玉を大事に

最近、週に2回くらいのペースで将棋倶楽部24に行っている。

自分でも指したり、高段者の将棋を覗いてチャットで騒いだりしているのだが(不快に思われた方がいらしたらごめんなさい)、高段者の指し手で、ほとんど当たらない手がある。

一つは高段者らしい妙手で、これはもうどうしようもない(笑)。
そしてもう一つが、玉を固める手なのだ。

ある程度、例えば2段とか3段まで行くと、その局面での攻めの手とか受けの手とかが自然と見えてくるようになる。それより上の段の人との差は、それ「だけ」を見つけられる正確さであったり、その後の変化の掘り下げの深さでしかない。

ところが、それだけでは上記のような玉を固める手というのは浮かんで来ない。固めるタイミングが判らないというのもそうなのだが、そもそも攻めたい時にいったん受けたり、手のない時に暴発せずじっと我慢するということが頭のめぐりの中に入っていないのだ。

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2004年3月号の『将棋世界』で、ちょうどそういう記事があったので紹介する。

第1図は、後手が△2五桂としたところ。
こんだけ前振りをしていて▲4三角△7一金▲2五角成とのんきに駒得に走る人はいないだろう。それは△8六桂と打たれて少し気持ち悪い。もっとも、気持ち悪いだけで、▲7九金としない限りはどこに金が逃げても問題はないのだが。

まぁそれはさておき、相手にやる気を出させることもない(笑)。

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第1図では▲8七香(第2図)と打つのがいい手だ。
△8六桂さえ消してしまえばあとは怖いところがない。

例えば△3七桂成なら、▲5二銀△7一金▲6三銀成△同銀▲8四歩△同歩▲8三歩(第3図)くらいで先手十分である。

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▲5二銀に△同金は▲7一角△9二玉▲9五歩といった具合。細かい手順はどうでもいいし、それ以前に玉の安全度が違いすぎる。△6九銀とか△6九角とか打たれても全く痛くないのだから勝負にならない。▲8七香の効果だ。

ただ、じゃあ第1図で▲8七香とじっと打てるかと言うと、なかなかこれが難しいのだ。
なぜかと言うと、▲5二銀という攻め筋そのものはパッと見えるから(笑)。

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そこで同じように△7一金▲6三銀成△同銀▲8四歩と進んだ時、今度は8七に香がいないから詰めろではない。手抜きで△8六桂とされ、▲8三歩成△同玉▲7一龍に△7八桂成▲9七玉(▲同玉は△6九角で詰み)△8六銀▲同玉△8九龍▲8七銀合△7四桂▲同歩△7五角(第4図)でトン死する。

実は▲8七銀合で▲8七金合とすれば詰まないので上の手順は作ったものだが(笑)、ちょっと間違うとあっという間に逆転してしまうくらい、第1図の玉形は危険だぞということである。第2図の局面であれば、かなり不自然なココセでもしない限り逆転は起こらない。

現代将棋は、一手勝ちというものをさほど重んじなくなってきている。
もちろんスッパリ切って勝てればそれに越したことはないし、切迫した局面では一手勝ちするしか方法がないことも多い。しかし、もし一手手を入れてラクに勝てるのであれば、現代のプロはほとんどが迷わず受けに回ると思う。これは言葉の問題だが、一手勝つのではなくて二手勝つ感じだ。激辛流や鉄板流の将棋を見ると特にそんな感じがするし、しかし、そういった勝ち方は別に珍しくもない。

まぁ、それかできるくらいだったら、もっと白砂のRも上がってるんだけどなぁ……。