第23回世界コンピュータ将棋選手権出場記

■1回戦 ym将棋vs白砂将棋

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 初戦の相手はym将棋。過去には何度も当たっている相手だが、初戦に当たったのは初めてである。お隣に座っていらしたので、挨拶してから始まった。
 ym将棋の5手目▲3六歩で定跡から離れ、そのあと18手目の△8四飛まで本思考ではない指し手で進んだ。▲3五歩に当然の△同歩ではなく呑気に△5二玉としているのはそのためである。
 1歩損はしたものの、飛車先を交換してから軽快に△8五飛〜△7五飛と歩損を取り返したところでは、公平に見て互角にまで盛り返したと思う。そして第1図の▲3八飛に、白砂将棋の目がキラリと光った(ウソです(笑))。

第1図からの指し手
△3七歩▲同飛△7七飛成▲同銀△1五角▲6八玉△3七角成▲同桂(第2図)

 △3七歩と叩いて飛車を王手飛車のラインに呼んで、飛車を切り飛ばしてから△1五角で間接王手飛車。△3七歩に▲同桂は△3六歩があるので、白砂将棋が選べば必然の展開である。善悪はさておき、低い陣形から攻める姿勢は評価したい。また、第2図では現実的に△3六歩が残っており、△3六歩▲2五桂△3七歩成と進めば白砂将棋が有利と判断していいだろう。
 しかし……。

第2図からの指し手
△2九飛▲1六角△1九飛成▲3三歩成(第3図)

 △2九飛が逸機。そしてym将棋の▲1六角に△1九飛成が決定的な悪手である。
 ▲1六角には△4三銀とか△5一玉として、とにかく角の利きを遮っておくべきだった。▲3三歩成の筋が当然ながら厳しすぎる。例えば△4三銀としていたらまだまだ熱戦が続いていただろう。
 そして第3図。白砂将棋は最後の悪手を指す。

第3図からの指し手
△5一玉▲6一飛まで先手勝ち

 △5一玉が1手詰を無視した悪手である。
 白砂将棋は元がれさぴょんであり、れさぴょんはちゃんと詰ルーチンを持っている。よって単純な1手詰を見逃すはずがない。ログを見ても、ちゃんと自玉の詰は読んでいる。

通常思考に移行
score cp -3649 pv 51王(52) 
score cp -3646 pv 43銀(32) 
score cp -999999 pv 51王(52) 
score cp -3441 pv 43銀(32)  22と(33) 
score cp -999999 pv 51王(52)  22と(33) 
score cp -6086 pv 43銀(32)  43角成(16) 51王(52) 
score cp -4697 pv 43香打   22と(33)  17龍(19) 
score cp -4678 pv 34歩打   22と(33)  17龍(19) 
score cp -999999 pv 51王(52)  61飛打   42王(51)  34角(16) 
score cp -6887 pv 43銀(32)  43角成(16) 51王(52)  22と(33) 
score cp -3377 pv 43香打   22と(33)  17龍(19)  34角打  
score cp -3078 pv 34歩打   22と(33)  14香打   34角(16) 
score cp -3072 pv 34香打   22と(33)  33銀(32)  21と(22) 
score cp -999999 pv 51王(52)  61飛打   42王(51)  61飛打   17龍(19) 
score cp -4420 pv 43香打   22と(33)  36歩打   32と(22)  32金(41) 
score cp -999999 pv 51王(52)  61飛打   42王(51)  28銀(39)  52金(41)  33歩成(34)
score cp -3466 pv 43香打   22と(33)  17龍(19)  25角(16)  24歩(23)  36角(25) 
score cp -999999 pv 51王(52)  61飛打   42王(51)  28銀(39)  17龍(19)  33歩成(34) 33角(22) 
info time 30014 nodes 9251488 score cp -3466 pv 51王(52)  61飛打   42王(51)  28銀(39)  17龍(19)  33歩成(34) 33角(22)

 △5一玉という手を詰だと読んでいるのに、読んだ上で無視して別の手を読んでしまっていて、それを時間制限(白砂将棋は通常思考を1手30秒に設定していた)いっぱいまで続けて、たまたまその時の最善手が△5一玉だったのでその手を指してしまっている。詰みだと判っているのにその先の局面を「その時の最善手が」もクソもないのだが、詰なんだからそこで終了、とか、その辺りの判定がちゃんとできていないようだった。
 ym将棋の中の人も「普通、反復進化の最善手を最初に読みますよね。だとすると普通は(詰の局面は)選択しないはずなんですけどねえ……」と不思議がってました。不出来な将棋を指してしまって申し訳ありません(泣)。

 白砂将棋、事前準備の確からしさの通りの不安なスタートである。

■2回戦 白砂将棋vsGA将!!!!!!

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 2回戦の相手はGA将!!!!!!。前回も当たって吹っ飛ばされました。
 白砂将棋の先手だったので7七桂戦法へ。GA将!!!!!!が選択したのは△5四角型だった。しかもbonanzaチックに角が死んでいないにもかかわらずいきなり角を切ってきた。
 第4図までであれば、公平に見て白砂将棋が十分に将棋に見える。GA将!!!!!!が手損を重ねて玉の囲いもままならない(金銀が回りに4枚いるから居玉が一番固いと思っているかもしれないが)のに対し、白砂将棋は傲慢にも7八の金を5八まで持ってきて万全の体制だ。このあとはいったん▲8九飛と飛車先交換を受けておき、あとは▲7六銀〜▲8五銀とかでボチボチと攻めればいい。桂頭は不安ではあるが、一発▲3七角と牽制ができるので、まぁなんとかなるだろう(←7七桂戦法を指す時にはこういう「いい意味でのいい加減さ」が必要なのだ(笑))。
 しかし、白砂将棋に「いったん▲8九飛と飛車先交換を受けておき」なんていう高度なことができるはずもなく、▲5五歩とのんびり突いて以下龍を作られてしまった。

 その後も水平線効果っぽい悪手が続出し、ずるずると駒損を重ねてそのまま押し切られてしまった。
 これで2連敗。内容も前局より悪くなっており、今後が心配な展開だ。

■3回戦 白砂将棋vsなり金将棋

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 3回戦の相手はなり金将棋。何度か当たっていますが、負け越しています。というか勝ったのは1回だけだったかな……orz。

 先手を取ったのだが、△8四歩△8五歩スタートだったため7七桂戦法からは外れてしまった。それでもそのまま四間飛車に構える。実はちょっと変更したところで、昨年度まではここで中飛車に構えていた。コンピュータ将棋ではなく将棋の話になるが、こちらのほうが堅実だと思う。
 本局はなり金将棋が△4五桂△1三角と一点狙いで暴発したため、なんなく駒得に成功した。第5図はなり金将棋が精一杯暴れてきたところだが、ここで▲3八歩とか▲2八玉とか、しっかり受けていれば白砂将棋が優勢だったと思う。同じ受けでも▲3八金だと△3七歩成▲同金△4八銀が飛金両取りになるためまずいが、とにかく「相手の攻め駒を自陣から消す」という受けの基本ができていれば何の問題もなく受け切れる局面だ。
 しかし……。

第5図からの指し手
▲2五桂△3七歩成▲3三歩△3一金▲5四桂△2八銀▲4二桂成△同金寄▲3二銀△同金上▲同歩成△同金▲2一金△1七銀打まで後手勝ち

 かなり長くて申し訳ない。
 まず、▲2五桂と跳ねて△3七歩成とさせてしまうというのがもうまずい。△3七歩成とさせても▲2九桂△3六と▲3七歩として攻め駒にお帰りいただくという手もないわけではないが、そんなことをするくらいなら最初っから▲3八歩とでも屈服しておいたほうがマシだ。将棋の話になるが「勝ちだとしても指してはいけない展開」である。
 しかし、白砂将棋は「即詰はないから」というだけでここからムダに攻めまくる。そして駒を渡してしまい、その結果自玉が必死になってしまった。
 そしてここでも、第1局と同じように詰みを無視した勝手読みをしてしまい、1手詰で負けてしまった。
 なんと3連敗。今までで一番ひどい成績である。

 昼食は決めていた某所(この後を読めば判りますが、あえて店名は伏せます)へ行った。
 白砂は高校生の頃に長後のaki'sでカルボナーラを食して以来カルボ教に入信しているのだが、あれ以上のカルボナーラに出会ったことは正直一度もない。タイプは違うけど美味しいよね、という店は数件あったが、これだったら嫁の作るカルボナーラの方が3倍はうまいな、という店ばかりで、どちらかというと地雷を踏んでばかりいる。
 で、当然のようにカルボナーラを注文したのだが、いやぁ地雷(泣)。
 好みの問題だと思うので地雷というのはちょっと酷い物言いかもしれないが、カルボナーラには黒胡椒であって断じて胡椒ではないと思う。とにかく胡椒が強すぎてせっかくのクリームソースが死んでいる。個人的にはアウトだった。何度もフォローしとくけど好みの問題だからね。麺のゆで方とかは好きだったし、胡椒が強いのはあくまでも好みによりけりだと思う。ただ、白砂はもう行かない。素直に焼きカレーにとしけばよかった……orz。
 3連敗の上に飯までまずくて、ちょっとブルー入ったままの対戦である。

■4回戦 まったりゆうちゃんvs白砂将棋

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 4回戦の相手はまったりゆうちゃん。一度、LAN接続のときに練習試合をしたことがありますが、時間制御がボロボロで切れ負けをするという酷い有様でした。なんとか今回はまともに将棋を指したいところですが……。
 後手番ながら7七桂戦法の形に持ち込み、序盤はまず一安心。……と思ったのもつかの間、11手目の▲5八金右が定跡になく、形だけで判断して金開きの形に組んでしまった。まったりゆうちゃんの▲1六角もどうかと思うが、それを咎められるほど白砂将棋は強くない。気がつくと桂頭が危なくなっていた。
 第6図は唯一白砂将棋にもチャンスがあったかなー、という局面。まったりゆうちゃんがなぜか▲6八銀と固めた局面だ。
 ここで素直に△8六歩と飛車先交換に行けば8筋は受からないから後手優勢だと思うのだが、△4七歩成▲同金△4六歩▲3六金△7四歩と見当違いの方向に手が伸びていってしまう。まぁ△4六歩を決めるところまではまだいいが、なぜ△7四歩とまったり指す(泣)。

 結局、このあとは桂頭を攻められる展開になり、あ、駒損だ、と思っていると水平線気味にどんどん指し手が乱れていき、最後は頭金を放置するという午前中から続いている病気が発症して終わってしまった。
 とにかく酷い将棋で、これで4連敗である。

■5回戦 白砂将棋vs芝浦将棋Jr.

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 5回戦の相手は芝浦将棋Jr.。多分初対戦のはずです。
 芝浦将棋Jr.も4連敗で、ついでに結果を言うと白砂将棋は22位で芝浦将棋Jr.は24位。実質的には最下位決定戦のような感じでした(芝浦将棋Jr.さんごめんなさい)。
 将棋の方は、白砂将棋の病気が出る以前に芝浦将棋Jr.の病気が出た、という感じで(芝浦将棋Jr.さんごめんなさい)、21手で白砂将棋の勝ちでした。

 6回戦が始まる前、大合神クジラちゃんの中の人に呼ばれてニコ生に出ました。
 なんかもうすごい時代ですね。こんな素人が世界中を相手に喋っちゃうわけですから。
 生放送ではいろいろと言いましたけど、それ以前にお前の作った将棋ソフトは今どうなんだと、そう思ってしまいました。なんでこんな状態なんだ(泣)。
 まぁ、とりあえずは1勝できたし、好きなことを喋っていたら気分も晴れたので良かったです。

■6回戦 臥龍vs白砂将棋

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 6回戦の相手は臥龍。以前当たったときは吹っ飛ばされました。
 戦形は4回戦と同じ後手番ながらの7七桂戦法。公平に見て臥龍の対策が少しまずく、第7図から△4九角▲4八飛△5八角成▲同飛△4七飛成と龍を作って白砂将棋が有利になった。
 このあと▲6八飛と逃げた手に、ロコツに△5八金とでもして飛車を召し取ってしまえば白砂将棋の優勢だったと思う。後手陣は飛車以外には強い形だし。しかしここで△2二銀と緩手を指してしまい、▲3八角以下優位が吹っ飛んでしまった。
 そして第8図は▲6五角に△6四歩と反応したところ。臥龍がカッコよく決める。

第8図以下の指し手
▲2一飛△5一飛▲4三角成△同金▲2二飛成△4七角▲4四歩(第9図)

 単純に▲4一飛と打って2枚替えでも十分だと思うが、▲2一飛が欲張った手。最善は△3一金だろうが、▲4三角成△7一玉▲2二飛成△同金▲6一銀くらいで攻めが続く。3一の金ではなく2二の銀を取るのがポイントで、▲3一飛成△同銀では銀が働くが▲2二飛成△同金とすればこの金は遊ぶし、この局面は銀を取って▲6一銀と守りの要に働きかける手が急所だ。ちなみに、白砂将棋は△3一金は▲4三角成△7一玉▲3二角打で先手優勢と読んで避けている。なんだそれはorz。
 理由はさておき(<置くな)そこで△5一飛と自陣飛車を打った。▲2二飛成△同金▲4三角成に△5二飛で粘ろう、という読み筋だったが、臥龍は当然ながら▲4三角成とこっちを捨てて龍を作る。さらに▲4四歩と厳しい叩きが入り、これで先手優勢である。
 ひどいことにこの歩を放置して攻め合ったものだから▲4三歩成以下と金が大活躍。そのまま臥龍の圧勝となった。

 これで1勝5敗。なんともひどい成績である。

■7回戦 白砂将棋vsメカ女子将棋

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 7回戦の相手はメカ女子将棋。初出場です。女流棋士が開発に加わっているという珍しいチームですね。
 先手を取れたので一安心(<こら)。ところが、メカ女子将棋の奔放な指し口に早々に定跡から外れてしまう。おまけに角を打ってもらって得をしていたにもかかわらず、こちらも負けじとムダな角打ちをしてしまい、なんだかよくわからないコンピュータ将棋らしい展開に突入した。
 銀交換をして△2二銀と打ってもらった辺りでは先手がいいように思うのだが、直後の▲5六歩が自分の角の逃げ道を塞いでしまってよくなかった。そのあと、角を詰まされたり取り返したりして第10図。ここから双方とんでもない応酬を始める。

第10図からの指し手
△3九金▲3八飛△3八角▲同飛△同金▲5五角△5一玉▲6三銀(第11図)

 桂損を回避するためとはいえメカ女子将棋の△3九金は明らかに筋が悪い。しかし白砂将棋の▲2八飛がさらに輪をかけた悪手。こんなものは▲4五歩△2九金として遊ばせておけばいいのだ。おまけに△3八角に飛角交換までしてしまって、△3九金が立派に働く展開になってしまった。
 それでも▲5五角と打ち、△5一玉と飛車の横利きで銀取りを受けたところに、それは無効ですと言わんばかりに次の一手風の▲6三銀。「お、いいぞ」と対局中はのんきに見ていたが、負ければ敗着の一手だった。というのも、これを△6三同飛と取ってしまえば、▲2二角成には△4九飛▲6八玉△5七銀(さっき6三で取った銀)▲同金△同桂成▲同玉△4八飛成まででピッタリ詰み。4九飛が最後の△4八飛成を見た限定打になっている。これが白砂将棋は、というか白砂も見えていなかった。メカ女子将棋の人達は気づいたんだろうか。
 本譜は△3九飛と打ってしまったので、▲4五歩と根っこの桂を外す手が生じて危機を脱した。

 その後はメカ女子将棋の緩手もあり、また白砂将棋の大胆な中段玉も飛び出して優勢になった。
 指運という言葉は使いたくないが、運も味方した気がする。▲8五桂と跳んだ手が逃げ道確保と同時に飛車取りの絶好手になっていたり、△4六桂に▲4七金と強い受けを出し、その金を4七で取らせたことで▲2五角が王手龍取りになっていたり、ついでにその角を取らせることで後手の攻め駒が遠のいたりと、ちょっとずつ偶然に得をしていた感じだ。
 それでも、最後▲8八玉と逃げ切った形だけは、序盤に▲7八金▲6七銀という安定した形を作らせるように教え込んでいたおかげだと信じたい。やっぱり弱いソフトなだけに、陣形の安定感というのはなにかの時の貯金になるのだ。
 最後は攻めを余して白砂将棋が勝利。なんとか2勝をあげることができた。



■おわりに

 以上のように、白砂将棋は2勝5敗の22位。勝った相手は23位と24位という文句のない形での下から三番目という成績だった。
 バグを仕込んだまま出場してしまったため、もちろんそれも実力なのだが見苦しい将棋を指してしまった。バグる前まではそこそこにいい将棋が指せていただけにとても残念だ。というか消化不良な将棋を指してしまって対戦相手の方々に申し訳なく思う。

 こんな形で終わってしまったので来年の抱負もクソもないのだが、とりあえずバグをなくして、ちゃんとした形で出ることを目標にしたい。
 こう言っているそばから仕事が忙しく全然手をつけていない状況で、この記事もこんなに遅い仕上がりとなってしまった。
 毎年のことながら、ちゃんとしないといけないなぁ……。

 


初版公開:2015年5月16日
copyright © S.Hakusa