棒銀vs四間飛車 定跡外の攻防 その後

前回のコラムで棒銀vs四間飛車の将棋を紹介したが、それを読んだ方からこんなメールが届いた。


zu △3七歩、を初めて見たとのことですが、大昔のジャーナルの局面指定戦で関東学生選抜(出戸・重田・遠藤)の研究がありました。
正確に何月号ということはコピーしてファイルしていたため分からないのですが、
▲3七同銀△4五銀▲4六歩△3四銀▲2八飛(第1図)で、

zu以下、
1.△3五銀▲4五歩△3六歩▲4四歩△3七歩成▲4三歩成△2八と▲3二と△4九飛▲2二飛△2九飛成▲4二と△8四桂▲8六金(第2図)

zu2.△5五歩▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2八飛△5二飛▲5五歩△同金▲5六歩△同金▲同銀△同飛▲2二角成(第3図)

の2つの変化が研究されてました。

どちらも居飛車良し、ということでジャーナルが指してほしい? △3七歩はせずに、「月並みな△4三金を選んだわけである(▲3七同飛△3六歩▲3九飛△4五金▲1五銀でも振り飛車自信なし、と。)」とありました。

白砂さんはどう思いますかこの手順?(ちょっとおとなしい感じがしないでもない…ような?)

あと『四間飛車ガイド』P.46では、△3七歩▲同銀△4五銀▲2四歩△同歩▲2八飛で先手良しの見出し。本文では「大変だが居飛車を持ちたい形勢」。▲2八飛以下の指し手は無し。
最近では、渡辺明の急戦編P.197で「……▲2八飛で先手良し。以下△3四飛なら▲4六歩」とだけありました。

プロ的には▲2四歩~▲2八飛でいいと見るものでしょうがもう少し解説がほしいところでありますね。


zuなるほど。
それでは、上記の変化の周辺について、少し考えてみよう。

第2図や第3図が先手有利であろうことに関しては問題ないだろう。第2図は受け切りの形だし、第3図も先手だけがやけに捌けている。もし変化するなら、第1図でどう指すか、ということになるだろう。

白砂は、ここで△3三桂(第4図)を挙げてみたい。

振り飛車で左桂を捌くのは本筋の手であるし、2筋の傷は最小限にとどめて他で利を得るのが振り飛車の指し回しというものだろう。第4図の瞬間はやや駒がだぶっている感もあるが、次に△4五歩が回れば一気に捌ける。

zu 第4図から先手は▲2四歩△同歩▲同飛と歩を交換する。

ここ、▲3六銀とじっと出ておく手も見えるが、普通に△3五歩▲4七銀△2二飛▲3七桂△2一飛▲7七角△4三金(第5図)と進めて後手が指しやすいと思う。4四金の形が厚いので▲3八飛と回るような手は攻めにならず、かといって玉も固くなるわけではないので指す手がない。一方、後手は第5図から△2四歩▲同歩△2五歩として2筋を突破していけばいい。これは急戦失敗の図である。

zu さて、▲2四同飛に普通は△2三歩と打つのだが、ここは控えて△2二歩(第6図)と打つのが妙手になる。

zu 第6図でパッと目に付くのは▲3四飛△同金▲4三銀(第7図)という手。

zu これでよくなれば簡単なのだが、△3一飛▲3四銀不成に△3六歩(第8図)と叩く手が厳しく後手が指せる。

zu △3六歩に▲同銀と取ると、△3九飛▲3三角成△同飛▲同銀成△3六飛成▲3二飛△3九龍▲7五桂△2九龍▲6三金△7七桂(第9図)で後手勝ち。以下▲7七同金は△6三銀が詰めろになる。
まぁこれは一番うまくいく変化なのだが(笑)、この流れを外すのは難しい。

例えば▲3三角成で▲3二歩は△4一飛▲3三角成△3六龍▲4三銀成△4二歩▲4四成銀△3九龍だし、▲7五桂で▲2二飛成は△4四角打▲同銀成△同角だ。変化手順の▲2二飛成が、もし△2二歩ではなく△2三歩と打っていたら▲1二飛成となってしまっているという点にも注目して欲しい(▲1二飛成には△3三龍と銀を取り返すことができるので、そう指すかどうかは微妙だが)。

zu また、△3六歩に▲4八銀右と逃げると、△2五桂▲同銀△2七飛▲2二角成△3五飛(第10図)で後手有利。△2五桂と「取らせて捌く」のがうまい手順だ。

zu この変化でも、△2二歩が働いている点に注目して欲しい。もし△2三歩と打っていた場合▲2二角成で取られないから、△2三歩が盤上に残っていることになる。第10図で2七の飛車は馬に利いていない。そうなると第10図で▲3六銀△同飛▲3七金(第11図)という荒業が成立してしまう可能性がある。

zu △3六歩に▲4二金と飛車を取りに行くのも筋が悪く、△3七歩成▲3一金△2七飛(第12図)くらいで後手がいいだろう。先手は金得なのだが、3一金がいらない駒、というかいない方がいい駒(▲1一飛と打てない)になっているので、駒の損得はないようなものだ。

どうやら、▲3四飛△同金▲4三銀という強襲は成立しないようだ。

zu とすると、第6図の△2二歩には▲2八飛(第13図)と引き上げるよりないが、この局面はどうなのだろうか?

zu △3三桂と跳んだ以上は△4五歩と行くのが筋というものなのだが、▲3六銀△4六歩▲同銀△4五銀▲同銀右△同桂▲3三歩(第14図)という展開は少し後手がまずそうだ。△4六歩以外にも手はありそうだが、少しずつ足りない感じがする。

zu △4三金▲3六銀△3五歩▲4七銀(第15図)という展開もなんだかぱっとしない。
なにかの時に△4四角とぶつける手が決め手になればいいのだが、▲5三角とか▲4一角などの傷もあるので意外とうまくいかない。

zu △5二飛と回って、▲3五歩なら△4三銀▲2三歩△5五歩▲同歩△3五金▲5四歩△2五桂▲4八銀右△5四銀▲3三角成△6五銀(第16図)という指し方が一番いいように思える。ただ、先手が▲3五歩や▲2三歩とやってくるとは限らないし、後手にも△5六歩と一発叩く手があったりして簡単ではない(△5六歩▲同銀の交換が入っていると、後に△5五歩とか△4六金などの手が生じる)。

以上のように、第1図では△3三桂と跳ねれば後手も戦えると思う、というのが、白砂の感想である。