2003.4.27 作成
このページでは、当HPの著作権に関する態度を表明します。
既に当HPをご覧になった方々はお判りのことと思いますが、当HPでは著作権の問題が微妙に関わる「棋譜」や「著作」などが掲載されています。そして、それについて、
「棋譜って著作権があんじゃないの? 勝手に載せちゃっていいの?」
「棋書の一部引用ってありだっけ?」
など、疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。
このページでは、それらの疑問に答えるべく、HP作者である白砂青松の見解と、当HPの態度を明記しておきたいと思います。
ここで改めて断るまでもありませんが、著作権の問題は非常に高度な(といって悪ければ微妙な)問題が多く含まれます。白砂は一応法学部出身ですし、現在は図書館に勤務して著作権の問題とは最前線で接してもいますが、しかし、所詮は一介のアマチュアです。
よって、様々な間違いや勘違い、曲解もあるかと思います。それについては、遠慮なくメールなり掲示板なりで指摘していただければと思います。
- 棋譜に関しては、著作権を認めません。よって、棋譜は掲載します。
- データベースには「それを纏め上げた」という意味での著作権があります。よって、そういうデータベースからの転載はしません。
- 定跡に関しては、著作権を認めません。よって、定跡を登録した分岐棋譜などは公開します。
- しかし、定跡を纏めた定跡書には著作権があります。よって、定跡書を丸写しする行為は、後述する場合を除いてしません。
- 定跡書などの著作物には当然著作権があります。しかし、著作権の立法趣旨は「オリジナルを保護することによって開発者を尊重する」「発生した著作物による利益発生を邪魔しない」ことにあると考えます。よって、棋書を一部抜粋してそれを広める行為は立法趣旨に違反しないと考えます。
- 詰将棋は著作物であり、著作権が発生します。よって、そのままの掲載は原則しません。
- ただし、著作権者の利益に反しないと思われる程度の転載、余詰指摘などについては行います。
棋譜について、当HPでは著作権を認めません。
一言で言ってしまうと、著作権は著作物、つまり「なにかを<作ったもの>」について認められるべきで、「なにかを<記録したもの>」については認められるべきではないと考えるからです。
もっと法律的に言うと、著作権法第2条1項にあるように、「思想又は感情を創作的に表現したもの」を著作物といい、数式やスコアブックのような「事実の表示」や「経過の記録」は著作物にはならない、ということです。
この辺の著作権の法律的解釈についてはもずいろさんが詳細に書いて下さってますのでそちらを参照して下さい。いや、決して手抜きだというわけではなく……ごめんなさい。手抜きです。
冗談はさておき、もずいろさんは非常に明快に著作権についての解説をしていらっしゃいますが、白砂は一点だけ反論したいわけです。
もずいろさんは、棋譜(というか対局という行為)は思想または感情を表現したものだと定義しています。ここはきちっと抜き書きしておいた方が誤解がないと思うので、著作権侵害を覚悟で抜粋します。
例えば、自然科学的データそのものは思想・感情ではないので著作権保護の対象とはならない。しかし、人間の「かんがえ・きもち」があらわれたものであれば、その程度の高低にかかわらず同様の扱いを受ける。
このことから考えると、将棋の対局も広い意味での精神的労作であって、「思想又は感情」であるといって差し支えないだろう。しかし、果たしてそうでしょうか?
白砂は、将棋というものは「二者の感情を表現するもの」ではなくて、「二者が闘うもの」であると思っています。というか、普通はそうでしょう。将棋を指している人を見て、「あ、あの二人はなにかを作っているよ」とは誰も考えません。「あ、あの二人は勝ちを争っているよ(勝負しているよ)」と考えるでしょう。
将棋はゲームなんです。
囲碁や麻雀や野球やサッカーやジャンケンなどと同じ、ゲームなんです。
将棋が好きであることは結構なことですし、そこに何かの感情的精神的意義を見出すことも自由です。しかし、将棋はゲームであるという本質を抜きに、法律的解釈を語ることは間違いです。
内藤9段はよく「棋譜が汚れる」「綺麗に纏める」などという表現を使います。白砂もそういう考え方は大好きです。しかし、「だから」対局は二人で一局の将棋を創るものであり、よって創作物だ、とは言えないでしょう。失礼を承知で言えば、それは単にゲームに個人的に意義を見出しているに過ぎません。武士道精神と創作物か否かということは無関係です(内藤9段の考えと武士道精神が同じか……という話は深く突っ込まないで下さい(笑)。その辺の議論をせずとも白砂の言いたいことは判っていただけると思いますので)。
将棋がゲームであるということが定義されれば、その記録である棋譜は「二人で作り上げた世界」などではなく「二人の激闘の記録」であることが当然導かれると思います。そして、激闘の記録は要するに単なる記録であり、事実の羅列に過ぎません。
よって、棋譜は創作物などではなく、棋譜に著作権はないのです。
繰り返し言います。
将棋に意義を見出すことは将棋を愛する上で非常に重要なことだと思います。しかし、それをもって将棋をゲームではないと考えるのは間違いです。敢えて酷い喩えを持ち出すなら、レストランで「うちの○○ちゃんは家族なんです。ペットなんかじゃありません。失礼ね!」と犬を連れて食事するバカなおばさん(笑)と同じ行為だと思います。
棋書に関しては、当然著作権が発生しています。
棋譜には著作権はありませんが、それを解説したものについては、それを解説したという「行為」がオリジナルだとしているわけです。
よって、棋書の一部または全部を無断で転載する行為は、法律的には著作権侵害になります。
しかし。
当HPでは、敢えて(←強調(笑))著作権侵害をしています。
理由については始めに述べた通りですが、もう一度詳しく述べたいと思います。
まず、そもそも著作権なんていうものがなんで発生したのか? そして、なぜ著作権が保護されるべきかを考えて下さい。
それは、
- オリジナルを不当にコピーさせないことにより、オリジナルを創作したという功績(というと大袈裟ですが、他に言葉が見当たりません)を贊える。
- オリジナルを保護することにより、その創作により発生した利益を不当に滅さないようにする。
- それらにより、オリジナルの創作活動を保護する
という理由に基づきます。
ここから、当HPは、
- オリジナルであることをきちんと明記し、評価すること
- オリジナルの利益を滅さないこと
であれば、著作物の転載は(実質的な)著作権侵害にはならない、と考えました。
小難しい言葉ではなく簡単に言ってしまうと、その人の損になんなきゃいいぢゃん
ということです(<砕きすぎだって)。
例えば、藤井システムの最新定跡を紹介した本があるとします。
それをいち早くHPで紹介したとして、果たしてその本の売上減になんのかなぁ……ということです。
もちろん「ふぅん、それが載ってたんだ。うん、判ったからもう買わないや」という人もいるとは思いますが、それ以上に、そういう最新定跡が載っている本であること、そういうきちんとした本を書いた人、出版社であることが認識されたという方が大きいと思います。これまた砕けた言い方をしちゃうと、「ネタバレをしてんじゃなくて、ネタフリをしてんだよ。興味を持ってくれたら買ってくれんぢゃん」ということが言いたいわけです。
まぁ、盗人の理論であることに間違いはないわけですが(笑)、しかし、別の出版社が転載をするわけでもなし、むしろ「こういういい本が出たんだよ」「こんな最新定跡があんだよ」と言っているわけですから、むしろ広報活動と好意的に解釈して欲しいなぁと。
というわけで、例えば『新・対局日誌』なんかのネタもどんどん書いているわけです。
その中の1篇を紹介したからといって、じゃあ『新・対局日誌』を買う必要ないや、堪能した、もういい、河口の話ウザい(笑)、とはならないと思いますので。
ここは大事なことですので再度明記しますが、HPに著作物の一部を無断で掲載することが著作権侵害に当たるかどうか、そのことで争うつもりはありません。法律上、明らかな著作権侵害です。
しかし、できうるならば、こちらも好きだからやっていることですし営業妨害をするつもりもありませんので、見逃して下さい(笑)、と言いたいわけです。
例えば、有料サイトで掲載している有料のコンテンツを全て垂れ流す、というのは営業妨害以外の何物でもないでしょう。例えば某名○戦の速報とか(笑)。それを流すことによって、完全に無料でそれを享受できるわけですから。流された側は。なんぼ将棋が好きだからとか上達したいからとかファンの為だからと言っても、それは通らないと思います(もちろん、最終的な判断は裁判所が下すのですが)。
棋書を一部転載する、というのは、例えれば映画の予告編やソフトの体験版や新聞雑誌の提灯記事のようなものだと思うのです。
もちろん、転載した部分についてはだだ漏れです。ただ、それを読んだ側はその著作物全てを無料で享受できるわけではありません。まして、有料サイトのそれと違い、ネットと紙という点で媒体も違います。ここで紹介したものを、紙ベースでも読みたいという人だっていると思うんです。となると、少なくとも著作権者が腹を立てて訴えてくるほど酷い著作権侵害ではないかなと。つまりはそういうことなんです。
現在は問題になるようなコンテンツは掲載していないと思います。
ただ、実は『将棋墨酔』の余詰について紹介したいなと思っているので、未来のことを考えて敢えて一項を設けました。
まず、詰将棋に著作権はあると考えます。
棋譜が著作物でないのになんで(その将棋の一部分を切り取った)詰将棋が著作物なのか疑問に思う人がいるかもしれませんが、簡単なことです。将棋はゲームですが、詰将棋はパズルです。
先に述べた通り、将棋はゲームであり、棋譜は闘いの記録です。しかし、詰将棋は、創作者が他者へ向けて創作したパズルです。これも疑う余地がありませんよね。ですから、パズルは当然創作物であり、そこに著作権が発生すると考えられます。
ですから、当HPでは、できるだけ著作権は保護したいと考え、また、営業妨害にならないようにするため、最新に近い雑誌からの転載などは行いません。
古い雑誌からの転載については、個人的には「ま、いっかなー?」と思いますので行うことにします。逐次刊行物は著作権法上もあまり保護されていないようですし(著作権法第31条など)、むしろ埋もれた名作を発掘するという意義の方が大きいかなと思います。
もちろん、Web上などで断り書きがあるものについては、無断転載は行いません。
問題になるのは単行本になっているものです。白砂がこれから掲載しようと思っている『将棋墨酔』もこれに当たります。
当HPでは、現在発行されている本については、無断転載を行わないこととします。
逆の表現をすると、書店WebShop等、通常のルートでは手に入らない本については、転載していくことにします。
これは、手に入んないものについては著作権侵害のマイナスよりもそれを広めるプラスの方が大きいだろうなという建前論的な理由と、既に売られていないんだから著作権者にはこれ以上の利益はないだろうなという実質論的な理由によるものです。
これから掲載しようとしている『将棋墨酔』は、おそらくまだ書店に行けば手に入ると思います。しかし、これを転載するのは、上記の理由の他に「余詰を公開して、著作物の価値を高める」という第三の理由もあるのです。
『将棋墨酔』発行当時はコンピュータによる余詰チェックなどは当然行われておらず、実際、調べてみると多数の余詰がありました。これを公開することは、先に述べた「著作権が保護される理由」に照らして、決して著作権を侵害するものではないと考えます。よって、これについては、転載をしていくつもりです。
ちなみに、余詰については、以前詰パラ掲示板に書いたことがあります。その公開について編集部側では「著作権に関わるので……」と消極的でしたが、そりゃあ出版物として発行するのはさすがに無理というものです(それによって利益が発生すると考えられるので)。しかし、個人サイトであれば、それによって白砂が儲かるわけではないので、逆にやっちゃってもいいかなと思います。『将棋墨酔』を無断で転載するというのは、そういう理由によるものです。
著作権というものは、創作者の側から見れば当然保護されるべきものです。また、できるだけ保護されるべきものです。「全ての創作は模倣から生まれた。だから一定期間以降はできるだけ早く他者の使用を認めるべきだ」という主張もありますが、白砂はそれには反対です。
繰り返しになりますが、著作権の保護には2つの側面があります。
一つは、創作物を創作したという事実をできるだけ尊重しよう、という精神的なものであり、もう一つは、創作物を他者に利用されて利益を侵害されるのを防ぐという具体的なものです。
著作権者はできるだけ自分の利益を確保しようとするでしょうし、それ以外の人はできるだけ著作権者の利益を掠め取ろうとします(笑)。上記の模倣云々などは、言葉は悪いですが著作物をできるだけ早く自分が利用したいがための理論武装に過ぎないと思います。また、富士額ネズミやはちみつドロの著作権保護期間を延長しようなどという動きも出ているようですが、それもバカバカしい限りです。死後50年も保護すれば、著作権者に対しての敬意は十分すぎるほど十分でしょう。だから俺は嫌いなんだ。あんなでんこちゃんに怒られるようなパチンコ屋みたいなことしてなにが楽しいんだ全く(<をい)。
当HPでは、できるだけ著作権は尊重したいと思っています。
しかし、それと同じように、将棋というゲームを愛し、その面白さを広めたいとも思っています。
ですから、自分の琴線に響いたことがらについては、それが実戦譜であれ定跡であれ棋士の裏話であれ、とにかくなんでも紹介していきたいんです。
両者の線引きをどこでするか。
白砂はそれを、それによって誰かが金銭的・精神的に損をするなら、やらない
と決めました。
当HPの転載基準は、全てこの原則に基づきます。
ですから、もしも転載されて厭だなと思ったらすぐ言って下さい。すぐ削除します。また、なんか遠慮して転載していないようだけど、いいよ別に書いても、というのであれば、できればご報告下さい。喜んで掲載させていただきます(笑)。
法律は、あくまでも争いを平穏に解決するために設けられた境界線に過ぎません。決して、言い逃れのために援用するものでもないし、ガチガチにとにかく規制をするための錦の御旗でもないのです。
ですから、それで儲けようと企んでいる人がいるなら、それを敢えて著作権侵害するのは誤りだと思います。また、著作権侵害だとただ騒ぎ立てるのではなく、できうるなら「なぜ彼らは著作権侵害をしてまでそれをしたのか」を考えてから規制をして欲しいと思います。彼らが将棋のことを考えていて、そしてそれが自分にとってさして不利益でないのなら、できるならば見逃してやって下さい。お願いします。
そして最後に。
白砂は、その創作物を創作した著作権者を、最大限に尊重したいと思っています。