今期のC2の最終戦で面白い将棋があった。
長沼-近藤で、第1図はその最終盤。後手が「確実に」と△7四歩と打ったところである。
本当は△8八金▲同馬△同成桂▲同玉△7五飛成で勝ちだったらしいのだが、なにしろこれは順位戦。仕方がないだろう。
ところが、この安全策が裏目に出た。
第1図からの指し手
▲9四桂△同歩▲同歩△9二歩▲9三銀△同歩▲同歩成△同玉▲7一角(第2図)△同金▲9四歩まで長沼勝ち。
なんと▲9四桂とここに放り込む手があった。
△7一玉は▲3五角と打たれ、7七の馬がいるために4四に合駒を打てずピッタリ詰む。ちなみに手順は△5三合▲8二銀△6二玉▲7一銀打△同金▲同銀不成△5二玉▲4一飛成である。とにかく全ての局面で△7一玉には▲3五角があるため、本譜の進行はやむを得ない。
そして第2図での▲7一角が最後の決め手。
△同金と取らせて▲9四歩で、ピッタリ詰みである。
『将棋世界』の「昇級者喜びの声」によると、▲9三銀と打ち込んで清算したあたりで▲7一角が見えたそうだが、それにしても自力昇級がかかった一局、深夜までの熱戦、1分の秒読みという条件でよくぞこの手順を見つけたもんである。
確か長沼は、奨励会の頃から「駒取り坊主」と言われていたと記憶している。本局の中盤もその異名に違わぬ指し手を披露していたらしい。プロになって15年は長かったと思うが、これからも大暴れしてほしい。