日は「オークラアカデミアパークホテル10周年記念」だかで100円で食べられたはずだ。帰りのバスを待っている間、強烈な誘惑が絶えず襲ってきていたので間違いない(笑)。
それはさておき。
なんとかホテルのフロントも探し当てチェックイン完了。ようやく重たい荷物も降ろすことができた。
前述のとおりノートPCはリュックに背負って持ってきていたので、すぐに動作確認。ちゃんと動くことを確認した。壊れていた、なんてことになったら出場そのものがパアである。
ついでにいろいろプログラムをいじろうかとも思ったのだが、出発前に「ホテルに着いてからいじりだすとキリがないからやらない」と決めていたので、心を鬼にして電源を切った。今回の選手権は出場するということそのものに力点を置いていたので、勝ち負けは二の次。とにかく楽しもうと思っていた。
それを具現化、というわけでもないが、まずは疲れを癒すために風呂に入った。旅行として楽しもうということで入浴剤もいろいろ持ってきていた。風呂釜の関係とかいろいろあって、家じゃこういうの使えないんだよね(笑)。この日は、疲れが取れるという効能書きがあった泡風呂にした。
そのあと、妻と二人で酒を呑みに。オーキッドバーというバーがホテルに入っていたので、そこでカクテルを一杯だけ呑んだ。そのとき、軽くつまみにと思っていっしょにナッツのセットを頼んだら、食べ切れないほど山盛りで出てきてビックリした。値段が380円だったので「どーせちょこっとしかないんだろ」とタカをくくっていたのだがとんでもない。結局半分以上残して帰ってきてしまった。1,000円ちょっとで軽食もあるようだし、レストランで夕食を食べるのは高くて……という人は一度行ってみてほしい。白砂たちは結局行かなかったんで、実際にどうなのかはちょっと判らないのだが。
やっぱり疲れていたのだろう。たった一杯雪国を呑んだ(メニューにはなかったが、頼んだら作ってくれた)だけなのにほろ酔いである。
そのまま寝てしまえばよかったのだが、酔って判断力がなくなったのか本心が出てきたのか(笑)、どうもプログラムの方が心配になってきた。かめぴょんには角の打ち込みを防止するルーチンが組み込んである。あるのだが、その挙動がなんとなくおかしいような気が以前からしていたのだ。
出発前から現地でプログラムをいじるのはやめよう、と心に決め、先程心を鬼にして寸前で手を止めたはずだ。はずなのに、結局ノートPCのフタを開けてしまった。
なんやかんやで30分ほどいじっていた気がする。
結局、酔いが回ってきたのでそこで中断。WBSを見て、そのまま眠りについた。
次の日は7:30頃に起きた。
前日、フロントで朝食はホテルの2Fでバイキングがある、と聞かされた。確か素泊まりのはずなのだが、朝からコンビニ弁当というのもなんだし、せっかくだから行ってみようかということで早起きをした(というほど早くはないが)のだ。
確かに、宴会場のようなところがバイキングビュッフェになっていた。あぁなるほど、人も多いし、こういうところで食べるのね……。
「朝食券はお持ちですか?」
……え?
やはり朝食つきではなかったかorz。
いまさら帰るのもなんなので、食べていくことにした。
「お一人様2,200円になります」
……はぁ!?
あの有名な横浜のカフェトスカだって、宿泊客は朝食1,500円だ。ローストポークとクロワッサン目当てに一度行ったことがあるのだが(笑)、かなり豪華なものだった。そして実にうまかった。食べ比べた白砂だから言う。ここの朝食はその半分以下だと思う。
くそぅ、二度と行かんぞ……orz。
夫婦そろって理不尽な怒りを覚えながら(どう考えたって逆恨みだよなぁ……(笑))部屋へ戻ると、白砂は再びノートPCを開け、例のルーチンの調査をはじめた。もうプログラミングしない宣言なんぞはどこかへ飛んでしまっている(笑)。ルーチンそのものに問題はなさそうなのだが、どうも最終的な評価値がおかしくなっているらしい。
しかし、いつまでもいじっていても仕方がない。適当なところで諦めた。最悪、このルーチンを外して勝負すればいいだけのことだ。
会場となったのはかずさアカデミアホールである。
白砂が着いたのは9:00頃。受付で名前を告げると、吊り下げ名札と中紙を渡された。これにプログラム名と参加者名を書くのだ。
プログラム名が「かめぴょん」程度でよかったとこのとき初めて思った。最後まで迷っていた『白砂青松の「今夜もれさぴょんピース♥」』(元ネタはこちら)にしなくて本当によかった(←正真正銘の実話です)。
202会議室は思ったより広かった。リンク先の写真では全体に机があるが、当日は「|=|」の形に並べられていたので、ずいぶんとスカスカな印象が強かった。
かめぴょんははじめ入口近くに座席が用意されていたので、そこに座って準備を始めた。といっても、ノートPCを出し、マウスをつなげてLANを挿しただけ。簡単なものだ。他の人たちを見るとやはりデスクトップ機が多く、しかもすでにセッティングを終えていた。おそらく前日のテスト時から設置していたのだろう。
もさもさとセッティングをしていると、いきなりフラッシュが焚かれた。振り向くと、大会関係者らしき人が写真を撮っている。そしてそのまま何も言わずに去っていった。
こういうのはどうなんだろうか。
これはアンケートでも書いたことなのだが、写真を撮るならせめて一言断ってほしいと思う。全景を写すのに全員に許可を取れとは言わないが(笑)、明らかに個人を撮影している場合は、マナー上からも断りがあってもいいはずだ。仲間意識が強いからか単にそういうことに鈍感なだけなのか、写真を撮って公開するということが個人を晒すという点でどれほど問題なのかわかっていないのだろうか。俺は別に問題ないよという人も多いだろう。しかし、嫌だという人だっているはずだ。そういう人への配慮もしっかりしてほしい(微妙に違う話題だが、正直、「ひろみ郷ショー(笑)」は引いた。ショーそのものも確かにドン引きしたが(笑)、それよりもそれを平然と公開する神経に引いた。まぁ、なんだかんだいって仲良しなんだろうし当人間の問題はないんでいいんじゃないのとも思ってるんだけど)。
ついでに言うと、これもアンケートに書いたのだが、参加に本名が必須な点もどうかと思う。白砂の場合、今まで選手権に参加しなかった理由の一つにそれがある。じゃあなんでルールも変わっていないのに参加したんだという話はおいとくとして、本名を公開しなければならない必要性が理解できない。一昔前ならそれもよかったかもしれない。しかし、もう時代が違うのだ。これだけ個人情報の保護が叫ばれている時代に、HPに暢気に本名を並べている神経が信じられない。
来年から改善されるかどうかはわからないが(というか白砂のいうとおりに変わることが善かどうかもわかんないんだけど)、CSA側の対応に期待したい。
LAN接続テストをしてほしい、というアナウンスがあったのではじめようとしたところ、初出場者が呼ばれた。抽選をするらしい。この番号により、1、2回戦の相手が決まる。
このときばかりは緊張して、事務局さんの方へ。他の初出場の方々も次々集まってきた。
抽選はカード(トランプ)で行う。1〜8までのカードを順番に引いていくというものだ。
前の人から、1枚ずつ順番に引いていく。さて何番だろう。つーか何番を引いたら誰と当たるんだろう。……わかんねーじゃねーか考えてみれば(笑)、えぇい、なんでもいいやとにかく引いてみるか!
「はい、かめぴょんさんは残った3番ですね」
引いてみるか…………引いて…………み…………る……orz(正真正銘の実話です)。
この抽選の後、席替えがあった。
今までの座席は仮のもので、1回戦はなるべく当たるもの同士を隣合わせに座らせるのだという。
席替えの後、さきほどやり残したLAN接続テストをやってみた。
白砂は今回、ユーザインタフェース及び通信にK-Shogiを使用した。CSA将棋よりも画面が綺麗だし、拡張プロトコルにも対応しているのでw-doorなどでのスパーリングがやりやすいためだ。また、Sikou.dllそのものを読み込んでK-shogi思考と対戦させることも簡単にできる。
サーバ192.168.0.1(今回のLAN対戦のサーバアドレス)とポート4081を設定し、ユーザ名にhakusa、パスワードは普段wdoorではyowai_gps-1500-0を入れていたが、今回はそんなの入れないので空欄にして(←気づいてない)、接続。
パスワードを入力してください
え?
だってほら、ふだんはyowai_gps-1500-0だけどさ、まさかここでそんなの入れるわけないし……(←まだ気づいてない)。なんだろう、なんか入れなきゃいけないパスワードとかってあったかな?(←ぜんぜん気づいてない)
ひょっとしたら、ネットワークの設定が間違ってるかもしれない。そう思って、隣にいたデーモン将棋の人に設定を見せてもらった。
やっぱり間違ってない。
CSA将棋で接続してみても、やっぱりつながらない。
これはもう、なんかパスワードがあるんだ。仕方ない。事務局の人に聞こう(←まったく気づいてない)。
「あの、すいません」
「はいなんでしょう?」
「LANテストしたんですけど、うまくつながんないんですよ」
「つながらない!? まずいですね……IPは?」
IPを告げると、すばやくサーバのログをチェックしはじめる。
「なんか設定が違うんでしょうか……パスワード空欄にすると『パスワードを入力してください』とか出るし」
「え?」
「パスワードってなんですかね?」
「パスワードぉ!?」
ログチェックの手を止めて慌てたように別の処理をはじめる事務局の人。ここで鈍感な白砂もやっと気づいた。
コンピュータ将棋選手権参加時に、ユーザ名と一緒にパスワードも届出をしているのだ。
普段使わないものだから、すっかり忘れていた。オープン戦は2ヶ月も前だったし、上に書いたようにwdoorサーバはパスワードに対戦相手ユーザ名入れてたし……。
それさえ思い出せばあとは簡単だ。あ、思い出しましたパスワード、と言いながら急いで席に戻り、届け出たパスワードを入力。
connected
つながったぁ……。
念のためK-Shogiで接続してみると、こちらも接続することができた。事務局にログを確認してもらうと、サーバでもしっかり認識している。
これで、晴れてコンピュータ将棋選手権に出場できることが確定した(<をい)。
初版公開:2007年5月31日
copyright © S.Hakusa