手に乗って捌く

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 第1図は第66期王座戦二次予選鈴木vs郷田戦。後手の郷田が△6五歩としたところ。
 1歩持っているので、▲同桂は△6四歩、▲同銀は△6四金から△6五歩という手がある。銀をかわすなら7五か5七か……という局面で、先手の鈴木はどう指したか。

第1図からの指し手
▲6五同銀△5三金▲8六歩△6四歩▲8五歩△6五歩▲8四歩△6六歩▲同歩△4五桂(第4図)
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 ▲6五同銀と取るのが思い切った手。

 後手は△6三金ではなく△5三金とした。
 △6三金だと、▲8六歩△6四歩に▲9六角と打ち、△5三金▲8五歩(第2図)という手があったようだ。この角は▲4一角成と切れるので打ち得だし、後手は△6三金~△5三金と1手損しているので▲8四歩からの攻めが1手早くなる、ということらしい。
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 例えば、第2図から△6五歩▲8四歩△4二飛▲8三歩成△4五桂と攻め合う手には、▲6五桂△6四金▲5三桂成△同銀▲6三と△4四銀▲6四と(第3図)とする。
 ▲5三桂成と捨てるのが▲6三とを先手にする手筋で、こうなると、△4八銀や△3五桂はあるものの、先手が指しやすいと思う。
 感想戦では、なので第2図で△5七角と受けるとしていたが、それも▲8四歩△同角成▲4一角成△同銀▲7五金△8三馬▲8四歩△7二馬▲6四金と攻めて後手が自信なし、とされた。確かにここまで進めば、後手玉は4一金を失って薄いし、金駒を奪って▲8三金という簡明な攻め筋もあるので先手が指しやすいだろう。

 というわけでそれを察知して△5三金とひねって指し、以下、意地の張り合いのように先手は8筋の、後手は6筋の歩を突き合って第4図となった。
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第4図からの指し手
▲8三歩成△6二飛▲6五桂(第5図)

 ▲8三歩成から▲6五桂というのが気持ちのいい指し回し。
 特にこの▲6五桂というのが、桂を活用し金取りでもあり相手の飛車先を重くするという抜群の味の良さである。「左桂は振り飛車の命」などとも言われるが、こういう局面を目にすると振り飛車党でよかったとつくづく思う(笑)。

 第5図で△5二金引などというのは将棋にない手で、▲7二と△同飛▲8一飛成△6二飛▲4六角で一方的に先手に攻められてしまう。ちなみに、最後の▲4六角がこういう時の指し方というもので、押さえの▲6五桂は動かさないのがコツだ。
 
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 というわけで第5図からは△5七桂成と攻め合ったのだが、それでも▲7二ととして、△6五飛▲同歩△3五桂▲8一飛成△4七桂成▲同銀△同成桂▲4二歩△4八銀▲4一歩成△4九銀不成▲3一角までとあっという間に寄せ切ってしまった。

 第4図のところで△4五角とか△6七銀とか△5五歩とか、もう少し工夫できたかもしれないが、それよりなにより第1図からの一連の捌きが素晴らしい。振り飛車の会心譜だと思う。