捨て石のココロ

先日、大学の将棋愛好会の合宿に参加させてもらった。
例年と違って「将棋だけ指す」ということらしく(いつもは昼将棋、夜遊び)、遊びがなくても怒らない人間ということで誘いが来たのだろう(笑)。ま、そうでなくても無理矢理行くんだけど(<をい)。

白砂は、大学のイベントに参加する自分を「捨て石」だと考えている。つまりは石川を捨てて紺野に走るということで……ぢゃなくって、自分は負けるべき存在なんだなと。

学生将棋には様々な人間が参加する。ヒマがある人間ということで(<をい)最新の定跡形での戦いなんてのも珍しくないんだけど、それと同じくらい、ひょっとするとそれ以上に多いのが、定跡形以外での戦いである。早い話、変態将棋や力戦形だ。
こればっかりは、いくら机上の勉強を重ねても役に立たない。まずはいろんなバカ戦法(笑)を「見て」その形に慣れ、次に力戦形で揉まれながら戦う術を身に付けなければならない。要するに、身近にいる人間が綺麗な将棋を指す奴ばっかりでは学生将棋は勝ち抜けないのだ。A級にいる学校が強いのは、ただ強い奴がいるとか研究が進んでいるとかだけではなく、そういう「いろんな奴」が部内にゴロゴロしていて、日頃から力戦形に慣れているからでもあるのだ。

で、話が戻るのだが、その「バカ将棋を指す奴」という役回りを白砂は担っているんだなと、自分では思っているのである。

だから、白砂は合宿ではまともな将棋は基本的に指さない。

「定跡形での戦いを覚えたいんで付き合って下さい」と言われた時にはできるだけ定跡形を指すようにしているが、そうでない人間が相手の場合、相手が自分より弱かろうと強かろうと、白砂は常に変態戦法で指す。誰も白砂に最新定跡を指すことなんざ期待していないだろうし(笑)、そういう役回りなら他に適任者がいる。自分にしかできないことを、その場ではやるべきだと思っている。

幸い(?)、おそらく奇襲・変態戦法についての知識だけなら、白砂は将棋愛好会の中でかなり上の方に位置すると思う。棋風の「変態度」も多分上位の方だろう。こんな自分だからこそ、たとえ弱くても役に立つと思うのである。

今回の合宿では、7七桂戦法と、3二金戦法に見せかけた端棒銀を中心に指した。
7七桂戦法は立石流というメジャーな変態戦法があるので指す価値はあるし、端棒銀は本にも載っている有名な変態戦法だ。

特に端棒銀については、序盤は3二金戦法の出だしである。序盤のうちに「あ、3二金戦法で来るな」などと決め打っていると、よりいっそう端棒銀はハマりやすい。3二金戦法は受けの戦法だが、端棒銀は攻めの戦法だ。全然将棋の流れが違うのである。その流れが読めないと力戦形は指せない。そういう総合的な大局観を養うのに最適と思ってやってみた。

結果、ほとんどの対局で満足な序中盤になった。結果として勝ち負けはトントンくらいだったがそれは白砂が弱いせいだ。指していたのが白砂ではなく実戦慣れしている現役の学生だったら、そのまま押し切っていたと思う。どうやら将棋愛好会の未来はまだまだ安泰とは言えないようだ。

今度の春合宿には、また別の変態戦法を持っていくつもりだ(呼んでくれれば、だけど。呼んでくれても行かれないかもしれないし)。その時は、こんな奴はコテンパン(死語だな……)に叩きのめして、「白砂さん、弱いっすねぇ……」と嫌味のひとつでも言うくらいになってほしい。

あ、ホントに言った奴は屠るからね(爆)。